パパと呼ばないで

再婚した時、パパと呼ばないでくれと懇願した夫(←おとうさんと呼んで欲しい)を、娘(27)「おやじ」と呼ぶ。良かったのか?

母親

2016年08月25日 | 本・マンガ・テレビ・映画
8月25日(木)晴れ

今も、この世には悲しい母というものがたくさん存在するけど、その中の一人に女優の高畑さんがおられると思う。
犯罪に「良いも悪いも」ないとは思うが、でも、今回のこの罪は大きいと思うなあ。
自分の立場、もっと言えば母の立場までも考えて、それでも踏みとどまれないとは、もう病的としか思えない。
肉食系を自認してらしたような高畑さん(母)のキャラまでもが今後使えないだろうし、おそらくこれからしばらくは息子の愚行奇行やら子育て云々のバッシングなどが続くのだろう。
いや、同情はしませんよ。犯罪は犯罪だし、成人した後まで親の責任?って言う人はいるだろうけど、あたしがもし被害者の親だったらこんなバカ息子を育てた高畑さんまでも恨むし憎む。

今年の夏休みはずっと娘の家で過ごした。
前半は家の掃除やら草取りに始まり、中盤は観光やら映画・ライブ鑑賞、そして終盤は読書三昧。
娘の本棚から漫画やら小説やらを持ち出し、開けっ放した畳の部屋に寝転がって読む。
ご飯を作ろうにも、調味料は塩胡椒くらいしかない。
油さえないから、マヨネーズで炒める。
学生時代に流行った塩スパとかでお腹を満たしてはまた読む。
娘が「晩年の文豪みたいな生活だねえ〜」と言う。
よくわからんが、地味な幸せ感はありました・・・
で、吉本ばなな著を二冊(『ハゴロモ』『みずうみ』)読破したのだが、偶然にも(というか彼女の作風にはよくあるのか?)
主人公の母は亡くなっている。
さらには、絡んでくる人達にも当然母親がいて、それが何かしらのキーパーソン的であり、フツーでない。
つい、母親がこうだから、とか、母親がいないから、という視点で見てしまうフツー人代表n。
親はなくても子は育つし、親がいることによって歪んだ人生を歩まざるを得ない子もいて、一人の親であるワタクシは胸が痛くなる。

少し前に、オリンピックで、幸せそうな母の映像をたくさん見た。
強い母、優しい母。
さらには、そのオリンピックを見ている家族の風景というのをほぼ日の「見たぞ!リオデジャイロオリンピック」で読み、ほっこりしたりもした。
思わずメモしたのは・・・
オリンピック観戦をし、「見たぞ!」に投稿している子供のおかあさんが、
「文章を書く練習にもなっているようで、ひいき目にも少しずつ文章力が上がっている気がする」と。
「毎日の投稿をまとめて自由研究に出したいくらいです。」と。
それに対して、ワタクシの心の師である永田氏がおっしゃいます。
『オリンピックのようなすごいものを観て、「おお!」と思ってそれを書く、というのは、もう、絶対に、ぜーーーったいに、よいことだと思いますよ。
ひとつ、アドバイスさせていただくとしたら「書きたいところだけ書く」のがいいと思います。
「はじまり」とか「まとめ」って無駄に時間や気持ちを費やしちゃうから。』
衝撃的でした。
ワタクシ、「はじまり」とか「まとめ」で、時間も気持ちも費やすタイプ・・・
ここかぁ〜ワタクシが文豪になれない点は(・・・違います)

8月23日の朝日新聞に、「記者が選んだこの一瞬」というコーナー。
オリンピックの会場を取材した記者14人がベストシーンをあげている。
吉田沙織に卓球の水谷、ジョコビッチに体操銀メダルのオレグ、猫ひろしを選んだ記者もいる。
その中に、「母は見ていてくれる」というタイトルでバタフライ銅メダルの星奈津美さんのこと。
バセドー病を克服した娘への母の賛辞を書きながら、記事後半には記者自身の話になる。
亡くなった記者のお母さんは息子が書いた記事を切り抜くのを楽しみしていた。今大会多くの原稿を書く機会に恵まれた。星にはかなわないにしても、こんな息子を幸せに思ってくれるだろうかと。
いやいや、自分のことじゃなくて五輪のことを書きなよ!と苦笑しながら読みつつも、一番この記事が記憶に残るのは自分にも母がいて、自分も母だからだきっと。
それと、何を見ても何を読んでも、自分と繋げてしまうところがある。
そういうところが、この記者と少し似ていると思ったこともある。
で、ついでに言うと・・・
先日、娘が「まだ働き始めたばっかなのに、取材取材なんだよね〜一年くらい経って、何かしらの実績を積んでからにしてほしいわ〜」と嘆く。
でも、母は、そんな娘が無造作に投げた新聞のコラムに娘の名前が出てて、娘に期待する的な文章を読んでは感動するのよ。
頑張れ!と思うのよ。
この新聞もらっていい?って貰って帰って、写真に撮ったりした後はおばあちゃんに送ろうと思ってるのよ。

今日の1枚は・・・
お盆の、とある街の風景。
灯籠がぼわんとあたたかく灯り、優しい気持ちになる。
 
あ!そうそう!この夏、息子と二人旅をした幸せな母親というのもワタクシは知っている。
母と息子の距離感っていうのもまた、ワタクシには永遠に味わえないもので、うらやましいのである。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボランティアする側される側

2016年08月24日 | 子供ネタ
8月24日(水)台風
娘が遠く離れた北陸へ行ってしまい、何が心配って、ちゃんと食べてるかどうかが心配でした。
しかし、今は全く心配してません。
なぜなら・・・
行ってすぐに娘から「ボランティアされとるぅ〜〜〜」とラインに写真が届く。



娘の働く映画館は、支配人と、あとはボランティアの若者達によって支えられている。
そこへ東京から飛び込んだ若い女。
皆さん、どんな気持ちで受け入れてくださってるか母は心配であったが、これらの食材やお料理はボランティアの人達からいただいたと聞き、感謝感謝。
いやぁ〜ボランティア精神の溢れている方達は、根っからお優しいのねえ〜
夜遅くまで仕事してても、おにぎりやらパンやらお漬物、煮物、ミートソースやらタッパーでいただいて、飢えに苦しむことはなさそう。
だから、お盆の頃に行くまで、コンロも何もなくても生きていけてたのね。

そして・・・
母も、お相伴にあずかりました。
娘のところに泊まった日の最初の朝食。

パン屋さんの差し入れのパン。ゴーヤと海老の卵とじ、車麩の煮物、コンソメスープ。
高級マンゴー。
全て頂き物です。
思わず写真に撮って、貧相な朝食を食べていたであろう夫に送信して羨ましがられる。

玄関にはじゃがいもが一箱。南瓜まるごとゴロン。
小さな冷蔵庫には、手作り料理のタッパーと野菜がごろごろ。

トマトにアスパラ。栃尾揚げはこちらの名物らし。

それにしても、若い女子一人にこれは重荷でしょう・・・

冷蔵庫にも入らん。
お盆休みで来た夫がうれしそうに朝食代わりに食ってた・・・

コンロを買いました。
ちょっと炒め物でも作ってみましょう。
ピーマンが冷蔵庫に溢れとるので、筍の代わりにジャガイモで青椒肉絲風。

スープは、インスタントとは思えぬほど美味しいオニオングラタンスープ。


ライブの打ち上げの残りのおにぎり。
写真撮り忘れたが、鯛の尾頭付きのようなものも!
母まですっかりボランティアされておりました。ごちそうさまでした。

そして、先程また娘からライン。
「今日、給料日だった。
お鮨やさんに連れてってもらったんだけど、カウンターに通された。
「夏野菜の天ぷら」の後、何頼んだらいいんだ!」
そんなこと母に聞かれてもねえ〜
頼りにならない母「廻らないとわかりませんって自虐で逃げて、教えてもらう」と、アドバイスにならない答えをしながら、娘が一体何をチョイスしたのか不安になる。
しめ鯖一貫150円と、のどぐろ一貫400円!そしてくじら汁を飲んだ・・・らしい。
しめ鯖という、渋いチョイスと、高級魚のどぐろという遠慮のなさに母はドキドキするよ。
そして、写真にはもれなくビールが・・・

遠慮というものを知らないのか・・・
寿司ネタで悩む前に、ビールをお断りしなさい。

とはいえ、衣食足りて礼節を知る。
衣はどうだか知らんが、とりあえずおかげさまでなんとか食は十分すぎるほど足りている。
ボランティアされる側を早く脱却して、一人前におなりなさい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏の旅〜渋さ知らズ

2016年08月22日 | おでかけ
8月22日(月)雨

音楽集団<渋さ知らズ>が、日本最古の映画館<高田世界館>とコラボ!
ってことで行く。
とは言っても、全く知識がない。
渋さ知らズとは何ぞや?
得意の検索をするも・・・いまひとつピンとこない。
ゆーちゅーぶも見てみる。
なんとなくのイメージとして、東京スカパラと米米CLUBにアングラ色を濃くして山海塾をプラスした感じ???(余計わからなくなった・・・)
イチオー自分なりのイメージとして、少しフォークロア調のスカートなんぞ着て、髪をおだんごにしてみます。(ますます違う???)
ま、なんとかなるでしょ。

この、高田世界館。明治44年築。日本最古級の現役映画館。
二階建てで、アーチ状の窓や円柱などアールデコ調の意匠があちらこちらに(パンフより)

二階席の最前列にておとなしめのおばちゃん一人でスタンバイ。
隣におとなしめのカップルがご丁寧に「ここよろしいですか?」と座る。どうぞどうぞ空いてます。
まわりを見回すに、年齢層が結構高め。
二階席はさらに高め。

始まります。
普段は映画館ですから急きょ注ぎ足したような舞台の上に、パイプ椅子がおかれてて、メンバーがゆるゆると登場されます。
ジャズ、ロック、ラテン、歌謡曲のジャンルを超えてるというのは、見た目でもわかります。
レゲエなドレッドヘアのにいちゃんがいるかと思うと、バカンス中の昇太さん(笑点のね!)
虹色ニット帽のジャズマンにロッカーもいる。
バンマスはTシャツにスエットのパンツらしき軽装で登場。
わからん!このバンドのカラーがわからん!ユルいのか?ハードなのか?熱いのか?
玄界灘と背中に書かれた法被に褌のおっちゃんもいる。
が!バーーーン!と演奏が始まった瞬間、楽しいっ!これ、好きな感じ!
突如ノリノリになるおばちゃんに、さぞや隣の女子も驚いたことでしょう。
反対側には、おそらく同世代のおばちゃんがいて、ノリノリ。
もう、一階は踊りまくってるし、二階も両端には立ち上がってダンスダンスダンス。
何なんだこの感じ。心臓に響く心地良さ。
しばらくして、ふと気付きます。
隣のカップル、ワタクシの動向に合わせてる・・・
いやいや、このおばちゃん、初心者だからね!全く知らないんだよ渋さ知らズのことも曲も。
ノリだよノリ、こういうのはノリでいいんだよ。
しかし、ワタクシが拍手すると拍手し始め、曲に合わせて手を叩くと数拍遅れて手を叩きだす。
いやいや、決まりじゃないから。
スクリーンに、演奏している手もとを映し出してる!撮っとこ!(写真も動画も撮り放題!)
するとカップルの男の子も慌ててスマホで撮り始める。
だんだんおばちゃん、責任感じてくるわ。
フィナーレが近づき、もう、一階席は総立ち。
ただ、二階席は年齢層が高いこともあり、ワタクシの列は着席のまま。
法被の人、バンマスまでもが、二階席に「踊れ踊れ」とばかりに挑発する。
が、ワタクシとしてはもうこれ以上このおとなしめのカップルに無理をさせたくない。
が、バンマス達には「あたし、すっごく楽しんでますよ」と伝えたい。
よって異常にニコヤカにリズムを取り手を叩き手を振り上げ口角挙げまくる。

夢のようなひとときを過ごした後、外に出ると星と月。
耳はボワンボワンとしてて、でも一気に世間は静かな静かな街というギャップを楽しみながら帰路につくことでありました。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏の旅〜蓮の花鑑賞

2016年08月21日 | おでかけ
8月21日(日)晴れ
娘が、休みをもらえるとのことで、急きょ夫にも来てもらい三人で電化製品等を買いそろえる。
車があるととっても行動範囲が広がり、良いわぁ〜
とはいえ10年以上運転していないワタクシ、さらにはオートマは生まれてから2回くらいしか運転したこと無いので無理無理無理。
この、浮いた左足をどうしたらいいの?
おぼつかない娘の運転で我慢していたが、夫が来てくれるとさらに安心。
翌日、娘は仕事へ行き、ワタクシ達夫婦はちょっと観光なんぞしてみましょう。
もう、終わりかけらしいのだが、蓮が綺麗なところがあるってことでドライブ。
今日もいいお天気!暑いわねえ〜〜〜

駐車場に車を停めて・・・
早速目に入ったのが・・・

公園内に『小川未明文学館』があるんですがね、休館日。
出た〜っ!定休日女っっっ!
小学生の頃、小川未明の童話好きだったんだけどなあ〜
ま、いいでしょ。蓮!蓮!蓮がメインなんだから。

「蓮まつり」の終わる日ということもあり、蓮の花も終わりでした・・・
ここが満開だったらさぞや圧巻だったろうなあ〜来年に期待です。
『日本海に沈む夕陽&映画鑑賞』ツアーに『蓮を見る』という項目もプラスされます。

蓮の花自体は好きなんだけど、罰当たりを覚悟で言いますけど、蓮の花托が少し苦手。
だから、横から見た蓮とか遠目に見た蓮が好きだなあ〜なんてことを思いながら散策しておりますと、
ん?よく見ると蓮の大きな葉の上に一円玉やら五円玉。
いつもなら「なんでこういうのをみると小銭をなげいれたくなるのかね〜」と冷めた目で見るワタクシですが・・・
数日前、娘の庭の草取りを一日がかりでやった時、草の中から一円玉を発見。

「こんだけ働いて日給一円ってことかっ!」
その一円を投げ入れたろ!
←見えます?
いいことがありますよ〜に!
広い園内をてくてくてく・・・え?あれ?なんだかぽつぽつきてる?あんなに晴れてたのに???
そうこうしてるうちにザーザー降り出してきたので慌てて『小林古径記念美術館』に駆け込みます。
ええ!もちろん休館ですよ休館。
雨女と休館日女、ダブルで威力を発揮してしもた。
美術館の入口の「ご自由に休憩としてご利用下さい」という部屋で雨宿り。
小林古径の絵はがき「蓮の花」と「猫」2枚お買い上げ。
夕方、夫が一足先に東京へと帰っていきましたが、この時期だというのに座れたとライン。
をっ!一円玉のご利益ね!・・・

『日本海の夕陽&映画&蓮』ツアーに『小川未明と小林古径』という文学&絵画も加わります。
草取り問題でめげそうな心でしたが、このツアーを成功させるためにも頑張ろうと思うのでありました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏の旅〜シン・ゴジラ鑑賞

2016年08月20日 | 本・マンガ・テレビ・映画
8月19日(金)晴れ

娘の住む街に着いたその晩、何か食べに行こうと出かけるもお盆帰省客か金曜だからか、どこもいっぱい。
娘が「最初にこの街に面接に来た時行ったお店行こうか。」と、赤提灯に連れて行ってくれる。
おじいさんと、若い女の子二人でやってる小さな焼き鳥屋。
なかなか渋いお店であった。
翌日は、草取りで疲労困憊して二度も昼寝をした。
そして、夜帰宅した娘が「シンゴジラ見にいこう!」と言いだす。
レイトショー1300円なり。ま、いいでしょう。
何と!支配人が乗り古した軽自動車を譲ってくれるとのことで、車で帰宅。
娘のおぼつかない運転で映画館へレッツゴー!

チョー話題作の「シン・ゴジラ」
普段、あまりこういう系に興味のないワタクシであるが、ちょっとおもしろそうと思い娘の誘いに乗った。
二度、昼寝をしたとはいえ、慣れない肉体労働の疲れがどっと出て、途中何度も寝そうになる。
いや、映画はとてもおもしろく、息もつかせぬ場面の連続なのであるが、それ以上に草取りはワタクシにダメージを与えたってわけだ。
ゴジラより強い草取り。
それから、もう少し勉強してからでないと、ワタクシ、全く予備知識もなく入ったうえに、生来の知識不足もたたり、官僚とか役職とかがいまひとつピンとこない。
あとねぇ〜言っていいっすか?
最初、一番最初にゴジラが登場した時、「え?これがゴジラ?」ってちょっと笑いそうになった。
これが特撮ってこと?
もちっとCGで、なんとかなったんじゃないの?って思うワタクシはド素人ですからお許しを。
ゴジラって、造りもんっていうか人造物じゃなくて、生命体なんでしょ?
だったらもう少し生き物感があってもよかろうに、と思ったわけですよ、ワタクシ。
まあ、その後、進化して、よく見るゴジラの形になったら、目も慣れたのか最初の衝撃は消えましたけどね。
ド素人を盾に、感想を羅列。
長谷川博己がカッコ良かった。
前評判で「石原さとみが大統領特使でクォーターってどうなの?」みたいなツイート見たけど、いやいやアリでしょと思ったよ。
あまり彼女のこと、どうこう思ったことはなかったけど、女性の少ないこの映画で、かなりの大健闘とワタクシは思いましたね。
英語のしゃべり方も良かったし。
我が娘も「やっぱイーオンのCMやってるからかな」とヘンな感心のしかたしてました。
で、大きな話の流れとして、初めは政治家とか官僚とかにうんざりさせといて・・・そこからの・・・
日本人らしい仕事っぷり・・・からの、政治家もやる時はやる・・・
その裏に絡むアメリカ、とか、核とか。
(ここらへんを書くと夫が「オレが見るまでネタばらすなよ!と怒るのでこのへんで)
というストーリー展開も、ワタクシ好み。
おもしろかったね〜と言いながら、また娘のおぼつかない運転でドライブしながら帰る。
帰り着かない・・・
道に迷って、どんどんどんどん静かな暗いほうへと迷い込む。
母「ちょっと止まって地図見よう!」
娘「そうだね!でも、昔、ママって『道は繋がってるぅ〜〜』って走り続けてたよね。」
うっ・・・道は繋がってるけど、ここでは止めとこう、こんな夜中、知らない街では・・・
何とか無事に帰り着きました。良かった良かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

街結君と太郎君⑯

2016年08月20日 | 野望
晩ご飯は、トンカツだった。
ばあちゃんは、「ずっと一人暮らしだからねえ。男の子二人の食べる量って想像がつかん。」と言いながら
これでもかこれでもかとカツを揚げ続け、オレたちはそれをガツガツ食べた。
あいだで、近所の人たちが入れ代わり立ち代わりやってくる。
「孫が来てるんだってねえ。」といいながら上がり込んでくる。
天ぷらやら、白和えやらちゃぶ台に皿が増えていく。
そして、揚げたてのトンカツを新聞紙にくるんでばあちゃんが持ってくる。
物々交換の図だ。
太郎が「あ、昼間はありがとうございました。
あの野菜、何て名前でしたっけ?」と、3番目にきたおばあさんに聞く。
「フダンソウよ。明日ばあちゃんに酢味噌で食べさせてもらいなさい。
いや、ワケモンはマヨネーズの方が良かかねえ。」
オレなんて、昼間会ったじいさんもばあさんも、みんな同じ顔に見えてるっていうのに、太郎は顔どころか、名前まで覚えてる。
言葉だって、方言がきつくて、しゃべってる内容の半分くらいしか理解できない時があるのに
太郎は「え?そうか?オレ結構わかるぜ。ニュアンスニュアンス。」
9時になるとばあちゃんは「早寝早起き。早起きは三文の得。」と立ち上がり「あんたたちも早く寝なさいよ。」と寝室へ入っていった。
子どもじゃないんだから9時なんてまだ昼間だぜ。
オレたちは、テレビを見たり、寒いのに夜空を見に外へ出たりした。
太郎は相変わらずハイテンションに「すっげーーーー。なんなんだこの空。ここは北極か?
オーロラも出るんじゃないか?天の川も見えるんだろうなあ。
星ってこんなに見えるんだなあ。」と感激しきり。
「かあちゃんにも」と言いかけて口をつぐむ。
あの夜以降、太郎とは、千春さんと荒木さんのことについて何も話してない。
ただ、荷物をとりに一回うちへ帰った時に、置き手紙をして、
スマートに寄ってしばらく休むって話はしてきたって言ってた。
イマドキ太郎は携帯を持っていない。
オレの携帯には、ママ猿から「ケンちゃんママとは話をしたから、ケンちゃんが落ち着くまでそっちにいなさい。
帰りは5日の便を予約してあるけど、おばあちゃんに言えば、航空券の変更はどうにでもなるから。」というメールが届いていた。
落ち着くってどういうことだろう。
太郎が、千春さんと荒木さんの恋を認めてあげるっていう心境になるってことか?
千春さんは、荒木さんと再婚したいのかな。
オレが黙り込んでる横で太郎はいきなり歌いだす。
♪流れ星流れ星~~~♪
をっ!スピッツか。
あの、恐怖ドライブの中、よく憶えたなあ。
太郎が「オレ、ずっとスマートにいるからさ、あんまり音楽は聞かなかったし、興味なかったんだけど
スピッツはいいな。
スピッツ=車酔いしないって式が成り立ったこともあるからかな。
街結は音楽聞く?」
太郎と仲良くなって、勉強したりしゃべったりする前は、オレは結構音楽にのめり込んでいた。
だからそこそこ詳しいぜと言いながら、フジファブリックやアジカンやバンプのことを教えてやった。
ばあちゃんから借りた綿入れ半纏を着て、星降る寒空の下、iPodのイヤフォンを片方ずつはめ、何時間も高校男子二人で志村の歌声を聞いていた。

翌朝、いや、またも目が覚めたら昼だった。
あわてて起きていくと、またもちゃぶ台にお昼ごはんと置き手紙。
「フラダンスに出かけます。夕方には帰る。サラダは冷蔵庫。」
大皿にホットケーキが山のように積み上げられ、トッピング用なのかチューブのホイップクリームやら
チョコレートシロップやらメイプルシロップが瓶ごとおいてある。
あ、冷蔵庫にサラダがあるんだな。
冷蔵庫の棚一段全部を占領している大鉢を引っ張りだすと、昨日もらったフダンソウで作ったサラダがこんもり盛ってある。
「ばあちゃん、洋風もいけるんだな。フラダンスならってるくらいだから気分がハワイアンだったのかなあ。」と太郎が牛のような勢いでフダンソウを食みながら言う。
「メモの字が少し怒ってないか?明日こそは早起きしないとな。」とコーヒーを入れながら太郎が言う。
太郎は、もうオレよりもばあちゃんちの台所を使いこなしている。
太郎曰く「ばあちゃんみたいな料理上手な人は、動線を大事にしてるから大体ものの置いてあるところがわかるんだ。
マスターもそうなんだ。」
気のせいか、太郎が「マスター」と口にする時、3秒くらいの空白を感じて、オレはちょっと緊張する。
どう思ってるか根掘り葉掘り聞くべきなのか。
それともそっとして、太郎がしゃべりたくなった時まで待つべきなのか。
気が短いばあちゃんが入れたコーヒーと同じ粉とは思えないほど、太郎の入れるコーヒーはおいしい。
シバが「散歩に行きますよ。」と、鼻と前足を上手に使ってガラス窓を開けて顔を差し込んでくる。
ホットケーキを食い過ぎたオレたちはまた、腹ごなしに、シバを先頭に散歩に出る。
シバは昨日とは違う方向へ歩き出し、とうとう道なき道になり、太郎が「シバ!お前、道間違ったんじゃないか?」と声をかけると
シバは「いいえ!」と言わんばかりに一言「ワン」と吠えて、どんどん先へ行く。
息を切らしてついていくと、急に視界が開けて、ばあちゃんちやら川やら見下ろせる。
「すげーな、シバ。おまえは名案内人だ!」と太郎がシバの頭をぐりぐり撫でる。
シバは得意そうに鼻を天に向ける。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

街結君と太郎君⑮

2016年08月19日 | 野望
空港へはばあちゃんが迎えに来てくれた。
真っ青な顔の太郎に驚いたようだが、飛行機酔いだと聞くとにやりと笑った。
イヤな予感がした。
駐車場へ向かい、ばあちゃんがトランクを開けた車は、8人は乗れそうなデカイ車だった。
空港からばあちゃんちまでは高速道路使って2時間くらいだ。
太郎、頑張れ。あともう少しだ。
助手席に座ろうとしたオレにアゴで後ろを指示。
「二人とも後ろに座りなさい。少しだけ飛ばすから。
太郎君、なるべく早く着くようにするからね。」
いくら田舎とはいえ、いくら夜9時をまわってるとはいえ、このスピードはまずいよ、ばあちゃん!
と叫ぶオレの声は、ばあちゃんには届かない。
なぜなら、今、ばあちゃんのお気に入りだというスピッツのさわやかな歌声が大音量で流れていたから。
事故も起こさず、狸も轢かず、パトカーにも追跡されず、想像してた到着時間よりだいぶ早くばあちゃんちへ着く。
車から降りて、ばあちゃんの入れてくれたお茶と和菓子を食べながら、やっと太郎を紹介する。
太郎は、なぜかまったくもって元気だった。
人が運転する乗り物に乗って酔わなかったのは生まれて初めてらしい。
どういうことか理解に苦しむが、酔うよりは酔わない方がいいから、良かった良かったということにしておこう。
それにしても、一人暮らしなのになんであんなデカイ車にしたのか聞くと
「まわりが年寄りばっかりだからねえ、あたしが買い物や病院に連れて行ってあげたり
荷物を運んであげたりしてるのよ。
前の車も、結構良かったんだけど、5人乗りだったからねえ。
これはいいよお~人も荷物もたっぷり運べるからね。」
「ばあちゃんも、十分年寄りだろ?」と言いたいが、これからお世話になるのだからぐっと飲み込んだ。
次の日、疲れも出たのか昼まで寝て、空腹でやっと目が覚め起きていくと
ばあちゃんはいない。
ちゃぶ台の上におにぎりがツリーのように積み上げられ、大皿に煮しめやら唐揚げやら大量に作ってある。
そしてその皿を文鎮代わりにして「グランドゴルフに出かけます。夕方には帰る。」と素っ気ないメモ。
同じく空腹に起こされた太郎とガツガツ食べる。
腹ごなしに散歩にでも行くかと二人でぶらぶら歩いてみる。
放し飼いで飼ってる犬の「シバ」もついてくる。
太郎には言ってないが、こいつの正式名称はシバタロウだ。
こいつはなかなか頭のいいヤツで、年に一度か二度しか会わない俺のこともよく憶えている。
もうだいぶジーさんなのではしゃぎはしないが、会う度に「待ってたよ」という顔をする。
知らない客人には猛烈に吠えるので、太郎にも吠えるかなと思ったが
「まちゆいの友達だろ」って顔をして尻尾を振り、「オレ動物大好きなんだ!犬飼って、散歩させるのが夢。」とシバの頭やら背中やらなで回す太郎にされるがまま。
シバは「ここらを案内するから、ついておいで」という感じで先頭を歩き、オレたちは何も考えずにシバの後ろからついていった。
都会育ちの太郎はきょろきょろ周りを見回しては「いいなあ~空気が美味いなあ」
川を見ては「うを~っ!魚がいる、魚!」
畑を見ては「うわ!白菜が立ってるの初めて見た!」
時々会う人たちはみな老人で「あれ?まちゆいちゃんだっけ?大きくなったねえ。」と声をかけてくれ
その度にオレは「こんにちは。いつもばあちゃんがお世話になってます。
いえ、今回は友達と二人で帰ってきました。
はい、みんな元気です。ありがとうございます。」と
同じようなことを聞かれ、同じようなことを答え、社交的な太郎が「ボク、まちゆい君の同級生で太郎っていいます!いいところですねここは。」と絶妙なタイミングで合いの手を入れたりしていた。
1時間ほど歩くとちょうど一周してばあちゃんちに帰り着くコースだった。
そして、オレたちの両手には白菜やら深ネギやらサツマイモやらが山のように抱えられていた。
最初にもらった大きな葉っぱは、ちゃんと名前を教えてもらったにもかかわらず
ばあちゃんちの縁側に広げた頃にはすっかり忘れてしまい「カタカナ5文字くらいだったよな。」
「いや、6文字くらいじゃなかったか?ほうれんそう、みたいな。」
「そうそう!『なんとか草』って言ってた言ってた。」
ばあちゃんちには、犬のシバのほかに、猫が5、6匹いる。
犬派のばあちゃんにいわせると「うちの猫じゃない。」らしいがシバのご飯をガツガツ横取りするらしく
しょうがなく猫用にも残飯をあげているうちに増えてしまったらしい。
猫ってカリカリしたキャットフードしか食べないのかと思っていたが、ここの猫達はガツガツかぼちゃを食っていた。
飼ってるわけじゃないから、名前もないというので、適当に「クロ!」とか「牛!」とか「チビ!」とか見た目でわかりやすい名前をつけてはちょっかいを出してしばし遊ぶ。
寒くなってきたぞ、部屋でテレビでも見ようぜと言うと太郎は「一宿一飯の恩」と言いながら
ばあちゃんが干していった布団やら洗濯物やらを入れ始める。
マメだなお前。おれなんか気付きもしなかった。
布団を取り込み、洗濯物を畳んだら、風呂の掃除を始める。
「ばあちゃん、グランドゴルフ、上手そうだな、あのドライビングテクニックだもんな。」
そうこうしてると、キキキーーッというブレーキ音をさせてばあちゃんが帰って来る。
「あんたたち、何時になっても起きてこないからしびれきらして出かけたのよ。
ホントだったらどっか観光にでも連れてってあげようと思ってたのに!
早寝早起き。まっとうな人間は、朝起きて昼働いて夜寝るもんだよ。」と文句言いながらも
お風呂もわいてて、洗濯物も布団も取り込んであることで機嫌はいい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏の旅〜素敵な暮らし

2016年08月18日 | おでかけ
8月18日(木)晴れのち雷雨のち晴れ
お盆休み、皆様いかがお過ごしだったでしょうか。
ワタクシは、娘の住む北陸のとある街へ六泊七日の旅。
本日帰ってまいりました。
イチから猛ブーイング!すまんすまん。イチも大事、ねーちゃんも大事なんだよ、許せ!

一週間も滞在するといろんなことあります。
楽しいこと苦しいこと信じられないようなことせつないことおもしろいこと。
その都度日記に書きたいと思うも未だにiPhoneでの長文入力は苦手。
よって溜めに溜めた思いの丈をこれからだらだら数日に渡って書き続けることにします。
大まかな目次として・・・
*素敵な暮らしは苦しい暮らし
*シンゴジラ鑑賞
*蓮鑑賞
*ライブ参戦
*カラス
*ボランティア飯

で、 12日の朝8時前の新幹線で夏の旅が始まります。
この時期ですし、新幹線一人乗車は二回目という初心者ですから指定席を取ります。
そして、あっという間に娘の住む街に到着。
しつこいですが『新幹線ブラボー!』
娘の家に向かいます。娘は仕事中ですが、大丈夫。すでに合鍵はもらっているの、うふっ!
案の定、ゴミ屋敷になっとる・・・
おまえは男子学生かっっっ!いや、イマドキの草食系男子ってお部屋もきれいにしてそうね。
ペットボトルや缶、あれほど引き取りにきてもらえ!と言ってた引っ越し時の段ボールが未だある。
まあ、ずっと休み無しらしいから、母が頑張りましょう。
休みがないから買い物にも行けず、未だ洗濯機も掃除機もない。
ガスコンロもない、テレビもない。クーラーもない。
車もない、自転車もない、目の前にバス停はあるけど一時間に一本もない
さあ、ご一緒に!
♪俺らこんな村いやだ 俺らこんな村いやだ♪
ま、自分で望んできたんだからね〜文句は言えないよね〜
母はせっせとゴミを片付け、床や畳を拭きます。

翌日は・・・娘を送り出した後、今回のメインイベント、庭の草取り開始。
お隣さんから大家さんに「草取りをして!」とクレームが来たとのこと。
で、娘から「夜中に取れってか!?」と泣きがはいったのである。
お隣さんにはお土産のお菓子を持って謝りに行かせ「母が明日やりますので」

まあ、こんな状態だしね〜そりゃ文句言いたくなるわなあ〜どんどん隣に進出?浸食?していってるし。
ってことで・・・軟弱母がせっせせっせと・・・
はかどらない・・・蚊には刺される、バッタやらトカゲやらと遭遇する、蝉やら何やら死骸にビビる・・・
虫除けシートで体拭きまくり、虫除けキーホルダー?を腰に下げ、蚊取り線香を炊き、それでも蚊に刺されまくる。
とりあえずお隣との境界部分を取ろうと思い・・・

だんだん気持ちがやさぐれてくる。
今まで、この草取り問題はどうしていたのだろ?
大家さん(おばあちゃん)が取ってたのか?
業者に頼んでいたのでないのか?今までは頼んでたのに、今年からは小額とはいえ家賃も入り、草も取ってもらえるなんて、ばあちゃん、うまくやったね。

お隣さんから「無理しないでね〜」とエールを送られ愛想笑いをしながら汗だらだら草取る取る取る。
水分補給してまた草取る取る取る。
ご飯食べて、扇風機を強にして昼寝。
起きてまた草取る取る取る。
水分補給してまた草取る取る取る。
すると、何か気配を感じて顔を上げると。
ぎゃーーーっ、カラスが見とる。
じりじり後ずさるワタクシに、ちょんちょんと近寄ってくるカラス。
近寄らないでよぉ〜と逃げると、バサ〜っと飛んでくる。
ぎゃーーーーっと家に逃げ込む。
無理無理無理!コワイよぉ〜カラス。と、家族にラインすると
娘が「写真!」と要求。怖くて写真なんか撮れるかいな!
ちょうど公園にサイクリングに行ってた夫から呑気に「こんなやつ?」と鳩の写真。
やさぐれてる妻は「そんな友好的平和的なやつではないっ!ガラの悪いチンピラ。カラス界では弱いから
いじめられてつつかれて怪我してハゲてるんだと思う。」
カラスの不在を確認し、ビビりながらへっぴり腰で草を取ってると・・・
ぎゃーーーっ!また来た〜〜〜っ。

「イチみたい。」という娘の言葉に夫からは、まったりしているイチの写真が届く。

母「イチに謝れ!こんなガラ悪くないわ!」
と、すったもんだしながら、庭の草取り5分の4終了し本日のミッション終了〜〜〜

庭のある二階建ての一軒家。
不動産屋さんが間に入って、ちゃんとリフォームして、という物件じゃないから
思い描いていた『素敵な暮らし』とはほど遠い。
ましてや、仕事、それも不規則な勤務状態、公私の別がつけにくいような仕事をしていると、
家には寝に帰るだけのよう。
だから、ますます管理できないという悪循環。
雑誌に載ってる素敵な古民家暮らしというのは、見た目は古そうな外観だけど中身は十分に近代的現代的にリフォームされてて、
虫は入ってこなくて、涼しくて、暖かくて、お湯もたっぷり出て、防犯もちゃんとしてるのだ。
そのためにはたっぷりお金があるか、たっぷり時間があって、なおかつ自分でDIYなんぞもできる腕とセンスを持っているかどっちかだ。
と、やさぐれついでに心がさもしくなっておるところ。

でも、今後、何年になるか(何ヶ月だったりして・・・)わからないけど娘は住むわけだし、
やさぐれてはいるものの、やはりこの家のことワタクシは気に入っているので、
何かと時間とお金を作っては何とか素敵な暮らしができるような環境を作ろうと思ってはおるのです。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

街結君と太郎君⑭

2016年08月13日 | 野望
ただならぬ様子を察してたママ猿は、めずらしく俺たちをそっとしておいてくれた。
しかし、当分うちに泊めるとなると、事情を少し説明しておこうと思い、太郎が寝てる間に、おおまかな話をしに行く。
ママ猿は泣きながら「どっちもわかるわ。
けんちゃんの気持ちもわかるけど、健ちゃんママの気持ちもわかる。」
けんちゃんというのは太郎のことで、健ちゃんママというのは太郎のママのことで、
太郎はその昔、健太郎って名前で・・・ああもうめんどくさい、とにかく太郎と太郎のママのことだ。
そして「二人でおばあちゃんちに行ってきなよ」と言った。
え?九州の?
「気分転換したほうがいいよ、なんだかんだずっと母子ふたりべったりだったんだからね。
けんちゃんも、健ちゃんママも、お互い少し離れてみて、頭を冷やして、これからのこと考えればいいんじゃない?
まだ、年末には少し間があるから飛行機のチケットもとれるでしょ。
けんちゃんが起きたら、話してみたら。
おばあちゃんはまちゆいに会いたがってるから喜ぶだろうし、健ちゃんママにはママから話しとくよ。
あなたたち、背格好も同じくらいだからあなたの洋服を貸したげなさい。
ま、あっちに着いたらおばあちゃんがこれでもかこれでもかって洋服くらい買ってくれるだろうけどね。」

ママ猿があっという間に手配してくれて、次の日の最終便でオレたちは九州へ飛んだ。
なんで最終便かと言うと、太郎がどうしても一回うちに戻って準備をすると言って聞かなかったのだ。
「まちゆいの服のセンスはまだまだだからな。
まちゅママがジャニーズを意識して買ったようなカワイイ系の服しかないだろ。
このスタイリッシュな俺にはちょっとなあ。」
ふん!勝手にしろ。
遅れるなよ。
遅れたら俺一人で行くからな・・・って、俺一人で行く意味あるのか?
なんてことを考えながら搭乗口近くのソファに座ってたら、相変わらず真っ青な顔をした太郎が駆け込んできた。
俺にスーツケースを転がして、そのままトイレへ。
電車でこの酔いっぷり。これから「生まれて初めて乗る」という飛行機では一体どうなるんだろうか。



街結君と太郎君①
街結君と太郎君②
街結君と太郎君③
街結君と太郎君④
街結君と太郎君⑤
街結君と太郎君⑥
街結君と太郎君⑦
街結君と太郎君⑧
街結君と太郎君⑨
街結君と太郎君⑩
街結君と太郎君⑪
街結君と太郎君
街結君と太郎君⑬http://blog.goo.ne.jp/papatoyobanaide/e/674fd2bfe7d0fb8041776148342f1c16?fm=rss
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

街結君と太郎君⑬

2016年08月12日 | 野望
太郎の顔色が悪いのは電車に酔ったせいなのか、
それとも千春さんのせいなのか。
俺の部屋に通すと、太郎は堰を切ったようにしゃべりだした。
「まちゆいたちが帰った後、何の話が始まったと思う?
交際宣言だぜ。かあちゃんと荒木さん。
俺は、何も、マスターとかあちゃんが結婚すればいいのになんて子どもみたいなことは言わないよ。
ただ、俺は、マスターのことが好きだ。
本当のおやじよりも、マスターのことが好きだし、実際おやじのように思ってる。
かあちゃんだって、マスターのこと頼りにしてる。
兄妹みたいなんだよねえなんて言ってたこともあるから、マスターの感情とは少し違うかもしれないけど、
でも、マスターはそれでいいって言ってたんだ。
そばで、オレたち親子を見守っていたいって言ってくれてたんだ。
オレ、スマートでバイトしてるだろ。
はじめのうち、オレはバイト代いらないって言ったんだ。
飯食わせてもらって、かあちゃんが帰ってくる時間までスマートにおいてもらってるんだから、
コーヒー運ぶくらい当たり前だって。
そしたらマスター、勝手に俺の口座を作って、毎月バイト代を振り込んでるんだ。
中一の7月からず~っと今まで。
中三の秋くらいだったかな、その通帳見せられてびっくりしたよ。
3百万くらい入ってるんだよ。
どんな計算したらこんなすごいことになるんだって聞いたら、
中学生だから時給500円だって言うんだ。
で、夕方の4時から12時までのうち、晩飯食う時間1時間引いて7時間。
スマートって年中無休だろ、30日で計算すれば年間100万越えるだろって。
そんで、なんで今、通帳を見せるかって言うと、今度高校受験だろって。
もし、お前が行きたい高校があって、でもそこが私立とかで金が掛かるからあきらめようとしてるんだったら、
この金があるってことを思い出せって。
これはお前が稼いだお前の金なんだからなって。
高校は碁石場高校に決めてるって言ったら、じゃあ、大学を受ける時、また思い出せって。
高校生になったら時給800円にしてやるからなって。
中央大学の法学部に行きたいって思ったのも、マスターと一緒にいるうちに思いはじめたことなんだ。
マスターが『弁護士ってかっこいいよなあ』って、すんごい褒めるんだよ。
マスターんち、資産家だから結構もめ事に巻き込まれることが多いらしくて
その時に、いつも頼む弁護士さんがいるんだ。
石橋さんっていって、たまにスマートにも来る。
そんでもって、うちのかあちゃんたちの離婚の時も、その石橋さんに頼んだら
あっという間に、かたを付けてくれたらしくて、
『俺は何にもしてあげられなくてオロオロするだけだったけど、
石橋さんはあっというまに千春ちゃんの笑顔を取り戻してくれたよ。
さすがに、あの時は、俺、もっと勉強して弁護士になれば良かったって思ったよ。』って、
子どもが将来の夢語るみたいにうっとり言うんだよ。
そのうち、俺も洗脳されてきてさ、弁護士になろうと思いはじめて・・・
そしたらマスターが『弁護士になるなら中大の法学部だ』って。
石橋さんがそうらしいんだ。
『金なら大丈夫だ。計算したら、高二までで7百万くらいはバイト代溜まってるはずだ。何も遠慮はいらん。太郎が働いた金だ』って。
俺、バイト代なんかいらないって言ってたくせに、すっかりその気になってたよ。
金の心配はいらない、あとは俺が勉強しさえすればいいんだなって。
純粋にマスターの気持ちを考える部分と、
もし通帳の金を使えなくなるってことは、大学、あきらめなきゃいけないってことか?っていうなんつうかヨコシマ?な気持ちとか、
かあちゃんと荒木さんに腹が立つ気持ちとか
かあちゃんの恋愛を素直に認めてあげられない自分の小ささとか
もう、頭がぐちゃぐちゃだよ。」
それで、スマートを飛び出して、荷物をまとめて電車に乗ったのか。
って、それ、夕べの話だろ?
どこに泊まったんだよって聞くと
「夕べ、スッゲー食べたじゃん。そんで興奮してたせいか、いつもよりさらに電車酔いがひどくてさ、
何度か降りて休憩しては、また乗って・・・を繰り返して乗り換えの駅まで行ったら、
最終電車に間に合わなかったんだ。
電車って、一晩中走ってるわけじゃないんだな。
初めて知ったよ。
ちょっとそこで冷静さを取り戻してさ、なんだよ、もう夜中じゃん!って。
今頃まちゆいんち行っても、もう寝てるなあって思ったから、てくてく歩いてた。
俺の『絶対土地勘』で、たぶんまちゆいんちはこっちだなって方向に歩いたらちゃんとついたよ。」
そして、太郎は、一方的に一人でしゃべりまくってたかと思うと、ちょっと寝ると言い、
俺のベッドにもぐり込んで寝てしまった。


街結君と太郎君①
街結君と太郎君②
街結君と太郎君③
街結君と太郎君④
街結君と太郎君⑤
街結君と太郎君⑥
街結君と太郎君⑦
街結君と太郎君⑧
街結君と太郎君⑨
街結君と太郎君⑩
街結君と太郎君⑪
街結君と太郎君
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする