太郎が言うには、章子ママはマスターのことが好きなんじゃないかな。
思わず「えーーーっ!」と叫ぶオレ。
章子ママってのは、バリッバリのキャリアウーマンで、さばっさばしていて、惚れたはれたの世界から一番遠いところにいる人みたいに見える。
ってか、そもそも、オレの中では自分の親と同じくらい人の恋愛ってのは想像できないんだよなあ。
だから、マスターと千春さんと荒木さんの時の衝撃はすごいものだったんだ。
今度はマスターと章子ママかっっっ!!!とオレは頭を抱えたくなる。
太郎はどうなんだよ、いいのかよ。
聞くと「ん~。複雑なんだよなあ~そこが。
あれ以来少しは進展するかと思いきや、かあちゃんとマスターは、相変わらず兄妹みたいな感じだからなあ。
章子ママは、ああ見えてっていうか、見た通りっていうか、さばっさばしてるだろ、さらっと言っちゃうんだよ「マスターっていいわぁ~」とか「マスターのこと好きだわぁ~」とか。」
「それって、笑点見ながらママ猿が『歌丸さんいいわぁ~』とか『円楽いいわぁ~この毒舌っ!』って言うのと同じレベルじゃないか?」とオレが言うと
「うん、オレも最初はそう思ったんだよ。動物園の水牛見て『この目が可愛いよね~』って言うようなもんだろうなって。
でも、オレ、聞いちゃったんだよ。
会社の飲み会の後ふらりと来た章子ママがコーヒー飲みながら「こんな美味しいコーヒーを毎日朝昼晩飲みたいわぁ~」って言ったんだよ。
これって、逆プロポーズじゃないのか?」
考え過ぎだろ。
で、太郎の推理としては、今日のメニューは、ある意味マスターの勝負メシっていうか、大事なおもてなしの時のとっておきのメニューなんじゃないか。
もっと言えば、それがあまりいい思い出と繋がらないメニューとも言える。
それを今夜出したってことは、マスターの心境の変化、もっとはっきり言えば章子ママからの逆プロポーズへの返事じゃないか。
章子ママのために、これから朝昼晩おいしいコーヒー入れます。
美味しい料理も作りますっていう・・・
そんなことを話しているうちに、どうやらお母さん達の会もお開きになったようだ。
オレも帰らなきゃ、日付が変わっちまう。
下へ降りて行って驚いた。
皆さん帰られたと思っていたら、章子ママだけが残っててカウンターでコーヒー入れているマスターと何やら親密な雰囲気を漂わせている。
下りてきたオレたちを見てマスターが少しうろたえて「コーヒー飲むか?」
オレたちもうろたえ気味に「いや、帰ります。ごちそうさまでしたっ!また明日~」
スマートを出た太郎は、もう何もしゃべらず、ただ「じゃあな!」と片手を上げて帰っていった。
オレは駅へ向かいながらマスターのことを考えていた。
そういえば、最近千春さんのことをマスターが口にすることが少なくなったような気がする。
千春さんは相変わらず、いや、前よりももっと頻繁にスマートで晩ご飯食べることが増えたし、
仕事の合間を縫って勉強ランチ会にも参加しては講師のマスターに嫌がられていた。
ほとんど料理をしない千春さんは、初歩的な質問攻めでマスターを困らせるらしいのだ。
でも、その掛け合いがおもしろいと他のママ達は爆笑し、シスコンズだのブラコンズだの言われているらしい。
おかあさん達は、マスターと千春さんが兄妹だと思ってるのだ。
もし、章子ママとマスターがそういうことになったら、太郎は、千春さんは、そして、「食の章子さん」は、今と同じでいられるのだろうか。
いつも穏やかに優しい顔で微笑む「食の章子さん」の顔が電車の窓に見えた気がして、彼女の顔が曇るようなことがないといいなあとオレは太郎のことより章子さんの心配をする自分に少し驚く。
翌日の放課後。
太郎とスマートへ向かう途中、太郎が「夕べかあちゃんに話したんだ。マスターと章子ママのこと。」
太郎ってやつは、ホントにストレートなやつだ。
「千春さん、どうだった?ショック受けてたか?」
だめだ。オレはどうしても、マスターと千春さんに一緒になってもらいたい思いが強過ぎる。
オレの勝手な筋書きでは、章子ママのアタックで初めてマスターへの気持ちに気づいた千春さんがマスターに告ってめでたしめでたしなんだけど。
太郎が言う。
「それがさあ、げらげら笑ってさぁ。章子ママのタイプじゃないわよ~元ちゃんは、って言って、全然気にしてない感じなんだよなあ。
ちょっとくらいショックを受けるかなあと思ったんだけどなあ。
それよか、『太郎!あんた余計なこと言って章子ちゃんを動揺させたりしないのよっ』って釘さされたよ。」
そうだよなあ。章子さん、国立一本狙いでいくって言ってたんだよな。
落ちたらどうするんだよって太郎のストレートな質問に「う~ん。落ちることは考えないようにしてる。
おかあさんは、私立の短大くらいなら行かせられるから滑り止めに受けたら?って言ってくれるんだけど、そこはね~
あたしも意地みたいなのあるからね~
行く気もないところ受けても仕方ないしね~」
のんびりと語尾を延ばすいつもの口調だけど、言ってる内容はかなりハードなことだぜ、章子さん。
「受験ってのはさぁ絶対ってことないんだぜ、もしその日体調が悪かったりってこともあるだろ」としつこい太郎に「う~ん。そうだよね~おかあさんからも言われたよ、そういうこと。
その時はねえ~バイトしながら一浪するつもり。」
っていいながら、章子さんの目は「絶対受かるけどね〜」っていう目だったな。
そうそう!その時、太郎がもうひとつ気になることを言ってた。
「かあちゃんがさぁ、にやりと笑って言うんだよ。
太郎もちょっとはオトナの色恋に敏感になったかと思ったけど、まだまだねって。
太郎は毎日スマートにいるんでしょ?って。
これってどういうことだ?」
章子さんの揺るがない信念に触発されたオレたちは、とにかく今は受験に専念することにし、一日一日を大事に大事に集中して過ごした。
思わず「えーーーっ!」と叫ぶオレ。
章子ママってのは、バリッバリのキャリアウーマンで、さばっさばしていて、惚れたはれたの世界から一番遠いところにいる人みたいに見える。
ってか、そもそも、オレの中では自分の親と同じくらい人の恋愛ってのは想像できないんだよなあ。
だから、マスターと千春さんと荒木さんの時の衝撃はすごいものだったんだ。
今度はマスターと章子ママかっっっ!!!とオレは頭を抱えたくなる。
太郎はどうなんだよ、いいのかよ。
聞くと「ん~。複雑なんだよなあ~そこが。
あれ以来少しは進展するかと思いきや、かあちゃんとマスターは、相変わらず兄妹みたいな感じだからなあ。
章子ママは、ああ見えてっていうか、見た通りっていうか、さばっさばしてるだろ、さらっと言っちゃうんだよ「マスターっていいわぁ~」とか「マスターのこと好きだわぁ~」とか。」
「それって、笑点見ながらママ猿が『歌丸さんいいわぁ~』とか『円楽いいわぁ~この毒舌っ!』って言うのと同じレベルじゃないか?」とオレが言うと
「うん、オレも最初はそう思ったんだよ。動物園の水牛見て『この目が可愛いよね~』って言うようなもんだろうなって。
でも、オレ、聞いちゃったんだよ。
会社の飲み会の後ふらりと来た章子ママがコーヒー飲みながら「こんな美味しいコーヒーを毎日朝昼晩飲みたいわぁ~」って言ったんだよ。
これって、逆プロポーズじゃないのか?」
考え過ぎだろ。
で、太郎の推理としては、今日のメニューは、ある意味マスターの勝負メシっていうか、大事なおもてなしの時のとっておきのメニューなんじゃないか。
もっと言えば、それがあまりいい思い出と繋がらないメニューとも言える。
それを今夜出したってことは、マスターの心境の変化、もっとはっきり言えば章子ママからの逆プロポーズへの返事じゃないか。
章子ママのために、これから朝昼晩おいしいコーヒー入れます。
美味しい料理も作りますっていう・・・
そんなことを話しているうちに、どうやらお母さん達の会もお開きになったようだ。
オレも帰らなきゃ、日付が変わっちまう。
下へ降りて行って驚いた。
皆さん帰られたと思っていたら、章子ママだけが残っててカウンターでコーヒー入れているマスターと何やら親密な雰囲気を漂わせている。
下りてきたオレたちを見てマスターが少しうろたえて「コーヒー飲むか?」
オレたちもうろたえ気味に「いや、帰ります。ごちそうさまでしたっ!また明日~」
スマートを出た太郎は、もう何もしゃべらず、ただ「じゃあな!」と片手を上げて帰っていった。
オレは駅へ向かいながらマスターのことを考えていた。
そういえば、最近千春さんのことをマスターが口にすることが少なくなったような気がする。
千春さんは相変わらず、いや、前よりももっと頻繁にスマートで晩ご飯食べることが増えたし、
仕事の合間を縫って勉強ランチ会にも参加しては講師のマスターに嫌がられていた。
ほとんど料理をしない千春さんは、初歩的な質問攻めでマスターを困らせるらしいのだ。
でも、その掛け合いがおもしろいと他のママ達は爆笑し、シスコンズだのブラコンズだの言われているらしい。
おかあさん達は、マスターと千春さんが兄妹だと思ってるのだ。
もし、章子ママとマスターがそういうことになったら、太郎は、千春さんは、そして、「食の章子さん」は、今と同じでいられるのだろうか。
いつも穏やかに優しい顔で微笑む「食の章子さん」の顔が電車の窓に見えた気がして、彼女の顔が曇るようなことがないといいなあとオレは太郎のことより章子さんの心配をする自分に少し驚く。
翌日の放課後。
太郎とスマートへ向かう途中、太郎が「夕べかあちゃんに話したんだ。マスターと章子ママのこと。」
太郎ってやつは、ホントにストレートなやつだ。
「千春さん、どうだった?ショック受けてたか?」
だめだ。オレはどうしても、マスターと千春さんに一緒になってもらいたい思いが強過ぎる。
オレの勝手な筋書きでは、章子ママのアタックで初めてマスターへの気持ちに気づいた千春さんがマスターに告ってめでたしめでたしなんだけど。
太郎が言う。
「それがさあ、げらげら笑ってさぁ。章子ママのタイプじゃないわよ~元ちゃんは、って言って、全然気にしてない感じなんだよなあ。
ちょっとくらいショックを受けるかなあと思ったんだけどなあ。
それよか、『太郎!あんた余計なこと言って章子ちゃんを動揺させたりしないのよっ』って釘さされたよ。」
そうだよなあ。章子さん、国立一本狙いでいくって言ってたんだよな。
落ちたらどうするんだよって太郎のストレートな質問に「う~ん。落ちることは考えないようにしてる。
おかあさんは、私立の短大くらいなら行かせられるから滑り止めに受けたら?って言ってくれるんだけど、そこはね~
あたしも意地みたいなのあるからね~
行く気もないところ受けても仕方ないしね~」
のんびりと語尾を延ばすいつもの口調だけど、言ってる内容はかなりハードなことだぜ、章子さん。
「受験ってのはさぁ絶対ってことないんだぜ、もしその日体調が悪かったりってこともあるだろ」としつこい太郎に「う~ん。そうだよね~おかあさんからも言われたよ、そういうこと。
その時はねえ~バイトしながら一浪するつもり。」
っていいながら、章子さんの目は「絶対受かるけどね〜」っていう目だったな。
そうそう!その時、太郎がもうひとつ気になることを言ってた。
「かあちゃんがさぁ、にやりと笑って言うんだよ。
太郎もちょっとはオトナの色恋に敏感になったかと思ったけど、まだまだねって。
太郎は毎日スマートにいるんでしょ?って。
これってどういうことだ?」
章子さんの揺るがない信念に触発されたオレたちは、とにかく今は受験に専念することにし、一日一日を大事に大事に集中して過ごした。
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