あまり知られていませんが、戦後、主要農産物であるコメや大豆、麦など、野菜を
除いた種子の安定的生産及び普及を促進するため、これらの種子の生産について審査
その他の措置を行う目的から、主要農産物種子法(通称 種子法)が制定されたのです。
サンフランシスコ講和条約発効の翌月、1952年(昭和27年)5月に制定されました。
その法律が、2018年(平成30年)に突然、時の農林部会長(小泉進次郎)によって、
この種子法は廃止されました。
(ネット画像より)
しかし、このことにより種子を公的に守る政策が放棄されるとの見方から、いくつ
かの懸念が想定され、①主要農作物の種子の安定生産・安定供給に支障が出るのでは
ないか、②一部企業による種子開発や品種の独占、③稲などの種子が多国籍企業に
独占される、④多国籍企業に日本の食料を支配されることにつながり、これらの企業
の世界食料支配戦略に加担することになる、⑤食料主権が脅かされかねない、⑥地域
の種子の品質向上や安定供給のシステムが崩れかねない、⑦種子の価格上昇など深刻
になる可能性も考えられるのです。
そして、さらに今般、政府はこの3月3日には(今度は)種苗法改正案を閣議決定し、
今国会に提出して 2021年4月の施行を目指しているという。
この種苗法改正でも問題となるポイントが指摘されています。「種苗の知的財産権」
は強化される方向ですが、一方で農業者が収穫物の一部を次期作付け用に種苗として
使用する、いわゆる「自家採種」する「自家増殖の権利」が制限される可能性がある
ということなんですね。
種子法廃止については、都道府県や農家への説明もなく、唐突に示されたことに
対する批判や戸惑いの声もあり、市町村など地方議会から国会に提出された意見書は
50件を超えるそうですし、いままた、コロナ問題のさなかに、種苗法も改正しようと
しているのです。
このような問題は普段あまり考えたこともありませんが、いわゆる多国籍企業
(モンサントなど)にいつの間にか、コメや麦などの種子の権利が移り、挙句の果て
には農薬などのセットで食を脅かされる羽目にならなければ・・との心配が十分考え
られるのです。
(ビジネスITより)
このことについて、今少し以下にネットなどを参考にしてまとめてみたいと思いま
した。
種子法は、先にもありますように もともと、コメや大豆、麦といった主要作物に
ついて、優良な種子の安定的な生産と普及を“国が果たすべき役割”と定めた法律で
あり、都道府県では普及すべき優良品種(奨励品種)の選定や、その原原種および
原種・一般種子の生産と安定供給に責任を持つことが定められている、つまり守られ
てきたのです。
(ネット画像より)
それが、2016年政府の規制改革推進会議で課題として取り上げられ、小泉進次郎
農林部会長(当時)は、全農に対して厳しい指摘を繰り返したとあり、わずか半年の
議論で、翌年「主要農作物種子法を廃止する法律」が成立し、2018年(平成30年)
4月1日をもって廃止されることが決まったのです。種子法の廃止は、小泉氏の実績と
なった とあります。
政府の説明は、種子法は「既に役割を終えた」「国際競争力を持つために民間との
連携が必要」としており、廃止には種子生産に民間企業の参入を促す狙いがあり、
農政の大転換が行われたのです。
具体的な問題として、たとえば、種子法の廃止は、都道府県における育種のための
予算確保の法的根拠がなくなり、都道府県の財政状況によっては種子の生産量が減り、
安定的な供給ができなくなる懸念が生じ、「あきたこまち」などの奨励品種のコメが
やがてなくなるかもしれないと。 さらに、特定の民間企業の寡占状態となれば、
種子を含む資材価格は高騰することになり、あるいは、海外資本の企業の参入を許せば
遺伝子組み換えの農作物が食卓に並ぶことにもなるなど法律廃止を懸念する声が根強
く残っているそうです。
種子法廃止が可決されたとき、野党提案の付帯事項が採択され、これにより何とか
守ろうとの策も、「種苗法」が今国会で改正の流れにありますから、アレアレ、ひょ
っとしてガードがなくなってしまうのではないかということです。
付帯事項とは、以下の4項目です。
- 種子の品質確保のため、種苗法に基づき、適切な基準を定め、運用する
- 都道府県の取り組みの財源となる地方交付税を確保し、都道府県の財政部局を
ふくめ周知徹底に努める - 都道府県の育種素材を民間に提供するなど連携にあたっては種子の海外流出を防ぐ
- 「特定の事業者」が種子を独占し弊害が生じないよう努める
種子法がないということは、「野菜」について考えてみればよくわかります。
種子法は、コメや麦、大豆に対する法律でしたから、もともと野菜については規定が
ないのですね。
その野菜の種子生産は現在、民間企業が主体で、世界に圧倒的なシェアをもつ多国籍
企業が多くの野菜の種子を握っているのが現状で、国内の公共機関(と種子法)に
守られたコメ、麦、大豆と違い、海外産の種子で生産された野菜が、スーパーなどで
販売されているのです。
かつて野菜の種子はすべて国産だった時代もありますが、現在は 9割が海外産の
ものになっているそうです。 つまり、日本の種苗メーカーが海外で生産した野菜の
種子を輸入して国内の生産に用いているということなんですね。
種苗法改正の問題点は、冒頭にも述べていますが、最大のポイントは、農家の自家
増殖自体が原則禁止になるのではという点ですね。つまり、農家が自前の種子を使う
「自家増殖権利」が制限される危機感があるのです。
実際、農水省が定める「自家増殖禁止の品目」は、2016年の82種から2019年には
387種まで急拡大しているそうです。 さらに登録品種が全くない野菜(ニンジン・
ホウレンソウ)や果樹も対象に含まれるようになっているといいます。
にわか勉強で分かりずらいですが、形よく病気に強い、成長の良い しかし、農薬
をバンバン使用した作物ばかりが出回り、ふくよかな味わい、本来の味を楽しむ食材
がなくなり、食の文化の一面が失われてゆくのかもしれません。さらに、農業の原点
である種子(タネ)が、多国籍企業に牛耳られる運命に流れているのかもしれません。
「現代農業」4月号(農文協)の見出しに、『種苗法改正に異議あり』の項目があり
ます。
2017年にアップされた動画です。