●アンティーク・プール(遺跡の温泉露天風呂)
パムッカレ-ヒエラポリス遺跡の中央部には大きな広場があり、その周囲には博物館やカフェなど観光客向けの施設が設けられています。この広場に面している施設のひとつが今回取り上げる「アンティーク・プール」。直訳すれば骨董品プールですが、ここは世にも珍しい、本物の遺跡が温泉に沈んでいる露天風呂であり、当地の主要な観光名所でもあります。事前に調べた情報によれば、パムッカレの石灰棚よりもこちらの方がはるかにお湯が良いとのことですので、先ほどの野湯(前回記事を参照)で風邪を引きそうになった私としては否が応でも期待してしまいます。
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前回記事でも触れましたが、北側ゲートから「アンティーク・プール」前まで有料のシャトルバスが運行されていますので(2リラ・15分おき)、遺跡の中をわざわざ30分もかけて歩きたくないという方には便利です。往路は歩き、復路はバス、という使い方も良いですね。
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入館してすぐ左手にあるレセプションで入浴料を支払います。先程のパムッカレの石灰棚における野湯は無料で勝手にできましたが、こちらは別途32リラを要します。つまり「アンティーク・プール」で湯浴みするためには、入場料25リラと入浴料32リラの計57リラ(約3000円)もかかるのです。一応遺跡や環境の保全を名目としているようですが、明らかに観光客の足元を見た料金設定であり、たかが温泉プールに3000円も支払うだなんてバカバカしい。でも温泉ファンとしては、わざわざここまで来ておきながら指を咥えて見学するだけでは満足できませんから、躊躇せずにサクッと支払いを済ませました。
なお私のように「アンティーク・プール」で入浴したい場合は有料ですが(この先の入浴ゾーンにチェックゲートあり)、館内での飲食や物販購入、あるいは見学のみでしたら料金は不要です。ちょうど入館の前から降っていた雨が本降りになってしまったため、館内のカフェは雨宿りの観光客で大混雑していました。
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これが温泉露天風呂です。木々に囲まれた温泉プールには大きな石材や柱が沈んでいますが、これらは全て本物の遺跡なんだとか。先述のように見学だけでしたら無料ですので、珍しい遺跡の温泉露天風呂で泳ぐ人々をカメラに収めようと、プールサイドに佇んでいる観光客の姿も見られました。
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左(上)画像はロッカーです。入浴するならば水着に着替える必要がありますので、荷物などをロッカーに収めることになりますが、ロッカー利用の際には、前にあるカウンターで係員にデポジットの10リラを支払い、鍵を受け取って指定された番号の箇所を使うことになります。なお10リラはデポジットですから、利用を終えて鍵を返却すればちゃんと返金されます。なお貴重品に関してはレセプションのセーフボックス(5リラ)が利用可能。
ロッカーの奥にはシャワールームと更衣室があり(右(下)画像)、ここで水着に着替えます。更衣室に関しては男女の区分が無いらしく、誰でも空いているところを使ってOKのようです。なお更衣室通路の一番奥にはドライヤーが壁に固定されているのですが、私が確認できたのはたった1台のみ。
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水着に着替えたら、ロッカー前にあるゲートで改札機にチケットのバーコードを読み取らせて、プールへ入ります。読み取りは係員がやってくれるのですが、ゲートから先はベンチも何も無く、お湯に浸かる他ありませんので、紙のチケットはその場で係員の手により破棄されちゃいます。旅の記念にチケットを持ち帰ろうと考えていたのですが、その目論見は儚く消えてしまいました。それなら紙じゃなくてリストバンド等にすれば良いのに…。
ゲートを通過してステップを下ってゆくと、上画像に写ってる砂利敷の水路のようなところに入りますので、奥へ向かってこの水路を歩いてゆきます。パムッカレの水溜まりよりはるかにお湯は温かく(35℃くらいか)、その温かさに思わず嬉しくなりました。尤も、外気温は15℃前後なのに湯温が35℃程度しかないので、一度お湯に浸かると寒くてお湯から出られなくなっちゃうんですけどね。
ここには打たせ湯みたいな箇所があり、結構な湯量が投入されています。洋の東西を問わず、この手のものを見ると肩にお湯を当てたくなるのが人間の心情。画像には写っていませんが、ここではひっきりなしに入浴客が打たせ湯を楽しんでいました。
なお、このあたりがプールの湯尻にあたり、画像の左下にある排水口では、それこそ川の如く膨大な湯量が吸い込まれていたのですが、位置関係から推測するに、このお湯は前回記事で紹介した一般者立ち入り可能ゾーンの石灰棚へ落とされているのではないかと思われます。
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プールの中央部はかなり広く、夏の最盛期には色とりどりの水着で一面が覆い尽されるようですが、今回訪問したのは肌寒い秋の午後、しかも空からは冷たい雨が降っていましたので、客足はまばらであり、広い温泉プールはその大きさを持て余してるようでした。
プールの真ん中にはロープが張られており、そこより手前側には遺跡がたくさん沈んでいるため全体的に浅くなっているのですが(平均して深さ1m程度)、ロープの向こう側は急に深くなっており、身長165cmの私では足がつかないほどでしたので(おそらく2m)、泳ぎが苦手な方はロープを越えちゃダメ。
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世界広しといえども、底に遺跡が沈んでいる温泉露天風呂なんて、他にあるでしょうか。貴重な遺跡を足で踏んづけるだなんて不謹慎ではないかと躊躇されるのですが、しかしこの上を越えていかなきゃ奥へ進めません。寧ろこんな機会は滅多にありませんから、親の仇を打つかのように遺跡を思いっきり踏んづけてやりました。なお遺跡の上はかなり滑りやすく、私も実際に滑って脛を打ってしまいましたから、こちらへ入る場合には要注意です。
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深いゾーンを示すロープを越えて更に奥へ泳いでゆくと、源泉からお湯が流れてくる上流部へと行き当たります。本能的に流れに逆らって泳ぐ魚のように、この狭い箇所には多くの客が集まっていたのですが、源泉に近いということは、それだけお湯の温度も高く、体感で38℃ほどあったはずです。しかもお湯の鮮度感も抜群で非常に気持ち良いため、自ずと人が集まってしまうわけです。より源泉に近づこうと、みなさん最上流部の鉄柵に捕まっていました。なおこの部分もかなり深く、足が底につかないため、岸に括りつけられたロープなどを握っていないと溺れちゃいそうになるのですが、ここだけ混雑しているためにロープを掴めるスペースが少なく(既に先客で埋まっている)、私はここで何度か立泳ぎをするはめになりました。
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最上流部はお湯の温度も鮮度も良好なのですが、私が驚いたのは泡付きの激しさです。まるでサイダーを注いだコップの内部のように、入浴中の私は全身が炭酸の気泡で覆われました。しかも、拭っても拭っても、気泡が付着してきます。今回のトルコにおける湯めぐり旅行では、他の地域でも多くの温泉を巡りましたが、泡付きはここが突出しています。なお、お湯を口に含むと、炭酸水の味がはっきりと口腔内に広がりました。
この「アンティーク・プール」の温泉は、パムッカレを生み出した源泉のひとつです。パムッカレの石灰棚は、石灰と炭酸を多く含む温泉が、地表で炭酸が抜けることにより、その結果として炭酸カルシウムが沈殿して形成されたものです。炭酸ガスの圧力が高いほど炭酸カルシウムの溶解度は格段に上がりますから、これだけの激しい炭酸の泡付きが見られるということは、パムッカレの温泉が地中にいるうちは沢山の炭酸カルシウムを溶解していたはずです。そしてその炭酸が一気に抜けることによって大量の沈殿が発生し、あのパムッカレのトラバーチンが生まれたのでしょう。この泡付きとパムッカレの石灰華は密接な関係があるわけですね。
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温泉の湧出地点は立ち入り不可ですが、上から見学することはできます。
底から気泡とともにお湯が湧出する光景が見られました。実にクリアで綺麗なお湯です。
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(上画像クリックで拡大)
源泉近くには4か国語による効能書きとともに温泉分析表が掲示されていました(施設入口にも同様の掲示あり)。温泉分析表のデータを抄出しながら、いつもの拙ブログ風に、日本の温泉法に基づく表現で日本語表記してみますと、以下のようになります。
ミリバルの数値から泉質はカルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉であることがわかります。湧出温度36℃ですからぬるいのは当然。世界屈指の石灰華段丘を形成する温泉ですから、カルシウムや重炭酸イオンが多いのは当たり前としても、遊離炭酸ガスは602.8mgであり、意外にも著しく多いわけではないようです(日本の温泉法の規定では、鉱泉1kg中に遊離炭酸ガスを1000mg以上含まないと二酸化炭素泉とは呼べません)。
いずれにせよ、お湯のクオリティは確かなものがありました。しかも炭酸ガスの温浴効果が働くのか、はじめのうちはぬるくてお湯から出られなくなったものの、やがて体全体がポカポカしはじめ、湯上がりはサッパリ爽快でありながら、温かさも持続するという、なんともありがたい感覚が得られました。入浴に要する費用はバカみたいに高いのですが、温泉ファンでしたら一浴する価値があるほど、ものすごい泡付きの温泉です。
●ヒエラポリス遺跡
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紀元前2世紀に築かれ、ローマ、ビザンツと続いて、14世紀に地震で崩壊したヒエラポリス。なぜか廃墟という構造物には人の心をひきつける魅力がありますが、それが何百年も前から残っているものだとしたら、魅力を通り越して蠱惑的ですらあります。左画像に写っている3連アーチの門は、ドミティアン門と称するローマ様式の建築物。
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遺跡の上をハンググライダーが飛んでいました。気持ちよさそうですね。
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門の手前に聳えるのは北大浴場の跡。大昔から温泉入浴は人々から愛されていたんだと思うと、今を生きる温泉ファンとしては嬉しい限り。なお現在はお湯が途絶えており、崩壊の危険性もあるので立入禁止。
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ドミティアン門から真っ直ぐ伸びる道は石畳で舗装されており、その両側には何本もの柱が並んでいました。ここはメインストリートだったのかな。歩くだけでも歴史を追体験しているような気分に浸れます。
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丘の上に延々と続く遺跡群。大きな街だったんだろうなぁ。
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私は学生時代に歴史を専攻しておきながら、正直なところ、古代の歴史にはほとんど興味がありません。ですから遺跡に関しては、悲しい哉、ビジュアル的な魅力以上の興奮(知的関心や歴史ロマンなど)が湧いてこないのですが、そんな私ですら思わず息をのんだのが、この円形劇場です。紀元前2世紀に建造されたこのローマ劇場は、収容人員が15000~20000人もあるんだとか。2000年以上も前の建造物とは信じられないほど、非常に立派な形で残っており、今でもここでイベントできちゃいそうな雰囲気です。重機もトラックも無い時代に、よくぞこんな大規模で美しい劇場を作り上げたものだ…。なお劇場の向こう側が「アンティーク・プール」の露天風呂です。人によっては、涸れて薄汚れたパムッカレよりも、この劇場を観た方が感動するかも。
以下、アンティーク・プールに関する諸データ
カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉
(各種数値に関しては、上述の本文を参照)
32リラ(6歳から12歳は13リラ)、貴重品預かり5リラ、ロッカー利用には10リラのデポジットが必要(使用後に返却されます)、ドライヤーあり
8:00~19:30(冬季は16:40まで)
GPS座標:N37.926064, E29.12542,
私の好み:★★+0.5
.
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パムッカレ-ヒエラポリス遺跡の中央部には大きな広場があり、その周囲には博物館やカフェなど観光客向けの施設が設けられています。この広場に面している施設のひとつが今回取り上げる「アンティーク・プール」。直訳すれば骨董品プールですが、ここは世にも珍しい、本物の遺跡が温泉に沈んでいる露天風呂であり、当地の主要な観光名所でもあります。事前に調べた情報によれば、パムッカレの石灰棚よりもこちらの方がはるかにお湯が良いとのことですので、先ほどの野湯(前回記事を参照)で風邪を引きそうになった私としては否が応でも期待してしまいます。
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前回記事でも触れましたが、北側ゲートから「アンティーク・プール」前まで有料のシャトルバスが運行されていますので(2リラ・15分おき)、遺跡の中をわざわざ30分もかけて歩きたくないという方には便利です。往路は歩き、復路はバス、という使い方も良いですね。
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入館してすぐ左手にあるレセプションで入浴料を支払います。先程のパムッカレの石灰棚における野湯は無料で勝手にできましたが、こちらは別途32リラを要します。つまり「アンティーク・プール」で湯浴みするためには、入場料25リラと入浴料32リラの計57リラ(約3000円)もかかるのです。一応遺跡や環境の保全を名目としているようですが、明らかに観光客の足元を見た料金設定であり、たかが温泉プールに3000円も支払うだなんてバカバカしい。でも温泉ファンとしては、わざわざここまで来ておきながら指を咥えて見学するだけでは満足できませんから、躊躇せずにサクッと支払いを済ませました。
なお私のように「アンティーク・プール」で入浴したい場合は有料ですが(この先の入浴ゾーンにチェックゲートあり)、館内での飲食や物販購入、あるいは見学のみでしたら料金は不要です。ちょうど入館の前から降っていた雨が本降りになってしまったため、館内のカフェは雨宿りの観光客で大混雑していました。
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これが温泉露天風呂です。木々に囲まれた温泉プールには大きな石材や柱が沈んでいますが、これらは全て本物の遺跡なんだとか。先述のように見学だけでしたら無料ですので、珍しい遺跡の温泉露天風呂で泳ぐ人々をカメラに収めようと、プールサイドに佇んでいる観光客の姿も見られました。
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左(上)画像はロッカーです。入浴するならば水着に着替える必要がありますので、荷物などをロッカーに収めることになりますが、ロッカー利用の際には、前にあるカウンターで係員にデポジットの10リラを支払い、鍵を受け取って指定された番号の箇所を使うことになります。なお10リラはデポジットですから、利用を終えて鍵を返却すればちゃんと返金されます。なお貴重品に関してはレセプションのセーフボックス(5リラ)が利用可能。
ロッカーの奥にはシャワールームと更衣室があり(右(下)画像)、ここで水着に着替えます。更衣室に関しては男女の区分が無いらしく、誰でも空いているところを使ってOKのようです。なお更衣室通路の一番奥にはドライヤーが壁に固定されているのですが、私が確認できたのはたった1台のみ。
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水着に着替えたら、ロッカー前にあるゲートで改札機にチケットのバーコードを読み取らせて、プールへ入ります。読み取りは係員がやってくれるのですが、ゲートから先はベンチも何も無く、お湯に浸かる他ありませんので、紙のチケットはその場で係員の手により破棄されちゃいます。旅の記念にチケットを持ち帰ろうと考えていたのですが、その目論見は儚く消えてしまいました。それなら紙じゃなくてリストバンド等にすれば良いのに…。
ゲートを通過してステップを下ってゆくと、上画像に写ってる砂利敷の水路のようなところに入りますので、奥へ向かってこの水路を歩いてゆきます。パムッカレの水溜まりよりはるかにお湯は温かく(35℃くらいか)、その温かさに思わず嬉しくなりました。尤も、外気温は15℃前後なのに湯温が35℃程度しかないので、一度お湯に浸かると寒くてお湯から出られなくなっちゃうんですけどね。
ここには打たせ湯みたいな箇所があり、結構な湯量が投入されています。洋の東西を問わず、この手のものを見ると肩にお湯を当てたくなるのが人間の心情。画像には写っていませんが、ここではひっきりなしに入浴客が打たせ湯を楽しんでいました。
なお、このあたりがプールの湯尻にあたり、画像の左下にある排水口では、それこそ川の如く膨大な湯量が吸い込まれていたのですが、位置関係から推測するに、このお湯は前回記事で紹介した一般者立ち入り可能ゾーンの石灰棚へ落とされているのではないかと思われます。
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プールの中央部はかなり広く、夏の最盛期には色とりどりの水着で一面が覆い尽されるようですが、今回訪問したのは肌寒い秋の午後、しかも空からは冷たい雨が降っていましたので、客足はまばらであり、広い温泉プールはその大きさを持て余してるようでした。
プールの真ん中にはロープが張られており、そこより手前側には遺跡がたくさん沈んでいるため全体的に浅くなっているのですが(平均して深さ1m程度)、ロープの向こう側は急に深くなっており、身長165cmの私では足がつかないほどでしたので(おそらく2m)、泳ぎが苦手な方はロープを越えちゃダメ。
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世界広しといえども、底に遺跡が沈んでいる温泉露天風呂なんて、他にあるでしょうか。貴重な遺跡を足で踏んづけるだなんて不謹慎ではないかと躊躇されるのですが、しかしこの上を越えていかなきゃ奥へ進めません。寧ろこんな機会は滅多にありませんから、親の仇を打つかのように遺跡を思いっきり踏んづけてやりました。なお遺跡の上はかなり滑りやすく、私も実際に滑って脛を打ってしまいましたから、こちらへ入る場合には要注意です。
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深いゾーンを示すロープを越えて更に奥へ泳いでゆくと、源泉からお湯が流れてくる上流部へと行き当たります。本能的に流れに逆らって泳ぐ魚のように、この狭い箇所には多くの客が集まっていたのですが、源泉に近いということは、それだけお湯の温度も高く、体感で38℃ほどあったはずです。しかもお湯の鮮度感も抜群で非常に気持ち良いため、自ずと人が集まってしまうわけです。より源泉に近づこうと、みなさん最上流部の鉄柵に捕まっていました。なおこの部分もかなり深く、足が底につかないため、岸に括りつけられたロープなどを握っていないと溺れちゃいそうになるのですが、ここだけ混雑しているためにロープを掴めるスペースが少なく(既に先客で埋まっている)、私はここで何度か立泳ぎをするはめになりました。
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最上流部はお湯の温度も鮮度も良好なのですが、私が驚いたのは泡付きの激しさです。まるでサイダーを注いだコップの内部のように、入浴中の私は全身が炭酸の気泡で覆われました。しかも、拭っても拭っても、気泡が付着してきます。今回のトルコにおける湯めぐり旅行では、他の地域でも多くの温泉を巡りましたが、泡付きはここが突出しています。なお、お湯を口に含むと、炭酸水の味がはっきりと口腔内に広がりました。
この「アンティーク・プール」の温泉は、パムッカレを生み出した源泉のひとつです。パムッカレの石灰棚は、石灰と炭酸を多く含む温泉が、地表で炭酸が抜けることにより、その結果として炭酸カルシウムが沈殿して形成されたものです。炭酸ガスの圧力が高いほど炭酸カルシウムの溶解度は格段に上がりますから、これだけの激しい炭酸の泡付きが見られるということは、パムッカレの温泉が地中にいるうちは沢山の炭酸カルシウムを溶解していたはずです。そしてその炭酸が一気に抜けることによって大量の沈殿が発生し、あのパムッカレのトラバーチンが生まれたのでしょう。この泡付きとパムッカレの石灰華は密接な関係があるわけですね。
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温泉の湧出地点は立ち入り不可ですが、上から見学することはできます。
底から気泡とともにお湯が湧出する光景が見られました。実にクリアで綺麗なお湯です。
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(上画像クリックで拡大)
源泉近くには4か国語による効能書きとともに温泉分析表が掲示されていました(施設入口にも同様の掲示あり)。温泉分析表のデータを抄出しながら、いつもの拙ブログ風に、日本の温泉法に基づく表現で日本語表記してみますと、以下のようになります。
カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉 湧出温度36℃(外気温23℃) pH6.86 溶存物質2238.294mgg/kg(ガス性のものを除く) 成分総計2844.204mg/kg
Na+:5.748mg(0.833mval%), Mg++:106.356mg(29.179mval%), Ca++:419.337mg(69.891mval%),
Cl-:13.826mg(1.306mval%), SO4--:560.000mg(39.071mval%), HCO3-:1079.700mg(59.277mval%),
H2SiO3:41.587mg, HBO2:4.868mg, 遊離CO2:602.8mg
2013年4月7日
Na+:5.748mg(0.833mval%), Mg++:106.356mg(29.179mval%), Ca++:419.337mg(69.891mval%),
Cl-:13.826mg(1.306mval%), SO4--:560.000mg(39.071mval%), HCO3-:1079.700mg(59.277mval%),
H2SiO3:41.587mg, HBO2:4.868mg, 遊離CO2:602.8mg
2013年4月7日
ミリバルの数値から泉質はカルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉であることがわかります。湧出温度36℃ですからぬるいのは当然。世界屈指の石灰華段丘を形成する温泉ですから、カルシウムや重炭酸イオンが多いのは当たり前としても、遊離炭酸ガスは602.8mgであり、意外にも著しく多いわけではないようです(日本の温泉法の規定では、鉱泉1kg中に遊離炭酸ガスを1000mg以上含まないと二酸化炭素泉とは呼べません)。
いずれにせよ、お湯のクオリティは確かなものがありました。しかも炭酸ガスの温浴効果が働くのか、はじめのうちはぬるくてお湯から出られなくなったものの、やがて体全体がポカポカしはじめ、湯上がりはサッパリ爽快でありながら、温かさも持続するという、なんともありがたい感覚が得られました。入浴に要する費用はバカみたいに高いのですが、温泉ファンでしたら一浴する価値があるほど、ものすごい泡付きの温泉です。
●ヒエラポリス遺跡
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紀元前2世紀に築かれ、ローマ、ビザンツと続いて、14世紀に地震で崩壊したヒエラポリス。なぜか廃墟という構造物には人の心をひきつける魅力がありますが、それが何百年も前から残っているものだとしたら、魅力を通り越して蠱惑的ですらあります。左画像に写っている3連アーチの門は、ドミティアン門と称するローマ様式の建築物。
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遺跡の上をハンググライダーが飛んでいました。気持ちよさそうですね。
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門の手前に聳えるのは北大浴場の跡。大昔から温泉入浴は人々から愛されていたんだと思うと、今を生きる温泉ファンとしては嬉しい限り。なお現在はお湯が途絶えており、崩壊の危険性もあるので立入禁止。
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ドミティアン門から真っ直ぐ伸びる道は石畳で舗装されており、その両側には何本もの柱が並んでいました。ここはメインストリートだったのかな。歩くだけでも歴史を追体験しているような気分に浸れます。
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丘の上に延々と続く遺跡群。大きな街だったんだろうなぁ。
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私は学生時代に歴史を専攻しておきながら、正直なところ、古代の歴史にはほとんど興味がありません。ですから遺跡に関しては、悲しい哉、ビジュアル的な魅力以上の興奮(知的関心や歴史ロマンなど)が湧いてこないのですが、そんな私ですら思わず息をのんだのが、この円形劇場です。紀元前2世紀に建造されたこのローマ劇場は、収容人員が15000~20000人もあるんだとか。2000年以上も前の建造物とは信じられないほど、非常に立派な形で残っており、今でもここでイベントできちゃいそうな雰囲気です。重機もトラックも無い時代に、よくぞこんな大規模で美しい劇場を作り上げたものだ…。なお劇場の向こう側が「アンティーク・プール」の露天風呂です。人によっては、涸れて薄汚れたパムッカレよりも、この劇場を観た方が感動するかも。
以下、アンティーク・プールに関する諸データ
カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉
(各種数値に関しては、上述の本文を参照)
32リラ(6歳から12歳は13リラ)、貴重品預かり5リラ、ロッカー利用には10リラのデポジットが必要(使用後に返却されます)、ドライヤーあり
8:00~19:30(冬季は16:40まで)
GPS座標:N37.926064, E29.12542,
私の好み:★★+0.5
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