カラハユット温泉で一泊した翌朝、まだ辺りが朝霧で霞んでいる早い時間帯に外出し、商店街を抜けた先にある公営の温泉施設「クルムズ・ス(kırmızı Su)」へと向かいました。
構内は公園となっていて、誰でも自由に入場可能。緑豊かな園内を進んでゆくと…
●園内の石灰棚など
公園の中央部には、赤茶色をした巨大な石灰棚が、傾斜地形に沿う感じで形成されていました。さすがにパムッカレには及ばないものの、数メートルもの高さにまで堆積した立派な石灰華段丘がこんなところにもあったとは思いもよらず、圧巻の景色を目の前にしてしばし立ち尽くしてしまいました。
段々の一つ一つが円弧を描いている石灰棚。その一番上から、金気と石灰を含んだ温泉が落とされており、ベージュに染まった各段にお湯が溜まっています。
最上段から眺めるとこんな感じ。まるで東南アジアの棚田みたい。もし日本にこれだけの規模の石灰棚が存在していたら、相当有名な観光地になっているでしょうね。でも当地にはパムッカレというトラバーチン界の横綱がご近所にあるため、こんなに立派でも存在感は控えめ。
下段は大きな湯池になっており、その畔でもお湯が噴き上がっています。湯量豊富なんですね。私の訪問時、この池ではおばちゃん達が足湯を楽しんでいました。実は前夜にもここを訪れているのですが、その時には中学か高校生らしきお兄ちゃん達が、水着になってこの池で泳いでいました。この温泉は老若男女を問わず、地元の方に愛されているようです。
園内には有料の各種施設もあり、左(上)画像は個室風呂、右(下)画像は普通のスイミングプールなのですが、訪問した時間帯が早すぎたため、係員らしき人の姿が全く見当たらなかったばかりか、どの扉も固く閉ざされていました。スイミングプールに関しては、水が半分抜かれている上、落ち葉などがたくさん沈んでいましたから、利用できるのは夏季のみであり、私が訪れた冬期はクローズされちゃうのでしょう。
マッサージルームも(左上(上)画像)、オープンカフェも(右(中)画像)も、ドクターフィッシュの小屋も(左下(下)画像)、みんな閉まっていました。訪問する時間を間違えちゃったか…。あるいはシーズンそのものが外れていたのか…。
なんと園内で日本語の看板を発見。ということは、この公園は日本人の利用も多いわけですね。パムッカレにはたくさんの日本人観光客が訪れ、その宿泊先として温泉地カラハユットが選ばれることも多いわけですが、温泉をこよなく愛する精神文化が、私のような好事家のみならず、当地で観光する皆さんの足をこの町はずれの温泉公園へ運ばせるのでしょう。
泥マッサージや泥プール、テルマル(温泉)プール等で楽しんじゃおうぜ、といったところでしょうけど、係員が人っ子一人いないから、マッサージ関係は利用できないなぁ。とりあえず看板の奥へ進んでみようかな。
●温泉プール
誰もいないオープンカフェを通り抜けると、その先には長方形のプールが2つ並んでいました。屋根掛けされたそのプールは目測で6m×10m。湯面からは湯気が上がっており、翠色を呈したお湯が満たされているではありませんか。
2つのプールに挟まれたスペースでは、間欠泉のようにボコボコと音を立てながらお湯が噴き上がっており、真っ白な湯気とともに金気臭と土類臭を辺りに放っていました。この湯口に温度計を差してみますと、49.8℃という数値が計測されました。こんな光景を目にしたら、心を躍らさずにはいられません。
そのお湯が注がれるプールの温度は37.5℃。表面積が広いために外気の影響を受けてかなり冷めてしまうようですが、それでも十分に入浴できる温度ですから、居ても立ってもいられなくなった私は、木陰で水着に着替えて入浴してしまいました。
お湯は翠色に濁っているものの、底が見える程度の透明度を有しています。こちらの温泉は英語で"RED WATER"と称するようですが、明るさや酸化の進み具合などによって色合いや濁り方が異なるのでしょうね。明瞭な金気感と土類感があり、湯口では石膏的な甘さの他、炭酸味がはっきりと感じられました。湯中ではキシキシと引っかかる浴感が強く得られます。わかりやすい重炭酸土類泉系統の温泉であり、それゆえに大規模な石灰棚が形成されたのでしょう。
40℃に及ばない湯加減ですから、てっきり長湯ができるかと思いきや、炭酸の影響なのか温まり方が実にパワフルであり、肩まで浸かってしばらくすると体中が熱くなって、湯船から上がってクールダウンを求めたくなるほどでした。湯上がりも長い時間にわたってホコホコとした温まりが持続しました。言わずもがな、湯使いは完全掛け流し。なかなか良質なお湯でした。おすすめ。
●泥湯・シャワーなど
温泉プールの隣にあるのが泥湯のプール。温泉のお湯と一緒に濃い灰色の泥がたっぷり溜まっています。プールの大きさは温泉槽と全く同じですが、こちらはお湯の投入量が少なく、かなりぬるくなっていました。誰もがすすんで水着になりたくなる夏向けの施設なのかな。
真ん中には台があって、いくつかのバケツが置かれていました。田んぼのようにぬかるむ槽に入って、そのバケツで泥を掬ってみると、上画像のような感じです。
泥を腕に塗ってみました。泥はキメが粗く、枝の破片など不純物も混じっていましたので、全身に塗ることは躊躇われました。また、ただでさえぬるい泥を体に塗ると、たちまち熱が奪われて冷たくなってしまいました。多くのお客さんが利用すると想像される夏でしたら、きっとメンテナンスが行き届き、泥を塗ることによって爽快感も味わえるのでしょうね。
泥を体に塗った後は、その泥を洗い流さねばなりませんが、この施設でありがたいのは、シャワーに温泉が引かれていること。先日拙ブログで紹介しましたダルヤン泥温泉のシャワーは真水のみであり、冷たさを怺えながら泥を落としましたが、こちらではそんな辛抱なんて不要。柱に取り付けられているバルブを開けると温かいお湯が落とされますので、それで丁寧に泥を流し、その後は暖を取るため再び温泉プールに入りました。なおシャワーの吐出口には小さいながらもしっかり析出が付着していました。れっきとした温泉である証です。
温泉プールには誰もいなかったので、私は木陰でササッと水着に着替えてしまいましたが、このようにちゃんとした更衣室もありますから、良い子のみなさんが利用する際はここで着替えましょう。
GPS座標:N37.967613, E29.1027,
開門時間不明(私は深夜と早朝に訪れましたが、いずれも開門されており、温泉プールにはお湯がきちんと張られていました)
私の好み:★★+0.5