経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-04-22 08:01:41 | SF
第3章  経 済 が な い 世 界 

≪29≫ ロボット博士 = 広大な歴史博物館を歩き回ったものだから、少々くたびれた。まだ明るさが残っている前庭に出ると、冷たい空気が心地いい。ショッピー館長は71歳のはずだが、平気な顔をしている。と、そのときラフマが館長に何かささやき、館長はすぐ反応した。マーヤが「誰かを見付けたようですね」と説明してくれる。

「ラフマがいい人を見付けてくれました。リストン博士と言って、ロボット工学の第一人者です。こっちに来るよう頼みましたから、しばらく待つことにしましょう」とショッピー館長。おそらく、その人は100メートル以上も先にいたのだろう。そんな遠くにいる人も、ロボットは見付けてしまうんだ。感心していると、リストン博士がやはりロボットを連れて飄然と現われた。

背は低く丸顔、頭はツルツルで白い髭を長く伸ばしている。見たところ風采は上がらない。だが胸のプレートは「45」だから、まだ若い。庭の片隅にある喫茶店のようなところに陣取ると、さっそく喋り出した。

「あんたのことは、賢人会のウラノス議長から聞いているよ。さっきから私の頭を観察しているようだが、この方が洗うのにも楽だからね。あっははあ。病院に行けば、髪の毛なんかすぐに生やしてもらえる。それほど、この国の医療技術は発達しているんじゃ。

実はその医学の発達こそが、ロボットの進化に最も貢献したんだ。たとえば人間の皮膚が損傷したときには、シリコンとコラーゲンなどを合成して造った人工の皮膚で修復する。この素材をロボットの全身に張り付けることは簡単だった」

――それでロボットが、見た目にも人間らしくなったんですね。

「それだけではないよ。ロボットの皮膚の内側に毛細血管のような管を張り巡らせ、体内に設置したポンプから暖かい液体を流すことで、触ったときも人間と同じようになる。ここにいるラフマやマーヤの手足も、人間と同じ感触だろう。
ただ頭脳や神経系の圧縮技術が進まなければ、ロボットの人間化は困難だった。最初のうちロボットの頭脳や神経は、頭のてっぺんから足のつま先までぎっしり詰められていたんだ。それが圧縮技術の進歩で、いまではほぼ頭部だけに集中している。これによって心臓のようなポンプを体内に設置する余裕ができた」

――もの凄い技術の進歩ですね。そのうえ脳内の電子構造に、人間のDNAまで組み込むことに成功した。
「その通り。そしてロボットたちは、自分で知識を吸収し、自分で思考や感情を進化させることができる水準に到達したわけだ」

――となると、ロボットの弱点は、人間によって電源を切られることだけですか?

「いやあ、そうは言えないんだ。ロボットは将来、自分で体内に太陽光を取り込み発電するようになる可能性がある、と私はにらんでいるんじゃ」

                              (続きは来週日曜日)

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