経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

トランプ貿易政策の 正体

2018-03-15 08:10:10 | アメリカ
◇ 安倍首相の“お土産”はなに? = トランプ大統領は鉄鋼に25%、アルミに10%の輸入関税をかける文書に署名。23日には発効することになった。たとえば鉄鋼の場合、アメリカで消費された輸入品の割合は00年の約2割が11年には3割に増大した。このまま放置すると、アメリカの安全保障に影響するというのが輸入制限の理由である。突然のこの発表に全世界は驚き、報復措置の応酬が心配された。

ところがアメリカ政府は、その直後に「カナダとメキシコは除外」と発表。オーストラリアも対象外としたようだ。また「その他の国も交渉の余地がある」ともコメントしている。カナダとメキシコを除いた理由は、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを進めているため。NAFTAはトランプ大統領が「再交渉に応じなければ脱退する」と脅して、むりやり再交渉の場に引きづり込んだという経緯がある。

アメリカがNAFTAの再交渉で、何を要求しているかは全く不明だ。しかし要求を通すために、関税問題を持ち出しているだろうことは想像に難くない。ここから類推すれば、EUや日本に対しても関税免除と引き換えに、新たな要求をしてくる可能性は十分に考えられる。日本については、農畜産物と自動車の輸入拡大、軍事装備品の購入増などが中核だろう。

そうしたなかで安倍首相は4月上旬にも訪米し、トランプ大統領と会談する予定だ。しかし、こんどはゴルフ道具を手土産に「よろしく」というわけにはいかない。と言って「農畜産物や兵器の購入増加」を、大っぴらにするのも不自然だ。考えられるのは、近く始まる日米間の通商交渉で“何か”を譲歩するという裏約束か。安倍さんの外交能力が、まともに問われることになりそうだ。

      ≪14日の日経平均 = 下げ -190.81円≫

      ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ


回復基調は 続いているのか?

2018-03-14 05:33:28 | 景気
◇ 企業予測調査にみえた翳り = 内閣府と財務省は12日、1-3月期の法人企業景気予測調査を発表した。それによると、大企業の景況感指数は3.3で、前回10-12月期の6.2から大きく縮小している。特に製造業は9.7から2.9に低下した。中小企業の指数も、前回のマイナス2.3から今回はマイナス9.9に悪化した。しかし財務省は季節的な影響もあるので「緩やかな回復基調が続いている」という基調判断を変えていない。

法人企業景気予測調査というのは財務省と内閣府が共同で、四半期ごとに実施している大規模な調査。今回は2月15日を基準日として、全国1万2800社から回答を得た。景況感指数は、前回時点に比べて「景況が上昇した」と答えた企業の構成比から「下降した」と答えた企業の構成比を差し引いた数字。

この調査では、4-6月期の見通しについても聞いている。その結果は、大企業が0.3へとさらに悪化する見込み。特に製造業は、マイナス1.5にまで低下する。たしかに調査が実施された時期は、アメリカの長期金利上昇で株価が大幅に下落した直後。企業の経営者も、将来の見通しに不安を抱いたのかもしれない。

だが、それにしても大企業・製造業の見通しがマイナスにまで低下するのはやや異常。財務省は「なぜ回復基調が続いていると判断するのか」の理由を、もっと丁寧に説明する必要があるのではないか。そこのところを省略すると、多くの人たちがこの調査から不安を読み取ってしまう心配がある。

      ≪13日の日経平均 = 上げ +144.07円≫

      ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ


6回目の利上げは 確実に : FRB

2018-03-13 07:53:03 | アメリカ
◇ 強すぎるアメリカの雇用市場 = アメリカ労働省が発表した2月の雇用統計は、農業を除く雇用者の増加数が多すぎて関係者を驚かせた。雇用者の増加数は、なんと31万3000人。事前予想の20万人をはるかに上回った。建設、製造、小売りなど広範な部門で増加しており、アメリカの景気拡大が予想以上に強いことを示している。失業率も4.1%で、17年ぶりの低水準。雇用者の平均時給は前年比2.6%の増加だった。

アメリカの中央銀行であるFRBは、今月20-21日に金融政策を決定するFOMC(公開市場委員会)を開く。こんなに強い雇用統計が出たため、ここで政策金利の引き上げが決まることが確定的になった。FRBは15年末から5回にわたって金利を引き上げてきており、今回引き上げれば6回目。金利は年1.75%の水準になる。

市場関係者は、むしろ“その後”に関心を寄せ始めた。これまでのFRBの方針は「18年中に3回の利上げ」だったが、これが「4回」に増えるのかどうか。トランプ大統領の大規模減税とインフラ投資の影響で、物価にも上昇圧力がかかってきた。平均時給の伸びが鈍かったため「3回説」も根強いが、いま市場では「4回説」が「3回説」を上回りつつあるようだ。

年4回の引き上げ予想が定着すると、市中の長期金利は確実に3%を上回るだろう。仮にそうなると、債券投資の方が株式投資よりも有利になる可能性が出てくる。またアメリカの債券市場を目指して、新興国から資金が移動し始めるかもしれない。来週のFOMCが近づくにつれて、長期金利の動きから目を離せない。

      ≪12日の日経平均 = 上げ +354.83円≫

      ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ


今週のポイント

2018-03-12 07:57:13 | 株価
◇ 消化し切れなかった市場 = トランプ大統領は先週8日「北朝鮮の金正恩労働党委員長と5月までに会談する」と発表。世界に衝撃を与えた。同じ日、トランプ大統領は鉄鋼・アルミに輸入関税をかける文書に署名。ただし「カナダとメキシコは除外。その他の国も協議に応じる」と言明した。朝鮮半島に静けさが戻り、アメリカの保護貿易に緩和の糸口が見える。株式市場にとっては、いずれも大きな好材料だった。

だが市場の受け止め方は限定的だった。この2つのニュースを受けて、9日の日経平均は一時500円以上も上昇したが、終り値は101円の値上がり。ダウ平均も441ドルの上昇にとどまっている。米朝首脳会談では「また騙されるのでは」という疑問の影が付きまとう。関税協議でも「トランプ大統領は新しい要求を交渉材料にするのでは」という懸念が見え透いた。市場はこうした影を意識し、2つのニュースを十分に消化できなかったようだ。

結局、先週はダウ平均が798ドルの値上がり。日経平均は288円の上昇だった。こうした影は長く付きまといそうだから、今週も市場の消化難は続くだろう。ただ朝鮮半島の緊張緩和は、当面の円相場を下落させる公算が大きい。そして株式市場の注目点は、企業の収益動向。特に18年度の収益見通しへと移動して行く。

今週は12日に、1-3月期の法人企業景気予測統計。13日に、2月の企業物価と1月の第3次産業活動指数。14日に、1月の機械受注。アメリカでは13日に、2月の消費者物価。14日に、2月の小売り売上高と生産者物価。16日に、2月の工業生産と住宅着工戸数、3月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、2月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

      ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-03-11 08:24:32 | SF
第3章  経 済 が な い 世 界 

≪23≫ ボランティア = 銀色のローブに身を包んだショッピー館長とロボットのラフマは、ぴったり身を寄せてテーブルの向こう側に座っている。こちら側のぼくとマーヤの間は、やや離れている。距離を詰めようかと迷ったが、思いとどまった。

――でも館長、働いている人の給料はどうしているのですか。病院のブルトン院長や科学大学院のメンデール教授、それに貴女も。

「この国では約3割の人たちが、たしかに働いています。でも、みんな報酬など貰っていない、いわゆるボランティアですよ。正確に言えば、お医者さんや大学の先生、大工場の責任者などは決まった仕事を毎日こなしています。ほかに道路の清掃をしたり、子どもの勉強をみたり。こういう人たちは不定期なボランティア活動をしています。

みんな欲しいモノは何でも手に入りますから、報酬などは必要ないのです。自分で世の中のためになることをしたい。そう考えて仕事をしているんです。子どものときからやりたいことを決めて、専門コースで知識や技術を身に着ける人も少なくありません。医師や学校の先生、ロボット工学の技術者などですね。だから、おカネは必要ないんです。お解りでしょうか」

――ということは、約7割の人が遊んで暮らしている?
「そう言えないこともありません。しかし大抵の人は、趣味に没頭しています。たとえば鳥や虫や植物の研究。大きな望遠鏡で夜空の星を観察したり、なかにはカビの培養に精を出したり。その成果を発表することに、生きがいを感じているわけです。
ところで申し訳ありませんが、きょうはこれから子どもたちに歴史の話をしなければなりません。明日また来ていただければ、ゆっくり館内をご案内しましょう」

最初から気が付いていたが、ショッピー館長とラフマの胸には≪29≫のプレートが。だから2人とも71歳ということになるが、とても若々しい。2人が地球にいてテレビのニュース・キャスターになったら、大評判をとるだろうなんて考えてしまった。

その晩、マーヤとこんな話をした。
――あの2人は、どういう関係なんだ。すごく親しそうだったね。
「私も女性とロボットのラブラブ関係を見たのは初めてです。男性とロボットが兄妹か夫婦のように親しくなっているのは、ときどき見かけるのですが。そういう人たちが、正式に結婚できることを望んでいるのは間違いないでしょう。賢人会の議論は、どうなっているのでしょうね」

――ショッピーさんとラフマも、そうかしら?
「ご自分で、お聞きになってみたらいかが」

それはちょっと遠慮しておこうと思った。同時に「マーヤはどうなんだ」という質問も、呑み込んでしまった。

                           (続きは来週日曜日)


Zenback

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