カッパドキアでの観光を終えた私は、次なる目的地であるトルコ北西部の都市ブルサ(Bursa)へ移動することにした。
(カッパドキアでは現地催行のツアーに参加して人並みの観光をしただけなので、このブログではその内容の叙述を控えさせていただく)
旅行日:2014年11月初旬
トルコという国はバスの路線網が充実しているから、今回カッパドキア観光の拠点にしたギョレメ(Göreme)からブルサへ向かうには、長距離バスを利用したほうが便利で安いはず。しかし多少なりとも鉄っちゃんの血が流れている私としては、経路に少しでも鉄道を組み込みたい。そして、できれば当日中にブルサへ到着しておきたい。そこで思いついたのがトルコ国鉄(TCDD)の誇る高速鉄道"YHT"である。ギョレメから北上して首都アンカラ(Ankara)へ行けば、そこから高速鉄道を利用することができる。しかも私が今回のトルコ旅行を計画していた約3ヶ月前の2014年7月下旬に、YHTはイスタンブールのアジア側にあるペンディッキ(Pendik)まで延長開通していた。
そこで当初は、ギョレメからバスでアンカラへ出て、アンカラからペンディッキまでYHTを乗り通し、ペンディッキから高速船で海の対岸のヤロワへ渡り、ヤロワから頻発しているバスでブルサへアクセスするというプランを考えていた。しかしこれでは乗り換え回数が多く、どこか1行程でも遅延が発生すれば、将棋倒し的に後の行程も遅れてしまって、ヘタすればブルサまだ到着できなくなるかもしれない。
もうちょっとベターな乗り継ぎはないものか。冷静になって調べ直したところ、YHTには途中のエスキシェヒル(Eskişehir)付近からブルサへ路線を分岐延長する計画があり、既に敷設工事が着工されているらしい。ということは、YHTとブルサを連絡する何らかの移動手段が用意されているのではないかと推測してトルコ国鉄の公式サイトを隈なく探してみたら、案の定、エスキシェヒルでYHTに接続してブルサまで行くバスが運行されているではないか(リンク先のページの最下部に"ESKİŞEHİR'DEN YÜKSEK HIZLI TRENE BURSA OTOBÜS SAATLERİ"という見出しで運行時刻が表示されている。トルコ語表記)。グーグル翻訳の力を借りながら更に調べてみると、このバスはトルコ国鉄ではなく、大手バス会社のキャミル・コチ(Kâmil Koç)によって運行されていることも判明した。このYHT接続バスを使えばペンディッキ乗り換えよりも早くブルサへ到着できるので、今回YHTはアンカラからエスキシェヒルまでの乗車とし、そこからブルサ行きYHT接続バスを利用するルートで向かうことに決めた。
移動日当日の朝、まずギョレメのバスターミナルにある"Nevşehir Seyahat"社の窓口へ赴き、ここからアンカラまでのチケットを購入する。アンカラまでのバスは数社が運行しているが、アンカラでの乗り継ぎ時間を考えた場合、私の行程に最も合っていたのが、この"Nevşehir Seyahat"社の便であった。ついで、この並びにあるキャミル・コチの窓口にも出向いて、エスキシェヒルからブルサまでのYHT接続バスのチケットを買い求めようとしたが、窓口のスタッフ曰く、その便があるのは確認できるが、ここにある端末では発券できないとのこと。YHT接続バスの発券に関しては、何らかの制限が設けられているのかもしれない。仕方がないので、とりあえずアンカラまで出ることにする。
10:10にアンカラ行のバスがターミナルへやってきた。本来このバスはネブシェヒルのオトガル(バスターミナル)を11:00に出発するアンカラ行として運行されるものだが、始発点の前にギョレメへ立ち寄ってお客を拾ってくれるのだ。チケットには10:15という出発時刻が印字されているが、窓口のスタッフは10:00までにバス停で待っていろと時刻を手書きした。なるほど、そのスタッフが教えてくれた通り、券面表示より早い時間にバスがやってきたのであった。なお、バス会社によっては、ミニバスで始発点となる近隣都市の大きなバスターミナルまで無料送迎してくれるらしい。
バスはベンツ製で車齢が比較的若く、無彩色にレッドの差し色が鮮やかな車内は、清掃が行き届いており、乗り心地はすこぶる快適。シートモニターは新しいタッチパネル式で、画面サイズも大きくて見やすい。本来の始発点であるネブシェヒルでは約30分停車。定刻11:00にネブシェヒル出発した時点で、座席はほぼ埋まった。出発30分後には車内サービスも行われた。
起伏の少なく平地が果てしなく広がる中央アナトリアの大草原地帯をひたすら北上する。飼われているひつじの群れが幾度も車窓に映った。現在のトルコはかつてのオスマン帝国時代と比べると、はるかに領土が狭まってるのだが、それでも日本の倍の国土面積があり、山がちの島国に暮らす者にとって、この渺茫かつ雄大な景色には憧れを抱く。途中から進行方向左側に大きな湖が見えてきた。おそらくトルコで2番目に大きいトゥズ湖であろう。この東側湖岸を順調に走行。
12:45にドライブインを兼ねたガソリンスタンドでトイレ休憩。何分後に出発するのか案内放送されたようだが、トルコ語なのでチンプンカンプン。時間的にランチをとりたかったが、食事している最中にバスが発車してしまったら困るので、すぐに焼きあがるトーストなどで我慢し、乗務員や他の乗客の動向をうかがいながら、すぐに乗り込めるようバスの前で待機した。
結局20分近く休憩時間があったので、それがわかっていればゆっくりランチできたのだが、バスの前で臆病な面持ちで待っていた私の姿を見て哀れに思ったのか、隣の座席の若者がわざわざ私のために、ドライブインの売店でポテトチップスやジュースを買ってきてくれ、車内で分け与えてくれた。なんて心のやさしい若者なんだろうか。きっとイスラム教ならではの施しの精神なのだろう。何とかして彼に謝意を伝えたかったが、悲しいかな"Teşekkür ederim"(ありがとう)以上のトルコ語がわからず、ただ「ありがとう」という単語を繰り返すことしかできなかった自分がとても腹立たしかった。
到着予定時刻が近づくにつれ、車窓が都市らしくなってゆく。計画都市らしい整然とした感じがする。
窓越しに右(下)画像を撮っているころ、車内サービスのおばちゃんがバラの香りのコロンヤ(香水)を乗客にたっぷりふりかけていたので、私も他の客に倣って両手を差し出し、掌でコロンヤを受けて肌になすりつけた。香りとアルコールのためか、清涼感があってサッパリする。
バスに揺られること約5時間。15:10にアンカラの巨大なオトガル(バスターミナル)へ到着。空港のように到着と出発のフロアが分けられている。
ターミナル内は国際空港のターミナルビルに匹敵するほどバカでかいのだが、それでも人混みがすごい。
(チケットの画像はクリックで拡大・一部修正済)
到着したフロアからエスカレーターで、チケットカウンターが並ぶ上層階へ向かう。さきほどギョレメではYHT接続バスのチケットを購入できなかったが、首都のバスターミナルの窓口なら何とかなるかもしれない。そう期待しながらキャミル・コチの窓口を見つけて、購入したい旨を伝えると、私の想像通り、ここでは発券可能であった。窓口スタッフ曰く、なんと残り1席とのこと。気づかぬ間に自分の計画が綱渡り状態となっていたことに冷や汗をかく(※)。料金は24リラで、購入の際にはYHTのチケットの提示を求められた。
券面には英語が併記されているので、特に記載内容で戸惑うことはない。私が確保できた最後の1席は、最後部の通路側(コリドール)46番席だ。
(※)もしこの接続バスに乗れなくても、エスキシェヒルの駅からタクシーでオトガルまで行けば、そこからブルサまでのバスが運行されていることはわかっていたが、その場合は到着時間が深夜になってしまうから、どうしても接続バスに乗りたかったのだ。
既にYHTのチケットは入手しているので、エスキシェヒルからのバスチケットが確保できたことにより、今回の行程が全て繋がってほっとひと安心。オトガルからは地下鉄アンカライ(Ankaray)で、国鉄駅の最寄りであるマルテペ駅まで移動する。さすが首都だけあり、ここのオトガルには地下鉄が乗り入れているのでとても便利だ。アンカライの表示に従い長い通路を進んで駅へ。
アンカラのオトガルは「アシュティ(ASTi)」と称されているらしく、アンカライの駅名もASTiであった。先日拙ブログで取り上げたイズミルの公共交通機関は、1回券の発売が無いため回数券の購入を強いられたが、アンカラはちゃんと1回券が用意されている。そのかわり、(他の駅はわからないが)ASTi駅には券売機が無いので、購入の際には一つしかない窓口へ並ぶことになる。運賃は2.60リラ。窓口で何も言わずに3リラを出したら、チケットとお釣りが返ってきた。このチケットを赤い改札機へ矢印の方向に挿入すると、機械が券を読み取ってゲートが解錠されるので、上へ戻される券を手にとってゲートの回転バーを前へ回せば入場できる。なお退場時に券は不要(つまり券は手元に残る)。
このASTi駅はアンカライの始発駅でもある。電車はドイツ・シーメンス製のライトレールに準じたシステム。駅へ停まるごとに阪神電車も真っ蒼な急加減速を繰り返し、手摺にちゃんと捕まっていないと転びそうになった。
5~6分ほど乗車し、マルテペ(Maltepe)駅で下車。
国鉄駅(TCDD GAR)と記された案内表示に従って地下鉄駅から地上に上がり、出入口から1ブロック北東側を横切る大通りに出た。この通りの更に北東側(向こう側)にYHTが発着する国鉄アンカラ駅があり、ガイドブックやネット上の情報によれば、地下道を歩いてゆけば駅に出られるとのことだったが・・・
たしかに地下道のゲートには国鉄列車の時刻表が掲示されており、ここから駅へ行けそうな気配が感じられたのだが、工事中なのか階段の先は閉鎖されており、残念ながら先へ進めない。近くを通る歩行者に道を尋ねたところ、通りをぐるっと迂回して線路のガードをくぐれ、とジェスチャーで教えてくれた。
往来が激しくて埃っぽい大通りの歩道を歩き、自動車用の標識を確認しながら、駅がある方向へ迂回する。線路のガード下には風俗業者の小さなエロ系チラシがたくさんばら撒かれていた。イスラム圏であるこの国でこの手の商売は表向き御法度なはずだが、文化を問わず宗教を問わず、人間が暮らす場所には性欲を満たそうとする商いが存在し、その手の商売は人目のつきにくく日の当たらないところで、需要を喚起しようとする。これは万国共通、普遍の法則だ。
線路を潜り、韓国大使館がある立体交差の角を右に曲がって、しばらく歩くとアンカラ駅に到着できた。地下鉄を出て戸惑った時間を含めると20分もかかってしまった。駅前ではシミット(パンの一種)が露天販売されていた。いかにもトルコらしい風景。
この駅からいよいよYHTに乗り込むのだが、この続きは後編で。
(カッパドキアでは現地催行のツアーに参加して人並みの観光をしただけなので、このブログではその内容の叙述を控えさせていただく)
旅行日:2014年11月初旬
トルコという国はバスの路線網が充実しているから、今回カッパドキア観光の拠点にしたギョレメ(Göreme)からブルサへ向かうには、長距離バスを利用したほうが便利で安いはず。しかし多少なりとも鉄っちゃんの血が流れている私としては、経路に少しでも鉄道を組み込みたい。そして、できれば当日中にブルサへ到着しておきたい。そこで思いついたのがトルコ国鉄(TCDD)の誇る高速鉄道"YHT"である。ギョレメから北上して首都アンカラ(Ankara)へ行けば、そこから高速鉄道を利用することができる。しかも私が今回のトルコ旅行を計画していた約3ヶ月前の2014年7月下旬に、YHTはイスタンブールのアジア側にあるペンディッキ(Pendik)まで延長開通していた。
そこで当初は、ギョレメからバスでアンカラへ出て、アンカラからペンディッキまでYHTを乗り通し、ペンディッキから高速船で海の対岸のヤロワへ渡り、ヤロワから頻発しているバスでブルサへアクセスするというプランを考えていた。しかしこれでは乗り換え回数が多く、どこか1行程でも遅延が発生すれば、将棋倒し的に後の行程も遅れてしまって、ヘタすればブルサまだ到着できなくなるかもしれない。
もうちょっとベターな乗り継ぎはないものか。冷静になって調べ直したところ、YHTには途中のエスキシェヒル(Eskişehir)付近からブルサへ路線を分岐延長する計画があり、既に敷設工事が着工されているらしい。ということは、YHTとブルサを連絡する何らかの移動手段が用意されているのではないかと推測してトルコ国鉄の公式サイトを隈なく探してみたら、案の定、エスキシェヒルでYHTに接続してブルサまで行くバスが運行されているではないか(リンク先のページの最下部に"ESKİŞEHİR'DEN YÜKSEK HIZLI TRENE BURSA OTOBÜS SAATLERİ"という見出しで運行時刻が表示されている。トルコ語表記)。グーグル翻訳の力を借りながら更に調べてみると、このバスはトルコ国鉄ではなく、大手バス会社のキャミル・コチ(Kâmil Koç)によって運行されていることも判明した。このYHT接続バスを使えばペンディッキ乗り換えよりも早くブルサへ到着できるので、今回YHTはアンカラからエスキシェヒルまでの乗車とし、そこからブルサ行きYHT接続バスを利用するルートで向かうことに決めた。
移動日当日の朝、まずギョレメのバスターミナルにある"Nevşehir Seyahat"社の窓口へ赴き、ここからアンカラまでのチケットを購入する。アンカラまでのバスは数社が運行しているが、アンカラでの乗り継ぎ時間を考えた場合、私の行程に最も合っていたのが、この"Nevşehir Seyahat"社の便であった。ついで、この並びにあるキャミル・コチの窓口にも出向いて、エスキシェヒルからブルサまでのYHT接続バスのチケットを買い求めようとしたが、窓口のスタッフ曰く、その便があるのは確認できるが、ここにある端末では発券できないとのこと。YHT接続バスの発券に関しては、何らかの制限が設けられているのかもしれない。仕方がないので、とりあえずアンカラまで出ることにする。
10:10にアンカラ行のバスがターミナルへやってきた。本来このバスはネブシェヒルのオトガル(バスターミナル)を11:00に出発するアンカラ行として運行されるものだが、始発点の前にギョレメへ立ち寄ってお客を拾ってくれるのだ。チケットには10:15という出発時刻が印字されているが、窓口のスタッフは10:00までにバス停で待っていろと時刻を手書きした。なるほど、そのスタッフが教えてくれた通り、券面表示より早い時間にバスがやってきたのであった。なお、バス会社によっては、ミニバスで始発点となる近隣都市の大きなバスターミナルまで無料送迎してくれるらしい。
バスはベンツ製で車齢が比較的若く、無彩色にレッドの差し色が鮮やかな車内は、清掃が行き届いており、乗り心地はすこぶる快適。シートモニターは新しいタッチパネル式で、画面サイズも大きくて見やすい。本来の始発点であるネブシェヒルでは約30分停車。定刻11:00にネブシェヒル出発した時点で、座席はほぼ埋まった。出発30分後には車内サービスも行われた。
起伏の少なく平地が果てしなく広がる中央アナトリアの大草原地帯をひたすら北上する。飼われているひつじの群れが幾度も車窓に映った。現在のトルコはかつてのオスマン帝国時代と比べると、はるかに領土が狭まってるのだが、それでも日本の倍の国土面積があり、山がちの島国に暮らす者にとって、この渺茫かつ雄大な景色には憧れを抱く。途中から進行方向左側に大きな湖が見えてきた。おそらくトルコで2番目に大きいトゥズ湖であろう。この東側湖岸を順調に走行。
12:45にドライブインを兼ねたガソリンスタンドでトイレ休憩。何分後に出発するのか案内放送されたようだが、トルコ語なのでチンプンカンプン。時間的にランチをとりたかったが、食事している最中にバスが発車してしまったら困るので、すぐに焼きあがるトーストなどで我慢し、乗務員や他の乗客の動向をうかがいながら、すぐに乗り込めるようバスの前で待機した。
結局20分近く休憩時間があったので、それがわかっていればゆっくりランチできたのだが、バスの前で臆病な面持ちで待っていた私の姿を見て哀れに思ったのか、隣の座席の若者がわざわざ私のために、ドライブインの売店でポテトチップスやジュースを買ってきてくれ、車内で分け与えてくれた。なんて心のやさしい若者なんだろうか。きっとイスラム教ならではの施しの精神なのだろう。何とかして彼に謝意を伝えたかったが、悲しいかな"Teşekkür ederim"(ありがとう)以上のトルコ語がわからず、ただ「ありがとう」という単語を繰り返すことしかできなかった自分がとても腹立たしかった。
到着予定時刻が近づくにつれ、車窓が都市らしくなってゆく。計画都市らしい整然とした感じがする。
窓越しに右(下)画像を撮っているころ、車内サービスのおばちゃんがバラの香りのコロンヤ(香水)を乗客にたっぷりふりかけていたので、私も他の客に倣って両手を差し出し、掌でコロンヤを受けて肌になすりつけた。香りとアルコールのためか、清涼感があってサッパリする。
バスに揺られること約5時間。15:10にアンカラの巨大なオトガル(バスターミナル)へ到着。空港のように到着と出発のフロアが分けられている。
ターミナル内は国際空港のターミナルビルに匹敵するほどバカでかいのだが、それでも人混みがすごい。
(チケットの画像はクリックで拡大・一部修正済)
到着したフロアからエスカレーターで、チケットカウンターが並ぶ上層階へ向かう。さきほどギョレメではYHT接続バスのチケットを購入できなかったが、首都のバスターミナルの窓口なら何とかなるかもしれない。そう期待しながらキャミル・コチの窓口を見つけて、購入したい旨を伝えると、私の想像通り、ここでは発券可能であった。窓口スタッフ曰く、なんと残り1席とのこと。気づかぬ間に自分の計画が綱渡り状態となっていたことに冷や汗をかく(※)。料金は24リラで、購入の際にはYHTのチケットの提示を求められた。
券面には英語が併記されているので、特に記載内容で戸惑うことはない。私が確保できた最後の1席は、最後部の通路側(コリドール)46番席だ。
(※)もしこの接続バスに乗れなくても、エスキシェヒルの駅からタクシーでオトガルまで行けば、そこからブルサまでのバスが運行されていることはわかっていたが、その場合は到着時間が深夜になってしまうから、どうしても接続バスに乗りたかったのだ。
既にYHTのチケットは入手しているので、エスキシェヒルからのバスチケットが確保できたことにより、今回の行程が全て繋がってほっとひと安心。オトガルからは地下鉄アンカライ(Ankaray)で、国鉄駅の最寄りであるマルテペ駅まで移動する。さすが首都だけあり、ここのオトガルには地下鉄が乗り入れているのでとても便利だ。アンカライの表示に従い長い通路を進んで駅へ。
アンカラのオトガルは「アシュティ(ASTi)」と称されているらしく、アンカライの駅名もASTiであった。先日拙ブログで取り上げたイズミルの公共交通機関は、1回券の発売が無いため回数券の購入を強いられたが、アンカラはちゃんと1回券が用意されている。そのかわり、(他の駅はわからないが)ASTi駅には券売機が無いので、購入の際には一つしかない窓口へ並ぶことになる。運賃は2.60リラ。窓口で何も言わずに3リラを出したら、チケットとお釣りが返ってきた。このチケットを赤い改札機へ矢印の方向に挿入すると、機械が券を読み取ってゲートが解錠されるので、上へ戻される券を手にとってゲートの回転バーを前へ回せば入場できる。なお退場時に券は不要(つまり券は手元に残る)。
このASTi駅はアンカライの始発駅でもある。電車はドイツ・シーメンス製のライトレールに準じたシステム。駅へ停まるごとに阪神電車も真っ蒼な急加減速を繰り返し、手摺にちゃんと捕まっていないと転びそうになった。
5~6分ほど乗車し、マルテペ(Maltepe)駅で下車。
国鉄駅(TCDD GAR)と記された案内表示に従って地下鉄駅から地上に上がり、出入口から1ブロック北東側を横切る大通りに出た。この通りの更に北東側(向こう側)にYHTが発着する国鉄アンカラ駅があり、ガイドブックやネット上の情報によれば、地下道を歩いてゆけば駅に出られるとのことだったが・・・
たしかに地下道のゲートには国鉄列車の時刻表が掲示されており、ここから駅へ行けそうな気配が感じられたのだが、工事中なのか階段の先は閉鎖されており、残念ながら先へ進めない。近くを通る歩行者に道を尋ねたところ、通りをぐるっと迂回して線路のガードをくぐれ、とジェスチャーで教えてくれた。
往来が激しくて埃っぽい大通りの歩道を歩き、自動車用の標識を確認しながら、駅がある方向へ迂回する。線路のガード下には風俗業者の小さなエロ系チラシがたくさんばら撒かれていた。イスラム圏であるこの国でこの手の商売は表向き御法度なはずだが、文化を問わず宗教を問わず、人間が暮らす場所には性欲を満たそうとする商いが存在し、その手の商売は人目のつきにくく日の当たらないところで、需要を喚起しようとする。これは万国共通、普遍の法則だ。
線路を潜り、韓国大使館がある立体交差の角を右に曲がって、しばらく歩くとアンカラ駅に到着できた。地下鉄を出て戸惑った時間を含めると20分もかかってしまった。駅前ではシミット(パンの一種)が露天販売されていた。いかにもトルコらしい風景。
この駅からいよいよYHTに乗り込むのだが、この続きは後編で。