温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

小浜温泉 蒸気家

2015年11月23日 | 長崎県
今回から久々に九州の温泉を長期にわたり連続して取り上げてまいります。まずは長崎県島原半島の小浜温泉から。

 
 
1軒目は雲仙市小浜支所前の「蒸気家」を訪うことにしました。かつては「田中荘」という屋号でしたが、昨年(2014年)にリニューアルして現在の屋号を名乗るようになり、その新しい屋号が示すように、建物横の源泉施設では真っ白い湯気がもうもうと立ち上がっていました。このように街のあちこちから湯気が立ち上がっているのは、小浜温泉ならではの光景です。
現在は素泊まり格安宿としての営業スタイルをとっており、別府・鉄輪温泉の自炊宿でおなじみの温泉蒸し釜があるので自炊も可能ですが、お食事付きの宿泊も可能であり、お客さんの多様なニーズに対応できるようです。リニューアルされたお宿だけあり、館内はこざっぱりとして落ち着いた雰囲気です。日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。


 
ロビー左手から館内奥へ進んだ突き当たりが男女別の浴場。館内にはこのほか家族風呂もあるのですが、私が日帰り入浴客なので、今回は男湯のみの利用です。訪問した時間はちょうど清掃が終わったばかりで、脱衣室はとても綺麗。室内に洗面台が2台並び、出入り口付近にロッカーが設置されているほか、扇風機やシーリングファンなどもあって、湯上がり後のクールダウン対策も問題ありません。


 
浴室に入ると、臭素臭のような僅かな刺激を伴う硫化水素臭が香ってきました。この日の一番風呂だったためか、床は乾燥しており、桶や腰掛けなど備品類もきれいに整頓されていました。床は市松模様のタイル貼りで、側壁下部には暖色系の石材が用いられ、全体的にオフホワイトやクリーム等の色調でまとめられた室内はぬくもりのある佇まいです。洗い場は二手に分かれており、計5基のシャワー付きカランが取り付けられています(なおカランから出てくるお湯は真湯です)。


 
洗い場の隣には木箱のような小さな2室は温泉蒸気を利用したスチームサウナで、大きさは1室につき1人。白い腰掛けが置かれており、内部は湯気で白く煙っていて、実際に入ってみますとかなり熱く、しっかりと蒸されました。


 
全面タイル貼りの浴槽は鏡餅を半分にしたような形状をしており、最大幅で3.5m×6m、13~4人は同時に入れそうな容量があり、一番端っこには寝湯ができるよう、背もたれと枕が設けられていました。また、浴槽上の壁には松や帆船、そして雲仙の普賢岳と思しき山がタイルによって描かれており、寝湯関係のタイルの貼り方や、壁のタイル絵の意匠などに昭和らしい古風な美意識が感じられます。


 
浴槽を別の角度からも撮ってみました。窓下の槽内には塩ビ管(VP管)が埋められており、そこから気泡がブクブクと上がっていました。泡風呂発生装置も稼働しているみたいです。湯船のお湯はほぼ無色透明で、(私の体感で)42℃前後の入りやすい湯加減となっており、浴槽のお湯は浴槽縁の切り欠けから静々と少しずつオーバーフローし、その流路はベージュ色に染まって、細かいうろこ状の石灰華の模様が形成されていました。


 
浴槽の片隅に小さく囲まれている湯枡が源泉投入口。壁から突き出ているバルブ付きの塩ビ管は太いのですが、そこから吐出されるお湯は80℃弱の熱湯なので、投入量は思いっきり絞られています(それゆえ上述のようにオーバーフロー量も少ないわけです)。なお湯使いに関する案内は見当たりませんでしたが、おそらく掛け流しかそれに準じた湯使いかと思われます。
この小さな湯溜まりからお湯を掬って、息をふーふー吹きかけながら少しずつ口にしてみますと、上述のような軽い刺激を伴う硫化水素臭が香ってくるほか、はっきりとした塩味があり、ほんのりと苦汁味や石灰のような味も混在していました。湯中では食塩泉らしいツルスベ浴感が得られ、湯船に浸かりながら腕でお湯を掻くと、しっとりとしたトロミも感じられました。一方、温泉成分の影響なのか、湯船のお湯を使って石鹸等を泡立てようとしても、なかなか泡立たず、それゆえ真湯のシャワー使用は欠かせないかと思われます。さすが食塩泉だけあって湯上りの温まりは実にパワフルで、いつまでも湯冷めせず、むしろ汗がなかなか止まらないほどでした。


温泉分析書見当たらず(おそらく食塩泉)

諫早駅などから島原鉄道バスの小浜方面行き、あるいは長崎駅前から長崎県営バスの雲仙行特急バスで小浜バスターミナル下車すぐ
長崎県雲仙市小浜町北本町14-7  地図
0957-74-2101
ホームページ

日帰り入浴9:00~21:00
400円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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那須温泉 ホテルグリーンパール那須

2015年11月21日 | 栃木県
 
前回取り上げた「金ちゃん温泉」を出た後、まだ外が明るく、体力的にもう一軒ハシゴできそうだったので、那須湯本方面へ戻る形になりますが、「ホテルグリーンパール那須」で日帰り入浴することにしました。再び那須シャトルバスの「キュービー号」に乗り込み、今度は「藤城清治美術館」で下車です。「ホテルグリーンパール那須」は那須湯本と南ヶ丘牧場の中間くらいに位置しており、地図で見たときにはここが最寄りかと見当をつけていたのですが、でも実際にはこの一つ先の「ホテルサンバレー那須」で下車した方が良かったみたい。


 
バスを降りて徒歩14分で「ホテルグリーンパール那須」に到着しました。元々は荒川区の保養施設なのですが、現在は民間(ビューホテルグループ)との間で賃貸借契約が結ばれ、その民間事業者によって運営されており、区民のみならず一般客でも気軽に利用もできるようになりました。そうした経緯があるためか、外観は上場企業のふた昔前の福利厚生施設みたいです。民間委託後も荒川区の保養施設としての機能を果たしており、荒川区民は格安料金で利用することができます。この日も駐車場には足立ナンバーの車が数台とまっていましたから、区民が宿泊していたのでしょう。でも区民の利用率が良くないにもかかわらず、いまだに区のお金が投入されつづけているため、荒川区の内部(区議会等)では完全民営化を目指すべきではないか(つまり区と宿は縁を切るべきではないか)という声が上がっているとかいないとか…。


 

日帰り入浴客専用の下駄箱に靴を収めて入館します。フロントの方はとても丁寧に対応してくださいました。お風呂は2階にあるので、1階ロビーにある階段を上がって2階ホールへ向かいます。2階のホールにはお水のサービスが用意されていました。このホールは吹き抜けになっていて、1階のラウンジを見下ろせます。大きな窓と大きな煙突がとっても印象的で、高原リゾートらしい清々しい空間です。


 
ホールから伸びる廊下を進んで暖簾をくぐります。男女別大浴場の他、貸切の露天風呂もあるんだそうですが、日帰り入浴の場合は別料金が必要となるため、今回は大浴場のみの利用です。


 
洋風で瀟洒なホールから一転して脱衣室は和風な趣きです。扉を開けると硫黄の匂いがふんわり香ってきました。リゾートホテルとしてのプライドなのか、広い室内は清掃がよく行き届いており、アメニティも揃っていて、使い勝手は良好です。また扇風機も用意されているので、湯上り後のクールダウン対策もぬかりありません。


 
(上2枚の画像はクリックで拡大)
こちらのお風呂で使われているお湯は自家源泉ではなく、遠く離れた茶臼岳東側山腹の「奥の沢源泉」(明礬沢付近)など複数の源泉から集めたお湯を数キロ引っ張っています。室内にはどのようなルートで引湯されているのか、わかりやすく図示されていました。また状況に応じて加温することもあるため、どのようにお湯を集中管理しているのか、そして熱交換システムによっていかに加温しているのか、そうした仕組みに関しても図解していました。なおこうした引湯および集中管理は、専門の業者によって維持運営されており、このホテルではその業者からお湯を買って配湯してもらっているわけです。前々回の記事で取り上げた「町営いこいの家」では大丸温泉の源泉を引湯して使っていましたが、那須一帯ではこのような引湯があちこちで見られます。


 
 
浴室に入った途端、焦げたような臭いを伴う硫化水素臭がツーンと鼻孔を刺激してきました。男湯の場合は浴室の左側一面に窓が広がっており、とても明るく広々としています。この日は霧で視界が霞んでおり、付近の森林しか望めませんでしたが、晴れている日にはけだし素晴らしい眺望が楽しめることでしょう。
室内には複数の浴槽が据えられており、最奥には無色のお湯が張られた槽がふたつ並んでいますが、この2つは温泉ではなく循環ろ過の真湯ですので、今回はノータッチです。

窓と反対側に洗い場があり、シャワー付きのカランが向かい合わせに計11基並んでいました。備え付けのアメニティーはシャンプーとコンディショナーが分かれていますので、リンスインシャンプーだと髪がゴワゴワして嫌だというお客さんでも大丈夫。訪問時は桶や腰掛けがきちんと整頓されており、係員によってこまめに手入れされていることが窺えます。内装は石板貼りですが、暖色系の石材が用いられているため、温もりのある印象を受けます。


 
室内の一角にはガーデンのような小さな飾りがあり、リスの人形が置かれて可愛らしく演出されていました。またアンパンマンの車など子供向けの遊具も備え付けられており、ファミリーを意識した配慮が実践されていました。


 
 
窓下に据えられている瓢箪を半分に割ったような大きな浴槽が、ここの主役である温泉浴槽。周縁には岩が並べられており、サイズ的には10人前後でしょうか。浴室内は上述のように石板貼りであり、床には鉄平石が敷かれているのですが、この浴槽周りだけは元々の色が全くわからないほど真っ白に染まっているばかりか、その表面がガザガサに荒れていました。成分付着によるものか、あるいは腐食して剥離してしまったのかよくわかりませんが、このお湯が相当なクセ者であることに間違いなさそうです。

浴槽の一番奥(脱衣室側)には湯口があり、その反対側にあたる湯尻の岩の隙間からお湯が溢れ出ていました。気温によって加温されることもあるそうですが、基本的には放流式であり、お湯が溢れ出る周りはクリーム色に分厚くコーティングされていました。


 
湯口をクローズアップしてみました。黒御影石でつくられたこの湯口の表面には、硫酸塩の析出や硫黄の結晶などいろんな色を帯びた温泉成分がコンモリとこびりついており、まるで口を開けて何かを吐き出しているモンスターみたいです。また湯口だけではなく、温泉の飛沫が付着するその周辺(壁など)も黄色く染まっていました。更には、湯口だけでなく浴槽の縁に並べられた岩にも析出が付着してトゲトゲしており、入浴して縁にもたれかかると、背中や頭などがチクチクと刺激されました。

湯船のお湯は青みを帯びた灰白色に濁っており、光の入り方によっては灰色がやや濃い目に表れている乳白色濁りにも見えます。見た目こそ近所の那須湯本の鹿の湯源泉に似ていますが、酸性泉の那須湯本と違ってこちらはpH6.0なので酸味はあまり感じられません。でもその代わりに苦味はかなり強く、口腔内の粘膜がビリビリ痺れるほど苦くて渋みがあり、硫黄泉らしいタマゴ味もしっかり得られます。匂いに関しては脱衣室まで漏れてくるほど強く、まるで火山の噴気孔から吐き出されるガスような刺激を伴う硫化水素臭、そして何かが焦げているかのような匂いがはっきりと嗅ぎ取れました。分析書によれば、硫化水素イオンは10.1mg, 遊離硫化水素に至っては114.6mgという驚異的な数値であり、強い匂いはこうした大量の硫化水素によってもたらされているのでしょう。この量は日本に星の数ほどある温泉の中でも屈指の多さではないでしょうか。もちろん、室内では換気扇が回っており、窓の下部には通風用のルーバーも取り付けられていますから、ガス中毒は気にせずに入浴できますよ(当たり前ですが、そうでないと保健所から営業許可がおりませんからね)。また引湯してくる間にどんどん抜けてゆくはずですから、このお風呂における硫化水素の量は、分析書よりはるかに低い数値になっているかと思われます。

酸性泉の那須湯本の湯と異なり、こちらは中性に近い弱酸性ですから、入浴中は肌が刺激されるようなことはなく、体にまとわりつくようなトロミも弱く、味や匂いに反して浴感は意外にもマイルドで、程よい湯加減に調整されていることもあって、入りやすくてついつい長湯したくなります。長い距離を引湯されてくる間に、角が取れてお湯の感触がまろやかになるのでしょう。でも、決して熱くないにもかかわらず、硫黄による血管拡張効果が働くためか、気づけば心臓が激しく鼓動しており、軽くふらついて湯あたりを起こしそうになりました。さすが総硫黄124.7mgのお湯は伊達じゃありません。
規模の大きなリゾートホテルだからと言って侮るなかれ、非常に個性的で濃厚なお湯を堪能できる実力派のお風呂でした。


 
湯上がりにフロントの売店でりんどう湖ファミリー牧場のロイヤルジャージー牛乳を購入し、ぐびぐびっと一気飲み。ちょっとお高い牛乳ですが、さすがジャージー種の牛乳だけあって、とっても濃厚で美味。ささやかな贅沢を楽しませていただきました。


 
帰路は「サンバレー那須」の敷地を東西に突き抜ける公道を歩いて、県道の「新那須」バス停から那須塩原行き(黒磯駅経由)の路線バスに乗ることにしました。「サンバレー那須」の看板に下に小さく「グリーンパール那須」の看板も立っていますから、路線バスでも車でも、アクセスとしてはこちらからの方がわかりやすいかと思います。


新那須温泉供給(株)那須温泉(稲川1~4号、苦土稲川1・2号、県電気局B-3、八幡崎1号混合泉) 
単純硫黄温泉(硫化水素型) 54.4℃ pH6.0 545.0L/min 溶存物質0.847g/kg 成分総計1.205g/kg
Na+:41.5mg(18.20mval%), Ca++:120.3mg(60.49mval%), Mg++:21.3mg(18.17mval%), Mn++:0.2mg, Fe++:0.2mg,
Cl-:16.7mg, HS-:10.1mg, I-:0.8mg, SO4--:320.3mg(67.76mval%), HCO3-:145.2mg(24.19mval%),
H2SiO3:157.4mg, CO2:243.6mg, H2S:114.6mg,
源泉の温度により加水することあり

那須塩原駅もしくは黒磯駅より那須湯本方面行きの東野交通バスで「新那須」下車徒歩10分強、もしくは那須シャトルバス「キュービー号」で「ホテルサンバレー那須」下車
栃木県那須郡那須町湯本213  地図
0287-76-2523
ホームページ

日帰り入浴13:30~20:00(受付19:00まで)
平日500円・土日祝700円
ロッカー(貴重品用の小さなもの)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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那須町高久 金ちゃん温泉

2015年11月19日 | 栃木県
※2016年11月にリニューアルオープンしました。詳しくは公式サイトでご確認ください。当記事はリニューアル前の様子を取り上げています。

 
那須湯本から路線バスに乗って山を下りて、途中にある道の駅「友愛の森」で下車し、那須町が運営する観光客向けシャトルバス「キュービー号」に乗り換えて、次なる目的地である「金ちゃん温泉」へと向かいます。


 
「友愛の森」から乗車すること約15分。「那須わくわく広場」という停留所で下車。バス停の先にある丁字路に「金ちゃん温泉」の看板が立っていますので、これに従ってこの角を左折します。


 
雪化粧をした那須岳を望みながら、畑や森林がまだらに点在する那須の高原を北上します。


 
途中でサルの群れと遭遇しました。観光客慣れして人間をバカにしている日光のサルと違って、こちらのサルは人間との程よい距離感が保たれており、私が傍を通り過ぎても特に威嚇してくるようなことはなく、カメラを向けても「だからどうした」と言わんばかりの素知らぬ顔です。親子もおり、子猿の仕草が可愛いのなんの。


 
周囲に別荘が立ち並ぶ緩やかな坂を登りきると丁字路に突き当たり、そこを右折して間もなくすると、沿道に「営業中」の赤い幟、そして「金ちゃん温泉」の看板が立っていました。



「那須わくわく広場」バス停から徒歩約15分で「金ちゃん温泉」に到着しました。落葉樹林が広がる別荘地の中にひっそりと佇む日帰り温泉入浴専門施設です。2年ほど前にオープンしたばかりの、那須では新しい温泉施設です。
オープン当初は県外(埼玉県?)に住むオーナーさんが週末ごとに通って店を開けていたため、金・土・日のみの営業だったそうですが、その後経営形態が変わり、現在は定休日である水曜以外毎日営業しています。平屋の建物は、外装の色調こそ落ち着いていますが、いかにも当世風のコストと実用性を重視したプレハブっぽい造りです。



広い駐車場の一角には源泉井や貯湯タンクが設置されていました。いまから入るお風呂のお湯は、ここから湧出しているんですね。なお井戸の深さは1400mもあるんだそうです。


 
玄関入ってすぐのところにある受付で料金を支払い、浴室のある館内の奥へと進みます。館内の最奥部には食事処を兼ねた座敷があり、さらにその奥の屋外には休憩用のウッドデッキも設けられていました。またお座敷の前には冷水サービスも用意されていました。開業してまだ2年程度しか経っていないため、館内はどこもかしこも綺麗でピッカピカ。


 
ウッディーでぬくもりが感じられる脱衣室は、ガラス戸を通じて内湯や露天風呂まで見通せ、屋外から差し込むたっぷりの陽光のおかげで明るく爽やかです。洗面台まわりなどの清掃も行き届いており、気持ち良く使えました。また備え付けのロッカーは、一つ一つのスペースが大きく、しかも無料で施錠できるので、使い勝手も良好です。


 
内湯の浴室に入った途端、温泉由来のアブラ臭が香ってきたほか、建材として使われている木の芳香もふんわりと香ってきました。露天風呂側の大きなガラス窓から燦々と陽光が降り注ぎ、室内の採光具合は抜群です。床は石板敷きですが壁面下部には大谷石が用いられ、側壁上部の木材と相まって視覚的に柔らかな質感を生み出しています。
洗い場にはシャワー付きカランが計5基設けられており、ボディーソープやリンスインシャンプーも備え付けられています。


 
内湯の浴槽は目測で2.5m×1.5m強。おおよそ4人サイズ。縁には木材が用いられ、底面は石板敷きですが、槽内側面には大谷石が採用されていました。浴槽のお湯は薄い山吹色を帯びて弱く濁っています。お湯は完全掛け流しで、館内表示によれば源泉温度により加水することもあるんだとか。浴槽の隅っこに取り付けられた木箱の蓋を開けて内部を見てみますと、箱の中で2つの管が合流しており、おそらく2本のうちのどちらかが加水用の配管なんだと思われますが、この日はどうやら加水は止められていたようで、湯口から吐出されるお湯の温度を測ったところ、55.5℃という直接触れないほどの高温でした。ただ、加水せずに湯加減を調整するためか、お湯の投入量はチョロチョロ程度に絞られており、その甲斐あって湯船では41℃という入りやすい温度に落ち着いていました。
私が湯船に入った瞬間はザバーッと勢いよく溢れ出ていき、その後もしばらくは縁の切り欠けからオーバーフローしていましたが、私が上がった後は一気に嵩が減ってしまい、しかも投入量は決して多くないため、嵩のリカバリーが遅く、なかなか元の水位まで戻りませんでした。加水せず湯量を絞ることによって、お湯の濃さを維持して湯加減を調整しているわけですが、熱い源泉をかけ流す場合、このように投入量を減らしてお湯の濃さを維持するか、あるいは適度に加水してお湯の入れ替えペースを早めるか、どちらの手法を採用すべきか、非常に悩ましいところですね。


  
屋根付きのアプローチを進んだ先でお湯を湛えている露天風呂は、全体を屋根で覆われている岩風呂で、10人は余裕で入れそうなキャパを擁しています。周りは目隠しの塀で囲まれていますが、露天と塀までの間に大小様々な岩が離れられて庭園のような空間が誂えられており、周囲の木々が借景となって、自然に恵まれた清々しい環境を実感できる造りになっていました。


 
熱いお湯が流れている岩の湯口はオレンジ色に染まっており、その温度は49.7℃という高温でした。内湯の場合は浴槽の容量が限られているため、温度調整を図るべく投入量が絞られていましたが、露天風呂は容量が格段に大きく、また外気の影響も受けるため、しっかりとした量が投入されていました。


 
上述のような岩の湯口の他、露天の底面には穴があいた黒いホースが沈められており、ここからもお湯が投入されて、浴槽全体の温度均衡が図られていました。こうした設備のおかげで、露天風呂では外気で冷めることなく、温度計は43℃を指していました。


 
露天の浴槽周りには岩が並んでいますが、側面や底面など槽内には大谷石が用いられており、多孔質の石材ならではの柔らかで滑らかな肌触りがとっても良好です。岩の上にはホビットの人形が並んで湯浴み客に微笑みかけていました。

さて肝心のお湯に関してですが、分析書によれば源泉温度はなんと82℃もあるんだとか。なお源泉井の深さは1400m。地下深くから汲み上げられた熱湯は一旦貯湯タンクにストックされ、ある程度冷ましてから浴室へ供給しているものと想像されます。湯船のお湯は薄い山吹色に弱く濁っており(実際には、槽内の石材の関係で若干緑色を帯びて見えます)、湯中では山吹色や橙色の湯の花が無数に浮遊および沈殿していました。
お湯を口に含むと(塩辛くはないものの)はっきりとした塩味を有している他、ミントのような清涼感、そして渋みや痺れを伴う苦味もあり、実際に唇などに少々の痺れが残りました。湯面からはいわゆるアブラ臭が放たれており、湯口でははっきりとその匂いを嗅ぐことができました。栃木県内でアブラ臭の温泉といえば喜連川が有名ですが、喜連川の匂いとは毛色が異なり、どちらかといえば以前拙ブログで紹介した大田原の「那須野ヶ原ベルビューホテル」に近いような感じがします。
お湯に浸かると、トロミが感じられる他、食塩泉らしいツルツルスベスベ感がはっきりと肌に伝わり、滑らかな浴感が気持ち良いので、何度も自分の肌をさすってしまいました。また食塩泉的なフィーリングに混ざって、硫酸塩泉のような引っかかりも少々混在しているのが、このお湯の面白いところです。湯上りには力強く温まり、しばらくは外套要らずで過ごせました。夏に入ったら汗が止まらなくなるかも。那須の温泉と言えば「鹿の湯」に代表される那須湯本の白濁した酸性硫黄泉が思い浮かびますが、大丸温泉のような硫酸塩泉系の単純温泉もあれば、この「金ちゃん温泉」のようにアブラ臭を伴う食塩泉もあり、実にバラエティー豊かです。那須という土地の魅力を改めて実感できる温泉でした。


ナトリウム-塩化物温泉 82℃ pH7.5 300.0L/min(動力揚湯) 溶存物質3.258g/kg 成分総計3.258g/kg
Na+:1083.9mg(96.14mval%), Ca++:27.1mg, Fe++:1.5mg,
F-:10.0mg, Cl-:1359.0mg(77.91mval%), SO4--:287.8mg(12.18mval%), HCO3-:265.4mg(8.84mval%),
H2SiO3:115.3mg, HBO2:89.9mg,
源泉温度が高すぎる場合、必要最小限の量で加水することあり

那須シャトルバス「キュービー号」で「那須わくわく広場」バス停下車、徒歩15分
栃木県那須郡那須町大字高久乙3370-3047  地図
0287-74-3526
ホームページ

※2016年11月にリニューアルオープンしました。詳しくは公式サイトでご確認ください。当記事はリニューアル前の様子を取り上げています。
10:00~21:00 水曜定休
800円(17:00以降は500円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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那須温泉 那須町営那須いこいの家

2015年11月17日 | 栃木県
 
那須湯本の温泉街から御用邸の方へ上がってゆくと、その途中に那須高原ビジターセンターがありますが、この敷地内を突っ切った奥に佇む町営の宿泊施設「いこいの家」では日帰り温泉入浴を受け付けているので、どんなお湯に入れるのか興味津々で訪ねてみることにしました。いかにも公営の保養施設らしい地味な外観なのですが…


 
玄関を入った先のロビーは大変明るく広々していて、立派な応接セットや石庭のような飾りも据え付けられており、公営とは思えないラグジュアリ感があり、良い意味で驚きました。その一方、受付で入浴をお願いしますと、職員の方はとても丁寧に対応してくださるのですが、料金の支払い時に所定の台帳へ氏名と住所の記入を求められました。館内の雰囲気は立派ですが、こうした手続きが必要な点は公営施設らしいところです。町民と町外で料金が異なるため、那須町としては統計を取っておきたいのかな。
ロビーの奥にあるお座敷を横目に廊下を進んで浴室へ。


 
脱衣室はごく普通の造りですが、清掃がよく行き届いており、気持ち良く使えました。洗面台は2台あり、ドライヤーも備え付けられています。また棚の下には施錠できるロッカーも用意されていました。


 
出入口のドアには「この温泉は御用邸と同じ源泉から直接引いているかけ流しのお風呂です」という菊の御紋の威光を笠に着たような表現のほか、「黒くなっているのは温泉の成分のためです」と後述する浴槽内の黒い筋に関して説明が記されていました。威光云々は私の勝手な言いがかりですが(笑)、湯本の温泉街から近い場所にありながら、湯本とは全く異なる場所からお湯を引かれているという点は、湯めぐりをする私のような人間にとってはとっても重要です。また湯使いに関する表示では、完全掛け流しであることが明示されていました。


 
浴室のドアを開けた瞬間、石膏系の香ばしい香りが鼻孔をくすぐってきました。那須湯本の酸性硫黄泉とは異なるお湯であることは明白です。お風呂は男女別の内湯のみで露天風呂は無く、室内は総タイル張りで無機質な感は否めませんが、大きな窓からたっぷり採光されており、換気も良好で湯気篭りも少なく、床には伊豆青石(もしくはそれと同系統の緑色凝灰岩)が敷かれていて、快適な入浴環境が生み出されています。ただせっかく大きな窓が採用されていながら、その外には竹垣を模した化成品のエクステリアが立ちはだかっており、残念ながら自然の景色を眺めることはできません。
洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでおり、いずれのシャワーもホースが同じ巻き方できれいにセッティングされていました。私が訪問したのは清掃直後のタイミングだったのでしょうね。


 
浴槽は一辺だけ斜めになっている台形状のもので、キャパ的には5~6人、最大幅で2.5m×3mほどです。縁には石材が用いられ、槽内はタイル張りなのですが、丸い湯口の直下から斜めの縁に沿って、底面にライン状の黒ずみがこびりついていました。出入口ドアの貼り紙で説明されていた「黒くなっているのは温泉の成分のためです」とはこのことを指しているのでしょう。


 
丸い湯口にクローズアップしてみましょう。熱めのお湯をチョロチョロと滴り落としている平たい口の周りには、白色やクリーム色のトゲトゲした析出が付着していますね。おそらく硫酸塩や石灰華の類なのでしょう。その湯口から真下の底面へ黒い筋が下りて、あたかもタコやイカが黒い墨を吐き出しているかのように、お湯がオーバーフローする窓側に向かって、縁に沿って伸びていました。


 
丸い湯口のほか、浴槽のステップ付近にも大きめの水栓が一つ取り付けられており、入室時には止栓されていたのですが、コックを開けてみると50℃以上の熱いお湯がドバドバ吐出されました。湯船の湯加減を上げたければ、この水栓からお湯を足せばよいのでしょうね。丸い湯口やこの水栓から浴槽へ注がれたお湯は、窓下に設けられた溝へ溢れ出ており、槽内に吸引や供給のための穴は見当たらなかったので、館内表示の通り完全掛け流しなのかと思われます。

湯船のお湯は無色透明で湯の花などは全く見られず、綺麗に澄んでいました。上述しましたように室内には石膏の存在を思わせる香ばしい匂いが漂っているほか、芒硝っぽい匂いもふんわり嗅ぎとれ、口に含むと弱い石膏味とほのかな芒硝味が確認でき、喉の奥などの粘膜には苦みや渋みが少々残りました(正苦味泉っぽい感じ)。また湯中ではキシキシ引っかかる感覚とサラスベの滑らか感が混在していましたが、どちらかといえばキシキシ浴感の方が勝っていたように感じられました。

さて、このお風呂でマニア的に戸惑うのは、脱衣室に2種類の温泉分析書が掲示されていること。ひとつは源泉名「那須温泉(旭温泉・地蔵の湯・桜の湯混合泉)」で、もうひとつは「大丸源泉 山楽No.1~15混合泉」と記されています。いずれも硫酸塩泉型の単純泉なのですが、前者は湧出温度が低く、湧出量も少ないため、両者を適宜ブレンドさせて使っているものと思われます。でも、どんな塩梅でミックスさせているかに関する説明は見当たらないため、詳しいことはわかりません。後者の「大丸源泉 山楽No.1~15混合泉」は那須温泉開発によって新那須温泉エリアの各旅館に引かれている源泉であり(「旅館山楽」や「自在荘」などで入浴できます)、その名の通り奥那須の大丸温泉から引湯されているものです。この「いこいの家」のすぐ傍には白河貯湯槽がありますから、その貯湯槽から分湯されていることは容易に想像がつきます。
一方、前者の桜の湯・地蔵の湯はどうやら御用邸の敷地に源泉が存在しているらしく、実際に御用邸内のお風呂へ引湯されているんだそうですが、大丸源泉とは異なり、新那須温泉エリアには供給されていないようです(たぶん)。出入口ドアの貼り紙に書かれていた「御用邸と同じ源泉から直接引いている…」という文言は、この桜の湯および地蔵の湯のことを指しているものと思われます。ちなみに桜の湯源泉といえば「大丸温泉旅館」でも同名の源泉(硫酸塩泉型の単純泉)が使用されていますから、けだし同じ源泉を指しているのかもしれませんが、「大丸温泉旅館」の桜の湯源泉は湧出量が毎分100Lをはるかに超えており、かつ70℃以上の高温ですから、「いこいの家」の分析書に記された38.0℃や毎分15.8Lという数字をどう解釈するべきか、頭の悪い私にはそのあたりの謎がよくわかりません。もうひとつの旭温泉とは、過去に存在した温泉旅館の源泉であり、現在このお湯を引いている施設は殆どないようです。いずれも湧出量が少なく湧出温度も低いのですが、これらのやんごとなきお湯に入れるのは、この「いこいの家」のお風呂だけ。公営の施設ながら、温泉マニア的には貴重な存在なのでした。

完全掛け流しのお湯は鮮度感が良好で、とりわけ那須湯本の酸性硫黄泉に入り続けた私の体には、非常に優しく感じられました。湯船はちょうど良い湯加減に調整されており、湯上り後は嫌味な火照りは無く、程よい温浴効果が持続しました。品の良いあっさり感と硫酸塩泉らしいシットリ&パワフル感を兼ね備えた良泉でした。


那須温泉(旭温泉・地蔵の湯・桜の湯混合泉)
単純温泉 38.0℃ pH7.1 15.8L/min(自然湧出) 溶存物質0.678g/kg 成分総計0.687g/kg
Na+:43.6mg(27.86mval%), Ca++:56.9mg(41.73mval%), Mg++:16.2mg(19.62mval%),
Cl-:2.7mg, SO4--:261.6mg(82.90mval%), HCO3-:63.6mg(15.86mval%),
H2SiO3:200.1mg,
(平成17年11月10日)

大丸源泉 山楽No.1~15混合泉
単純温泉 68.0℃ pH6.4 溶存物質0.873g/kg 成分総計1.006g/kg
Na+:62.3mg, Ca++:63.5mg, Mg++:22.3mg, Mn+:1.0mg, Fe++:4.3mg,
Cl-:6.3mg, HS-:0.1mg, SO4--:279.7mg, HCO3-:169.7mg,
H2SiO3:234.2mg, CO2:132.1mg, H2S:0.4mg,
(平成8年10月7日)

那須湯本バスターミナルから徒歩10分強。あるいは那須町民バスの湯本線(1日3本)で終点「いこいの家」下車すぐ
栃木県那須郡那須町大字湯本207-2  地図
0287-76-2342

日帰り入浴10:00~16:00
700円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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那須湯本温泉 はなやホテル 小鹿の湯

2015年11月15日 | 栃木県
 
共同浴場「鹿の湯」を頂点にして湯川沿いに川下へ伸びて分布する那須湯本温泉街の旅館の中でも、比較的下の方にあるバス通り沿いの「はなやホテル」には、離れの浴場棟「小鹿の湯」があり、日帰り入浴を積極的に受け入れていますので、どんなお風呂なのか体感すべく、「民宿南月」で一晩を過ごした翌朝に利用させていただきました。


 
客室を擁する本棟より低い位置に離れの湯小屋「小鹿の湯」が隣接しており、両棟に挟まれている階段を下ったところにある、浴場専用のプレハブ小屋の受付で料金を支払います。湯小屋は「鹿の湯」のイメージをインスパイアしたようなシックな総木造ですが、外側にはモルタルが塗られており、まるで漆喰を塗っているかのような風合いを醸し出していました。入口は男女別に分かれており、入口の手前に有料のロッカーが設置されています。



ちなみに上画像は宿泊棟入口(浴場側の通用口)。上述のように日帰り入浴は、専用の窓口で受付を行いますので、宿泊棟へ立ち入ることはありません。


 
また、裏手にまわれば、貸切露天風呂もあるのですが、外来者が使えるかどうかは不明(当然、宿泊者は利用できるかと思いますが…)。


 
杉材仕上げの脱衣室は照度を抑えており、程良いぬくもりと落ち着いた大人の雰囲気がバランス良く、行き届いた清掃のおかげもあって、居心地良好です。男湯の場合は右側に棚が並び、奥に洗面台とトイレが設けられています。室内にはこの「小鹿の湯」の建築工程を記録した写真が展示されているのですが、これを見ますと、客の立場だとなかなか意識しにくい箇所まで、微に入り細を穿つ心配りで、丁寧に築き上げられていったことがわかります。「なんとなく居心地が良いな」と感じる空間って、このようにオーナーや施工者の細かな配慮や工夫、そして努力の積み重ねによって実現されているんですね。


 
旅館に付帯するお風呂だけあり、内湯はとっても綺麗です。脱衣室は杉材でしたが、この浴室は松材が用いられており、総木造ならではのぬくもりと落ち着きを兼ね備えた温泉風情たっぷりのお風呂です。高い天井は片傾斜になっており、一番高い部分が湯気抜きになっています。床にも全て松材が用いられており、羽目板をスノコ状に並べて排水性を高めているのですが、酸性のお湯による腐食を防ぐためか、金属の釘は用いられておらず、すべて竹釘で打ち付けられていました。
洗い場にはシャワー付きのカランが4基並んでおり、一つ一つの間隔が広く確保されているため、隣同士で干渉するようなことはありません。

浴槽は大小に2分割されており、こちらも総木造です。小さな方は4~5人サイズでかなり熱く、大きな方は6~7人サイズで一般客向けの42~3℃。大小の両浴槽にまたがる形で湯口の木箱が置かれており、そこから双方へお湯を注ぐ那須湯本の伝統スタイルを踏襲しているのですが、他の浴場のように木の栓を湯口に差し込んで湯量を調整するような方法は採用せず、木箱から樋へ吐出される段階で既に湯量が調整されていました。いずれの浴槽でも私が入るとザバーッと勢いよくお湯が溢れ、その音を耳にしながら湯浴みすると豪快な気分に浸れました。


 

内湯のみの「鹿の湯」に対して、この「小鹿の湯」には露天風呂が設けられています。とはいえ四方を高い塀で囲まれているため景色を楽しむことはできず、それどころか塀の向こう側はバス通りであるため、通りを行き交う車の音が頻りに聞こえてきますが、内湯と同様にスノコ敷きであり、落ち着いた色調で統一され、ベンチも用意されているので、露天風呂として湯浴みを楽しむのはもちろん、内湯で火照った体をクールダウンさせる空間としても役に立ちます。なおこの露天ゾーンには打たせ湯も設けられているのですが、私の訪問時は使用が停止されていました。


 
露天の浴槽も総木造で、2人サイズの小ぢんまりとしたもの。黄色く染まった木の枡から短い樋を通じてお湯が注がれており、私の訪問時にはちょっと熱めの43~4℃でしたが、むしろこのくらいの熱さの方が外気の冷たさに対抗するにはちょうど良いかも。小さな浴槽に対してしっかりとした量が投入されており、私が湯船に入ると、まるで洪水が発生したかのように、勢いよく豪快に溢れ出てゆきました。

こちらに引かれているお湯は、温泉街の他旅館と同じく、鹿の湯と行人の湯の混合泉であり、明礬系の硫黄臭やフルーティ感を伴う収斂酸味、そして綺麗な白濁など、お湯のフィーリングは他のお宿のお湯とほぼ同様なのですが、源泉から離れている上、温泉街の中央にある分湯場から更に下流に位置しているためか、ここまで流下してくる間に角が取れてこなれており、酸味や苦みなど諸々の知覚的特徴、そして湯中における体への当たりが若干マイルドになっているような感を受けました。
内湯・露天ともに湯中では微細な白い湯の花が無数に浮遊して強い白濁を生み出しており、透明度は15cm程度で、光の入り方によって青白かったり灰白色になったりと、いろんな表情を見せてくれました。もちろん湯使いは完全かけながしです。

名湯「鹿の湯」はいつも混雑していますが、この「小鹿の湯」は比較的ゆとりがあり、湯屋としての雰囲気もよく、しかもお湯は本物ですから、混雑を避けたい場合はこちらを訪れてみるのも良いかもしれません。私は朝9:30頃に訪問したのですが、既に先客が2人いらっしゃり、後から更に2人入ってきて、朝から結構な賑わいを見せていました。おしゃべりの訛りから推測するに、みなさん地元の方のようでしたから、地元の方は混雑する「鹿の湯」を敬遠してこちらを利用するのかもしれません。


 
受付小屋では湯の花やミネラルウォーターなどとともに、その場で食べられる温泉卵が売られていました。私がお風呂から上がると、ちょうど受付のおばちゃんができたての卵を保温用の発泡スチロールの箱に入れていたところでしたので、その中のひとつを購入していただいてみることに。半熟なので、受付でもらう小さな紙コップに入れてから、お塩を振りかけていただきました。できたての温泉卵はとっても美味しかったですよ。


鹿の湯・行人の湯混合泉
単純酸性硫黄温泉(硫化水素型) 57.2℃ pH2.6 溶存物質0.843g/kg 成分総計0.899g/kg 
H+:2.5mg, Na+:28.5mg, Mg++:22.1mg, Al+++:7.6mg, Fe++:0.7mg,
Cl-:76.0mg, HSO4-31.3mg, SO4--:370.1mg,
H2SO4:0.2mg, H2SiO3:225.5mg, H2S:56.3mg,

那須塩原駅もしくは黒磯駅より東野交通の那須湯本方面行バスで「湯本一丁目」下車
栃木県那須郡那須町湯本77  地図
0287-76-2333

日帰り入浴9:00~21:00
400円
有料ロッカー(通常サイズは100円・大きなロッカーは200円)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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