温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

七福温泉 宇戸の庄

2017年02月17日 | 大分県
 
天下に名高い大分県の耶馬渓は、切り立った断崖や不思議な形の奇岩などが織りなす景観が、いにしえから多くの人々を感嘆させてきたわけですが、その周辺にも奇岩地帯が広がっており、県道602号線に沿って刻まれている岳切渓谷や宇戸谷もそのひとつです。上の画像ではわかりにくいのですが、アメリカのブライスキャニオンをミニチュア化したような奇岩が、山の緑の中から天に向かってグンと聳え立っており、その一つ一つを眺めていると、まるで彫刻の立像のように実に個性的でユニークです。


 
そんな風光明媚な宇戸谷にある温泉「七福温泉 宇戸の庄」で立ち寄り入浴してまいりました。奇岩に囲まれた広い敷地内にはいくつかの建物が点在しているのですが、まずは母屋へ行き、帳場で入浴料金を支払います。


 
駐車場の片隅に立つ小さな小屋から、聴き覚えのある甲高い鳴き声が聞こえてきたので、その小屋へ近づいてみると、中でクジャクが羽根を広げてけたたましく啼いていたのでした。まさか100%オッサンな私のことをメスのクジャクと錯覚した訳ではないでしょうから、禽舎の中にはメスが居たのでしょうね。


 
奇岩を見上げながら浴場棟へ移動します。途中には、内湯付きの離れ(宿泊棟)や大きな貸切風呂などへ向かう階段が伸びていましたが、いずれも今回は利用していません。なお宿泊すれば貸切風呂に無料で入れるんだそうです。


 
小さな谷間の上へ伸びる坂の小径に沿って建つ、長屋のような総木造の建物が浴場棟。
脱衣室はとても綺麗で気持ち良く使うことができました。



浴室はシンプルでこぢんまりしていますが、材木と石材を使い分けることにより温泉風情を醸し出していました。男湯の場合は左手に浴槽が据えられ、右側に洗い場が配置されていました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが2基並んでおり、カランから出てくるお湯は源泉です。貯湯槽から配管を直接繋げているのか、コックを開けてもすぐにはお湯が出てこないのですが、しばらく出しっ放しにしておけば、後述する芳香を漂わせながら源泉100%のなめらかなお湯が吐出されました。


 
石板貼りの四角い浴槽は3人サイズ。木樋から飴色の温泉が注がれており、湯口における吐出温度は39.6℃で、湯船では38.0℃という長湯仕様になっていました。湯使いは完全放流式です。


 
内湯はあくまでシャワーを浴びたり、あるいはしっかり温まるための実用的な設備であり、このお風呂のメインはどちらかと言えば露天風呂と言えるでしょう。奇岩の真下に据えられた露天は広々しており、大人数で入っても思いっきり足を伸ばせます。また内湯側には庇が掛かっているので、多少の雨露なら凌ぐことができそうです。この露天ゾーンにはポリバスの水風呂も設置されており、キリッと冷たい清冽な地下水が張られていました。真夏に入ったら最高に気持ち良いでしょうね。


 
内湯と同じような形状の木樋から注がれるお湯の温度は、ちょっとぬるめの37.8℃。露天風呂は外気の影響を受けやすいはずですが、内湯より投入量が多いためか、露天の湯船は36.7℃と温度低下は1℃程度に抑えられていました。こちらも言わずもがな完全放流式です。なお私が訪れた初夏は非加温でしたが、冬季でこの湯温ですとさすがにぬるすぎちゃうので、入浴に適した温度まで加温されるそうです。


 
淡い飴色(琥珀色)の湯面には夥しい気泡が浮かんでおり、湯船に浸かると、忽ち全身が気泡に覆われました。そして湯面からは、木材を燻したような芳醇なモール泉の香りが薫ってきました。お湯を口に含むと清涼感を伴うほろ苦みが得られます。夥しい泡つきもひと役買っているのか、湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感が大変強く、あまりにツルツルするので、思わず湯中で何度も自分の腕をさすって、その滑らかなフィーリングを楽しんでしまいました。



訪問した日は大変麗らかな陽気。静かで清らかな空気に包まれ、オーバーハングしている岩の下で奇岩を眺めながら過ごす湯浴みは、忘れがたい素晴らしいひと時でした。露天は体温とほぼ同じくらいのお湯ですので、長湯をしても体への負担が軽く、それゆえ時間を忘れていつまでも湯浴みしていられます。お湯の投入量も多く、ふんだんにかけ流されているので温泉は大変フレッシュ。幸いにしてこの時は私以外に誰もおらず独占状態でしたので、いつも以上に長湯をたのしませていただきました。


 
母屋の前には大きな水車が回っており、その前には湧き水の水汲み場が設けられていました。ここで水を汲むができますし、もちろんその場で喉を潤すことも可能。風呂上がりに飲んだこの清冽な水はとっても旨かったですよ。
今回は立ち寄り入浴のみの利用でしたが、食事や宿泊、釣り堀、バーベキューなど、豊かな自然を活かした色々な楽しみ方ができるようですので、次回訪問する機会があれば、ゆっくり泊まって温泉以外の楽しみを味わってみたいものです。


単純温泉 39.5℃ pH8.0 198L/min(自噴・掘削723m) 溶存物質0.670g/kg 成分総計0.681g/kg
Na+:135.0mg(85.37mval%),
Cl-:40.5mg(17.68mval%), HCO3-:317.0mg(80.39mval%),
H2SiO3:147.0mg, CO2:11.0mg,
(平成15年7月7日)
加水循環消毒なし
状況により加温あり(気温が低い場合は、源泉と加温した源泉で温度調整)

大分県玖珠郡玖珠町大字森字谷の河内4398-2  地図
0973-72-0429
ホームページ

立ち寄り入浴10:00~19:00(18:00受付終了) 水曜定休(別の曜日に休むこともあり。訪問前に要確認)
400円
ロッカー(100円有料)・シャンプー類あり、ドライヤー見当たらず

私の好み:★★★
コメント (2)
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別府温泉 末広温泉

2017年02月16日 | 大分県
 
前回記事に引き続き別府駅周辺の共同浴場をめぐります。今回訪問するのは、駅から南へ真っ直ぐ歩いたところにある「末広温泉」です。こちらの浴場は玄関が常時施錠されており、かつては斜前にある角のタバコ屋で湯銭を支払って鍵を開けてもらっていました。この珍しいシステムゆえ、温泉ファンの間では有名な存在でしたが、現在(2016年時点)はわざわざタバコ屋へ赴く必要はなく、男女別の入口に挟まれた無人の番台に湯銭を納めたのち、ドアの脇にぶら下がっている鍵で自分で開錠する方法に変更されています。わざわざタバコ屋さんから出向いて鍵を開ける手間が面倒になったのでしょうか、あるいはタバコ屋さんのシャッターが閉まっていたので、開錠の担い手がいなくなってしまったのでしょうか。



これがその鍵です。入室したらドアの中から内鍵を掛けておきます。表に鍵をぶら下げておくだなんて無用心ではないかと心配になりますが、こうした手間を噛ませることによって、不審な輩によるスリ等の悪事を防いでいるのかもしれませんね。防犯の専門家曰く、些細な工夫であっても、防犯には大いに役立つんだそうですよ。



脱浴一体型が一般的な別府の共同浴場にしては珍しく、脱衣室と浴室の間がサッシで仕切られて別空間になっています。また共同浴場には珍しくドライヤー(有料)も備え付けられていました。しかも小さな台の上には、入浴道具の無人販売も行われており、タオルや石鹸類などがカゴの中に陳列されていました。旅の途中に手ぶらで立ち寄っても気軽に入浴できるんですね。これはありがたい!



脱衣室の引戸を開け、ステップを数段下って浴室へ。モルタル塗りの浴室の下半分(湯水がかかりやすいところ)はタイル張り。室内の中央には四角い浴槽が堂々と据えられています。お風呂のレイアウトは共同浴場としてごく普通ですが、壁上半分のモルタル部分にこの浴場のアピールポイントがあるんですね。


 
壁には幻想的な色彩で描かれた山の景色が描かれているのです。脱衣室に張り出されているチラシによれば、美しさと優しさと勇壮感を併せ持ったこの絵画は、新進気鋭の若手日本画家で別府市内にお住まいの大平由香理さんの作品。この男湯に描かれている山は別府のシンボルである鶴見岳で、女湯には由布岳が描かれているんだそうです。銭湯の壁絵といえば雪冠の富士と白砂青松という構図がお決まりであり、たしかにそうした伝統的な定石通りの意匠も結構なのですが、昔から庶民の生活とともに歩んできた共同浴場が、こうした現代的なアートで彩られると、温泉地としての伝統に加えて、新たな生命の息吹がもたらされ、ポジティヴで明るく活き活きとした存在感を放っているように、私の目には映りました。昭和の公共施設はどこも斜陽の一途をたどっていますが、このような試みによって、単に施設としての若返りを図るだけでなく、温泉浴場としての新たな方向性や在り方を示すことは、大変意義深く素晴らしいことだと思います。


 
御影石で縁取られた浴槽は2m四方の四角形で、縁の角のRが見た目に柔らかい印象を与えています。浴室の隅っこに設置された湯壷から、床下の配管を流れて浴槽に温泉が供給される仕組みは、別府温泉共同浴場の標準的なスタイル。使用源泉は別府市有雲泉寺泉源をメインとした混合泉。無色透明でほぼ無味無臭、弱ツルスベという、癖のないアッサリとしたタイプのお湯であり、一浴するだけですと面白みに欠けるかもしれませんが、日々の入浴にはむしろ使い勝手が良いお湯と言えましょう。浴槽内には水色のタイルが貼られており、お湯の清らかさを一層際立たせていました。なお湯使いは放流式です。


 
上述の大平さんのようなアート関係の皆さんのほか、温泉界の大巨匠である郡司さんをはじめとした温泉ファンのみなさんもこちらに集っており、とにかく多くの方を集めて浴場を積極的に盛り上げていこうとしていることが伝わってきます。それだけ末広温泉に携わっている方はいろんな方に対してオープンでウェルカムなんですね、かく言う私も、管理なさっているおじさんから、トラベル用のシャンプーとコンディショナーセットをいただいちゃいました。ありがとうございました。お湯も心も温まる、素晴らしいお風呂でした。


別府市有雲泉寺泉源 外
単純温泉 64.1℃ pH7.4 湧出量測定せず(掘削動力揚湯) 溶存物質0.764g/kg 成分総計0.765g/kg
Na+:173.0mg(80.45mval%), Ca++:16.2mg,
Cl-:168.0mg(55.05mval%), Br-:0.5mg, SO4--:71.2mg(17.19mval%), HCO3-:142.0mg(27.06mval%),
H2SiO3:159.0mg,
(平成28年3月17日)

JR日豊本線・別府駅より徒歩10分(約800m)
大分県別府市末広町4-20  地図

7:00〜22:00
200円
ドライヤー(100円有料)あり、入浴道具販売あり

私の好み:★★★
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別府温泉 大和温泉

2017年02月15日 | 大分県
 
引き続き別府温泉の共同浴場を巡ります。前々回で取り上げた「第一富士見温泉」がある野口元町に戻り、線路から北西へ斜めに伸びる一方通行の道を歩いていると、「野口元町二区公民館」の白い看板を発見。そこから細い路地を入ってしばらく進むと、目的地である「大和温泉」の木造浴舎にたどり着きました。


 
湯屋の向かいに建つ集会所に番台の窓口があるので、小窓の内側に置かれている料金箱に湯銭を納めてから、湯屋に入館しました。湯屋玄関の右手には円筒形の貯湯タンクが立っていました。


 
若葉を思わせる浅緑に塗られた菱格子の玄関には、浴場名が書かれた扁額がかけられており、歴史ある温泉の街らしい威厳と風格が伝わってきます。玄関左下に掲示されている「ほしかった とめるゆうきと やさしい手」という標語は、私の無謀な湯巡りを諌めるための言葉なのかな(なんてね)。引き戸を開けた先には弘法様の石仏が祀られていたので、手を合わせてからお風呂へお邪魔させていただきました。弘法様の左側が女湯で、右側が男湯です。


 
館内は、別府の共同浴場では標準的なレイアウトである脱浴一体型。外観のみならず内装もホワイトと淡いグリーンの塗装で統一しているところに、携わっている方々のセンスと矜持が感じられます。そして浴室の中央に据えられた円形の浴槽は水色のタイル張り。淡いグリーン、ホワイト、そしてアクアブルーのトリコロールが実に美しく、浴室に足を踏み入れてこの光景を目にした瞬間、思わず息を呑んでしまいました。


 
浴室の壁にはグリーンに塗られた棚がズラリと並び、その右手には下足箱が設置されているのですが、下足箱の斜め上を見ますと、壁に小さな棒が数本取り付けられていることに気づきました。これはおそらく帽子掛けなのでしょう。かつて帽子は紳士の嗜みであった時代がありましたから、その当時の名残なのでしょうね。この浴場がいかに長い歴史を有しているか、こうした細部を見ることでもよくわかります。


 
浴室の隅に湯壷がある点も、別府の共同浴場によく見られる標準的な特徴。でもここの湯壷で特徴的なのは、内部の壁に「止」「出」と手書きされており、その下に金属の棒が取り付けられていることです。一目瞭然ですが、金属の棒はバルブを操作するハンドルであり、これを「止」や「出」など各位置に合わせることによって、浴槽へ注ぐお湯の量をコントロールするわけですね。



水色のタイルが貼られた浴槽はワインレッドのタイルで縁取られており、この2色のコントラストも鮮やかです。浴槽は3〜4人サイズで、湯船のお湯は縁の切り欠けより浴槽外側の溝へ溢水しています。言わずもがな完全放流式の湯使いです。このお風呂の引かれているお湯は、前回記事で取り上げた「富士見第二温泉」と同じ「別府市温泉供給事業富士見線」という混合泉。無色透明でほぼ無味無臭、クセが無くアッサリとしているので、日々の入浴に使いやすいタイプのお湯と言えるでしょう。私が訪れた夜10時半は既に多くのお客さんが浸かった後なので、お湯はちょっと鈍り気味でしたが、湯加減はちょうど良く、深い時間でもう誰も来る気配がなかったので、一人で湯船に入ってゆっくり寛がせていただきました。湯船に入りながら室内を見回すと、塗装から浴槽まであらゆる箇所から、長年にわたって地元の方が注ぎ続けてきた愛情が伝わってくるような気がします。
なお、番台に掲示されていた分析書は平成21年分析のものでしたが、「富士見第二温泉」で同源泉の平成28年分析データが掲示されていましたので、当記事では平成28年の数値を掲載させていただきます。


別府市温泉供給事業富士見線
単純温泉 58.5℃ pH6.9 溶存物質0.723g/kg 成分総計0.727g/kg
Na+:157.0mg(78.87mval%), Ca++:15.4mg(8.89mval%),
Cl-:154.0mg(52.86mval%), SO4--:74.4mg(18.88mval%), HCO3-:138.0mg(27.53mval%),
H2SiO3:151.0mg,
(平成28年3月17日)

JR日豊本線・別府駅より徒歩6分(約500m)
大分県別府市野口元町9-15  地図

6:00~12:00(11月〜3月は6:30〜12:00)、14:00~23:00 無休
100円
備品類なし

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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別府温泉 富士見第二温泉

2017年02月13日 | 大分県
※富士見第一温泉の閉鎖に伴い、現在この施設は「富士見温泉」へ名称変更しています。


前回記事では「第一富士見温泉」を取り上げましたが、第一があれば第二もある。ということで、続いては第二へ向かうことにしました。場所は富士見通りを挟んだ向かい側(北側)の路地をちょっと入ったところ。第一は富士見を名乗っていながら野口元町に位置していますが、第二は名前の通り富士見町にあり、富士見町公民館の1階が浴場になっているんですね。


 
出入口の上に掲げられた浴場名の扁額には、第一や第二といった序数が記されていません。そもそも、第一は「第一富士見温泉」というように序数が頭に付いていますが、第二では「富士見第二温泉」というように地名の後ろに付いており、両者のネーミングには若干の差異が見られるのです。些細なことですが、どうして序数の付け方が異なるのでしょうか?
こちらの浴場も基本的には管理人さんが常駐しているのですが、番台が開く時間は平日日中の9:00~15:00であり、それ以外の時間と土日祝は不在であるため、私が訪れた夜10時前には番台のカーテンが閉められていました。とはいえ、入浴に何らの支障はなく、カウンターの上に置かれた料金箱の上に100円玉を納めるだけでOK。


 
浴場内は脱浴一体型(※)という別府の共同浴場としては標準的な構造です。左or上画像は脱衣室から浴室を、右or下画像は逆に浴室から脱衣室を捉えた様子です。脱衣室と浴室との間には結構な段差があるんですね。別府をご存知の方なら言わずもがなですが、別府の街は鶴見岳から海へ向かって下り勾配の山裾に市街地が広がっており、この建物もそんな勾配の途中に建てられているため、海側に設けられた浴場は山側の脱衣室より低くなっているのでしょう。
(※)脱衣室と浴室の間に仕切りがなく一つの空間にまとめられている造りを表現した私の造語です。


 
浴室の片隅、女湯との仕切り塀の下に、別府の共同浴場ではおなじみの湯壷が設けられていました。湯壷から熱いお湯を汲むための柄杓もしっかり備え付けられています。配湯元から引いてきた温泉は、一旦この湯壷に溜められた後、床下の配管を通って、男女両浴槽へと注がれてゆくわけです。


 
長年にわたって使い込まれた浴室は全体的に渋く古びた色合いですが、浴場部分が低くなっているため天井が高く、また2方向がガラス窓となっており、実際の床面積以上に広くて開放的です。建物の構造は総木造かALC造かはっきり記憶していないのですが、少なくとも内装は古い木造であり、いい感じにペンキが色褪せているため、その広い空間からは、伝統ある武道場のような趣きすら感じられます。
浴場内のウェットゾーンはタイル張りとなっており、補修が繰り返されているため、所々で異なった色のタイルが用いられています。古い武道場のような佇まいのお風呂のど真ん中には、5人サイズの小判形浴槽が威風堂々たる構えで据えられており、綺麗に澄んだお湯を湛えていました。使用源泉は「別府市温泉供給事業富士見線」というもので、鶴見園第一泉源(湧出地:市内大字南立石字中津留道北2141-8)など複数源泉をブレンドした上で各施設へ配湯されており、この浴場のみならず、どうやら前回記事の「第一富士見温泉」も同じお湯の供給を受けているようです。無色透明でほぼ無味無臭ながら、わずかにビターで土気を有しているように感じられます。湯中では弱いスルスベ浴感があるものの、総じてクセや個性が少ない、マイルドで優しく普段使いに向いているお湯と言えましょう。第一と第二という序数は、おそらく開業した年の順に従っているのでしょうけど、建物自体も脱衣室も浴室も浴槽も、全てにおいて「第一」よりもひと回り大きいので、その規模から言えばこちらの方が上位序列を名乗るに相応しいかもしれません。「別府八湯温泉道」の対象外なので、温泉ファンから注目されにくい共同浴場ですが、なかなかどうして、別府温泉共同浴場の王道を行く立派で趣きたっぷりなお風呂でした。


別府市温泉供給事業富士見線
単純温泉 58.5℃ pH6.9 溶存物質0.723g/kg 成分総計0.727g/kg
Na+:157.0mg(78.87mval%), Ca++:15.4mg(8.89mval%),
Cl-:154.0mg(52.86mval%), SO4--:74.4mg(18.88mval%), HCO3-:138.0mg(27.53mval%),
H2SiO3:151.0mg,
(平成28年3月17日)

JR日豊本線・別府駅から徒歩9分(約700m)
大分県別府市富士見町1-16  地図

6:00~11:00、14:00~23:00
100円
備品類なし

私の好み:★★+0.5
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別府温泉 第一富士見温泉

2017年02月11日 | 大分県
※残念ながら2018年4月に閉館しました。

前回記事のインドネシアから日本に戻り、敢えて温泉ファンにとってはベタな別府の温泉を取り上げてまいります。でもあまりにベタすぎてもつまらないので、生まれつき天邪鬼な私は、マニア御用達の「別府八湯温泉道」の対象から外れている共同浴場を訪れることにしました(2016年5月訪問)。



まずは別府駅から徒歩圏内の富士見通り沿いにある「第一富士見温泉」から。訪問したのは夜9時頃だったため、全体的に暗い画像ばかりで申し訳ございません。共同浴場はえてしてわかりにくい奥まった場所に位置していることがありますが、こちらは大通りに面しているため、夜遅い真っ暗な時間帯でもすぐに見つけることができました。


 
管理人さん常駐の施設ですので(日曜は不在)、出入口手前にある番台でおじさんに挨拶してから、料金箱に湯銭の100円を納めました。番台の右手には神棚が祀られ、その下には源泉からお湯を汲み上げるポンプが設置されています。男湯の暖簾の上に掲げられた大きな時計は、この浴場が地域住民の生活と密接に結びついていることを表しているようです。


 
古い木造の湯屋は、別府の共同浴場の典型的な造り、すなわち脱衣室と浴室の間に仕切りがない脱浴一体型です。暖簾をくぐった先にある引き戸を開けると、脱衣室の棚と一緒に、浴室の中央に据えられた円形の浴槽も視界に入ってきました。浴室は3方向がガラス張りで、右側の曇りガラスは女湯との仕切りですが、このガラス窓を多用した造りのおかげで、実際の床面積以上の広さを感じることができました。


 
こちらは浴室から脱衣室を見たところ。真四角に区切られた棚が壁一面を覆っていますね。備え付けの風呂桶は、洗い場ではなくこの棚の右下にまとめて収められていました。通り側の壁側に置かれているベンチは、国鉄時代末期の駅のホームに設置されていたFRP製のそれみたい。


 
浴室の隅っこに湯壷があって、そこに注がれた熱々のお湯は床下を通って浴槽へと流れています。この構造も別府の共同浴場ではよく見られるご当地の標準的なものですね。湯壷の側面にはバルブがあったので、これで投入量を調整するのでしょう。なおこの浴室内にカランらしきものは見当たらないのですが、その代わり湯壷のそばに洗面台が一台取り付けられていました。掛け湯などのお湯は湯船から桶で直接汲み、水道を使いたい場合は洗面台で蛇口を捻ることになるわけです。


 
小判型の浴槽は3人サイズ。縁や側面はタイル張りですが、底面には茶色い石材が敷かれており、お湯を通して映る石材のマーブル模様が、温泉風情をそこはかとなく醸し出していました。湯壷から床下を通って底面から供給されるお湯は、縁の外側に沿って刻まれている溝へ溢れて排水されており、(加水の有無はわかりませんが)完全放流式の湯使いだと思われます。お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、わずかに土気があり、ほんのりビターテイストも感じられました。湯中では弱いスルスベ浴感が得られましたが、総じてマイルドであり、しいて言うなら掴み所に困るお湯と表現してよいかもしれません。でも癖があったり個性が強かったりすると、日常の湯浴みには却って使いにくいので、こうした無色透明無味無臭の没個性なお湯の方が、地元の方々にとっては都合が良いでしょう。なお室内掲示の古い案内によれば、泉質は重曹泉とのことですが、私の実感から推測しますと、重曹泉型の単純泉ではないかと思われます。
昔ながらの生活感と掛け流しの温泉を一緒に味わえる、趣きたっぷりの共同浴場でした。


重曹泉 48.5℃ それ以外のデータ不明
(昭和39年11月9日)

JR日豊本線・別府駅より徒歩8分(約700m)
大分県別府市野口元町11-22  地図

※残念ながら2018年4月に閉館しました。
6:00~11:00、14:00~23:00
100円
備品類なし

私の好み:★★
コメント (6)
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