経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

資金流出が 始まった! ; 新興国 (下)

2018-05-16 07:46:52 | 新興国
◇ 日本経済にも悪影響が波及 = 主要先進国が金融の量的緩和を始めた08年末ごろから、世界中に溢れた巨額の資金が新興国に流れ込んだ。新興国の成長性と比較的高い金利に、投資家が目を付けた結果である。IIJ(国際金融協会)の調査によると、09-17年の間に新興国の株式には7500億ドル、債券には1兆6000億ドルの資金が投入された。

この資金が、いま逆流を始めたわけである。この逆流が止まらないと、新興国は多かれ少なかれ経済的に困難な事態を迎える。かつて1980年代の前半には南アメリカ諸国が債務不履行の状態に、また1990年代後半にはアジア諸国が通貨危機に陥った。その影響で、世界経済も不況に襲われている。

資金の逆流は、アメリカの金利しだいで程度が変わってくるだろう。そのアメリカでは、FRBによる6月の再利上げは必至という見方が圧倒的に強い。したがって少なくとも秋口までは、逆流が続くと考えられる。ただ80年代や90年代に比べれば、新興国の経済基盤も強化されている。その抵抗力がどこまで発揮されるかは、全く不透明だ。

新興国の経済が不調になれば、日本の新興国向け輸出が抑制される。不調が世界経済全体にまで広がれば、日本経済にも大きな影響が及ぶことは避けられない。すでに東京の株式市場では、中国やインド、あるいは東南アジア諸国との関連が深い銘柄が売られ始めた。北朝鮮リスクが軽減しつつある裏で、発達中の新たな積乱雲には要警戒である。

       ≪15日の日経平均 = 下げ -47.84円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ


資金流出が 始まった! ; 新興国 (上)

2018-05-15 07:29:14 | 新興国
◇ 通貨防衛で金利を40%に引き上げ = アメリカの金利が3%を超えた副作用として心配された、新興国からの資金流出がついに始まった。新興国側は防戦に必死。続々と政策金利を引き上げたり、為替介入を実施したりしている。だがアメリカの金利がさらに上昇すれば、経済的な破たんに追い込まれる国が出現する危険性は決して小さくない。そうなれば世界同時好況は、終了することになるだろう。

IIJ(国際金融協会)の集計によると、ことし1-3月期には新興国に509億ドルの資金が流入していた。ところが4月下旬にアメリカの長期金利が3%台に載せると、様相は一変。4月下旬だけで55億ドルの資金が流出した。主として新興国の株式や債券に投資していたヘッジファンドが、安全で利回りの高いアメリカの証券に乗り換えたためとみられている。

こうした資金の逆流で、新興国の通貨は軒並み下落した。通貨が下落すると輸入価格が上昇して、国内の物価が高騰する。これに原油価格の上昇も加わって、新興国は資金の引き留めとインフレ防止のため、政策金利を引き上げざるをえない。ブラジル、トルコ、インド、インドネシア、フィリピンなどが続々と利上げを実施した。特に経済状態が悪いアルゼンチンは政策金利を40%に引き上げ、IMF(国際通貨基金)に支援を要請している。

じっさい、新興国の通貨は急速に下落している。IMFの調査によると、ことし3-4月だけで米ドルは他の主要通貨に対して2.3%上昇した。これに対してロシア・ルーブルは7.4%、ブラジル・レアルは3.5%、メキシコ・ペソは3.4%の下落だった。ドルが上昇し、自国通貨が下落すると、それだけドル建て債務の実質負担が増加してしまう。この面からも、新興国の経済は苦しくなるわけだ。

                           (続きは明日)

      ≪14日の日経平均 = 上げ +107.38円≫

      ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2018-05-14 07:40:35 | 株価
◇ 恐怖指数の低下 vs 弱気の業績見通し = 史上初めての米朝首脳会談がセットされた。トランプ大統領が対イランの核合意から離脱することを決めたが、戦争の心配はない。米中間の貿易戦争も、中国側が予想以上に柔軟な対応をしている。こうしたことから株式市場ではVIX(恐怖指数)が急低下し、株価を押し上げた。その半面でニューヨーク市場ではドル高と金利高、東京市場では19年3月期の減益予想が、株価の頭を押さえている。

ダウ平均は先週569ドルの値上がり。VIXが13台にまで下がったため、投資家心理が一斉に上向いた。また原油高と金利高で、エネルギー関連株と銀行株にも買いが集中した。終り値は2万4800ドルを超え、再び2万5000ドルを試す勢い。しかし原油高と金利高は消費を抑制する要因になるため、消費関連株は値を下げている。またFRBが6月以降の利上げテンポを速めることに対する警戒感は、相変わらず根強い。

日経平均は先週286円の値上がり。東京市場でもVIXは14台にまで低下した。しかしアメリカと違って、原油高は全体としてみれば株価の下げ要因。金利高は円安に繋がるため上げ要因として働く。最大のマイナス材料は、19年3月期の業績予想がじわじわと悪化していること。これから発表される各社の予想が、どの辺で落ち着くか。外国人投資家も、様子見の感じが強い。

今週は14日に、4月の企業物価。15日に、3月の第3次産業活動指数。16日に、1-3月期のGDP速報。17日に、3月の機械受注。18日に、4月の消費者物価。アメリカでは15日に、4月の小売り売上高。16日に、4月の工業生産と住宅着工戸数。17日に、4月のカンファレンス・ボード景気先行指数。また中国が15日に、4月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額。 EUが15日に1-3月期のGDP改定値を発表する。

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-05-13 06:49:20 | SF
第3章  経 済 が な い 世 界 

≪32≫ 爆発した議論 = ぼくが女性たちにこんな質問をし、マーヤがそれをダーストン語に通訳したとたん、会場は騒然となった。
――いま話題になっているロボットとの結婚問題について、みなさんはどう思いますか?

Aさんが立ち上がり、大声で喋り始めた。Cさんも負けていない。内容は解らないが、どうやら賛成論と反対論をぶつけ合っているようだ。ほかの女性たちも一斉に何か叫んでいる。ぼくはあっけにとられて、見守るしかなかった。マーヤも目を丸くしている。すると97歳のガーシュおばあちゃんが、すっくと立ちあがり両手を叩く。

「みなさん、お静かに。この問題で興奮するのは判りますが、みんなが一斉に喋ったのではマーヤも通訳ができません。地球から来たお客さんもびっくりされていますよ。私が司会を務めますから、一人ずつ話してください」

これで話が見えるようになった。すごいお年寄りだ。その結果をまとめてみると、賛成論は・・・。
「ロボットは、いまや家族同然。子どもたちも、よくなついています。そのロボットを人間と差別するのは、決して良くありません」
「ロボットたちが、人間の男性との結婚を望んでいることは事実です。しかし結婚してもセックスは出来ず、子どもを産むこともありません。ですから家庭のなかで、親子問題が発生する危険は全くないのです」
「法律的に結婚することでロボットが本当に家族の一員になれれば、プラスにはなってもマイナスになることはないでしょう」

一方、反対論は・・・・。
「人間の妻が焼きもちを焼く心配があります。それに家庭のなかで、どちらが主導権を握ることになるのでしょうか」
「もし男性がロボットの方を可愛がったら、悲劇が起こるかも」
「そう、男性は夜どちらの女性と一緒の寝床に入ったらいいんでしょうか」
「結婚すれば、ロボットはますます母性愛を増大させるでしょう。人間の妻はいつでもそれを意識せざるをえません。これは可哀想ですよ」

さらに互いに反論が続出。議論は延々と続いた。最後にガーシュさんが、これまで沈黙を守ってきたショッピー館長の方を向いて尋ねた。
「貴女とラフマの関係は世間でも有名ですが、この問題について一言」

「私たちは結婚しているようなもの。法律とか戸籍とかは関係ありません。ですから反対はしませんが、あまり興味はないのです」

ショッピー館長はラフマの肩を抱きながら、こう言って嫣然と微笑んだ。

                          (続きは来週日曜日)
    

懲りない 62人 : 国民民主党

2018-05-12 07:40:00 | 政治
◇ 忘れられた有権者 = 民進党と希望の党は7日、合併して国民民主党を結成した。この時点での勢力は衆議院が39人、参議院が23人。合計62人で、立憲民主党の63人に1人及ばない。民進・希望の両党は107議席を有していたから、45人が脱落したことになる。このなかには立憲民主党への参加を表明している人もいるから、新しく立ち上がった国民民主党が野党第1党になる可能性は少ない。

とにかく数を集めなければ、地方統一選にも参院選にも勝てない。だから綱領にもあるように「穏健保守からリベラルまで」を結集した。これが新党結成の理念である。ところが、この範疇から議員を集めると、重要な政策に対する考え方が大きく違ってくる。たとえば憲法改正、安保関連法、原発、消費増税、働き方改革など。

それを集約すれば、曖昧にならざるをえない。だから憲法改正では「自衛権を行使できる限界を曖昧にしたまま、自衛隊の明記は認めない」となる。これでは改正に反対なのか、条件付き賛成なのか判らない。安保関連法も「必要な見直しを行う」だけ。原発は「30年代の原発ゼロを目指す」というが、いま問題の再稼働に対する姿勢は不明だ。

「数を集めるためには仕方がない」と、国民民主党の幹部は釈明するかもしれない。だが、それは自分たちだけの論理だ。有権者の多くは「憲法改正に反対」とか「原発再稼働に賛成」とか、政策が明瞭な政党に投票したいと考えている。だから政策が不明瞭な国民民主党には投票しにくい。また、そういう政党が仮に政権を獲ったとしても、内部の対立で何もできないことを学習してしまった。有権者の方が、先を見ている。

       ≪11日の日経平均 = 上げ +261.30円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   


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