園芸友の会の例会は、屋外に出て植物園などを見学する屋外例会と、ネットを活用
したサイバー例会の2種を取り混ぜて、年に6回ほど開催されています。 この会は、
会社OBで作る趣味のサークルの一つで、1976年にその第1回が開催されてから、すでに
50年近く続くサークルですが、年々会員が減少し寂しくなってきています。
一昨日(1/24金)午後2時から、サイバーサロン第20回が開催されました。ネットを
活用した例会は、コロナ以降でそれまでは、品川にある教養室での実施でしたが、ネッ
トの簡便な味を知った以降は教室での会合はすることなく、そして、遠隔地からの参加
が可能である利点もありもっぱらネット例会となっています。
今回のメンバー(関東4、札幌、福岡、大阪)
会員からの発表が3件ありました。
1、栽培中の野菜・果樹のあれこれ
2、七福神巡りとエケベリア(七福神)
3、農業分野の温暖化対策
今年最初の例会なので、簡単な挨拶の後、すぐに発表に入りました。
1、栽培中の野菜・果樹のあれこれ は、米作を中心に長年取り組んでいる会員から、
お米の収穫後に野菜などを栽培し、今回はそれらの最近の状況の報告がありました。
〇再生二期作 お米の収穫後、野菜作りをしないで稲株をそのままにした田んぼでは、
稲刈り後の切り株から再度芽が出て青々と成長し、稲穂が出てきます。従来の二期作と
違って、二期作目は田植えが不要となり、作業量は大幅に減少しますが、収穫量や品質
の点から事業として成立するかどうか疑問は残ります。お米の高級志向にある現在コス
トパーフォーマンスの問題になります。自然に発生しているこのような現象は、昨今の
高温障害といえるかもしれません。
〇ジャンボニンニク 普通ニンニクといえば、6~8片の半月型をした粒が集まっていま
すが、このジャンボニンニクは、2つのタイプがあり、*単に大きい一つ玉のもの、
*玉ねぎ型の円形で、数片に分かれないものがあります。後者には、周りに数個の子供
が出来るので、その硬い皮を剥いて植えています。
ジャンボ ニンニク ポットに植え付け
○ジャガイモは3種(とうや、きたあかり、メークイン)を栽培している。これらは5月
ころの収穫となりますが、続く田植えとのタイミングが毎年の苦心のしどころです。
○エンドウ は2段階の時間差収穫となるように配慮しています。春先の早期栽培では、
さやを食するキヌサヤやスナップエンドウが適しており、実を食すものは少し遅らせた
方が良い。 ソラマメは今年、肥料のやりすぎか、根元に近すぎたかでどうやら失敗
かもしれない。
〇天王寺カブラ 地域特産のカブですが、これには逸話があり、その紹介がありました。
「江戸時代、野沢村の坊さんが、四天王寺に修行に来て、天王寺蕪の種を持って帰り
育てると、蕪が大きくならず、葉が大きくなった・・」それが『野沢菜』なのです。
温泉の水を使って漬物として、特産になりました。天王寺蕪と野沢菜は同じ品種なん
ですね。四天王寺の境内に、そのいわれの石碑が建っているそうです。
天王寺蕪
これらの路地物の他、ハウスでは、種々の果樹の栽培を楽しんでおられ、そのいく
つかの紹介がありました。
〇パッションフルーツ 年に2回花が咲き、果物としての実が2回採れます。3月頃花が
咲き、7月頃紫色に完熟しますが、その時、また花が咲きます。花と実が混在するの
です。9月頃緑の実になりますが、露地(大阪)では、完熟までいかず枯れてしまい
ます。ハウス内では、3月頃に完熟してまた花が咲くのです。
パッションフルーツ
〇グアバ、パイナップル、パパイヤ 加温無しの単なるハウスで、遊びで作っている
という。パイナップルは食したあとの先端の茎、葉を植えて育てますが、収穫まで2年
かかります。グアバはジュースで有名ですが、そのまま食しても同じ味でおいしいそう
です。パパイヤは、ハウス内では斜めに植えています。直立だと背丈が伸びすぎてハウ
スを突き抜けてしまうためだそうです。パパイヤは黄色く熟したものがお馴染みですが、
青いままでは、野菜として調理して食するようです。
パイナップル パパイヤ
関東在の会員からパパイヤの報告がありました。神奈川県秦野の耕作放棄地の畑2百
坪ぐらいの周囲に、2m間隔位で高さ2m程の株が数十本植わっていました。葉は寒さ
のせいか枯れていましたが、果実は15cm位の物が一株に4~5個成っていたのに驚い
たそうです。すべて青い実のパパイヤでした。
青い実のパパイヤ(神奈川県秦野で・・)
2、七福神めぐりとエケベリア(七福神) は、新年に相応しいテーマの報告で、新春
早々1/7、旧東海道の品川宿界隈の『東海七福神』巡りをしたこと、さらに七福神を
調べていくうちに、七福神という和名の多肉植物があることも見つけたとの報告でした。
日本の正月に欠かせない七福神は、福徳を授ける7神仙で①恵比寿(日本)、②大黒天
(インド)、③毘沙門天(インド)、④福禄寿(中国)、⑤寿老人(中国)、⑥布袋(中国)、⑦弁財
天(インド)の七人の神様ですが、その昔、徳川家康が狩野探幽に、宝船に乗った七福神
の絵を描かせ、時の参謀だった天海僧正が七福神信仰を勧めたという逸話が残っている
そうです。江戸時代に全国に普及し、元旦から七草までの間に詣でればその年は七難を
免れ七福を得られる(七難即滅七難即生)とあったそうです。
現在、都内には30か所の七福神めぐりがあるそうですが、今回はその一つ『東海七福
神巡り』で、京浜急行大森海岸駅から徒歩で旧東海道を品川まで4.5㎞、七つの神社を
お参りし、御朱印もいただいた。ルンルン気分でさらに品川から大崎~五反田~目黒迄
足を延ばし、丁度お昼過ぎになり、巡礼恒例のルールにしている『イタリアン』でマル
ゲリータと赤ワインで乾杯して、新春のスタートを切ったとの報告でした。
東海七福神巡り 御朱印
そして面白い発見があったのです。多肉植物に『七福神』と名の付く植物があること
を知り、専門店にて買い求めることになったとか。
エケベリア属の多肉植物の一つである原種「セクンダ」という品種は和名『七福神』
と呼ばれているのです。楕円やへら形の葉が均整のとれた美しいロゼッタ状(厚みの
ある葉が中心から放射状に広がる形)に伸びた多肉植物で、バラのように折り重なった
姿が特徴です。自生地はメキシコの標高2000m以上の溶岩上などに分布し、1838年に
海外の文献で初めて掲載され、日本には明治時代に輸入されたようです。また派生種
「インブリカータ」も「七福神」と呼ばれているそうですが、なぜ「七福神」なのかは
不明です。
エケベリア(七福神)
形状は、丸い幅広の葉を広げ、夏になるとピンク色の壺状の花が咲く。肉厚なグリー
ンの鮮やかな色に、冬は先端部分が紅葉し、春~夏にかけては、黄色とオレンジのグラ
デーションが美しくなるのが特徴で、直径15cmほどになるロゼットを、もこもこと
たくさん実らせることから、縁起が良い園芸名が付され、祝い事によく贈られるとあり
ます。
また、多肉植物は風水と関連付けられ、エケベリアの風水効果は「邪気払い」だそう
です。
葉先が尖っている部分は「悪い気を払う」力があり、葉の丸い部分は「人間関係を
円滑にする」効果があるとされ、運気の入り口である玄関や窓の近くに置いたり、リビ
ングに置けば、エケベリアのやる気を高め成長や発展を促す効果で家族全員の仕事運・
勉強運アップに繋がるとして、発表会員はリビングの窓辺に一鉢置いたそうです。
最後に愛情込めて育てているレモンが昨年に比べて、葉付きが良くなく、果実は6個
と昨年より2個多いが、何となく弱々しい感じがするとの心配から、皆さんから意見を
求められました。樹高に比して鉢が小さい? 根を痛めないように土を替える・・
実が付きすぎている‥などの意見がありました。
愛しのレモン(左は今年、右が昨年)
3、農業分野の温暖化対策 は、地球温暖化対策の農業分野における状況について、
具体的にどのように進められているかネットなどを通じて俯瞰した報告です。
農業分野では、夏の高温(猛暑)が、米の収穫に影響し、品質の低下、収量の減少
などにより品薄、高騰を招いている要因で、とくに、品質低下は、花が咲いてから20日
間の気温が品質を左右するとあり、この期間の気温の高さにより、澱粉が十分蓄えられ
ず白く濁る「白未熟粒」が多く発生することによるとされています。
(注) 米粒にでんぷんが十分に集まったときは胚乳部は透明になり、 集まり方が不十分の場合は
白色 不透明となるが、この胚乳部が白色不透明となる粒を白未熟粒という (日本精米工業会)。
温暖化対策としては、温暖化を助長する温室効果ガス(GHG)の発生を抑える対策
(緩和策)と、温暖化に順応した「高温耐性」品種の改良・育成(対応策)の2面ある。
農水省の昨年(2024年1月)発表の対策方針から抜粋して関連項目を概観すると。
緩和策:・地球温暖化対策推進法 1998年法律第117号 2021年一部改正
・地球温暖化対策計画 2016年5月13日閣議決定 2021年10月22日改定
・農林水産省地球温暖化対策計画 2017年3月14日策定 2021年10月27日改定
対応策:・気候変動適応法 (2018年法律第50号)
・気候変動適応計画 2018年11月27日閣議決定 2021年10月22日改定 2023
年5月30日一部変更
・農林水産省気候変動適応計画 2015年8月6日策定 2023年8月31日最終改定
の取り組みが行われており、緩和策では1998年から、対応策では2015年から具体的
方針が示されてきている。
CO₂排出量の農業分野におけるそれがどの程度か、世界と日本を比較して下図に
め
されています。
(農水省より)
世界では、23%が農業分野であるが、日本のそれは4.4%と少ないが、それでも農業
分野でのCO₂削減対策が種々検討され実施されています。
緩和策では、2013年の日本の全体総排出量 14億800万t-CO₂を、2030年に7億6000
万t-CO₂ に▲46.0%の削減目標であるが、 農水省分野で、このうち▲3.5%を受け
持つとの目標である。その具体的な対策は、以下の通りです。
○施設園芸・農業機械のGHG削減対策(施設園芸の省エネ設備、省エネ農業機械)
省エネ生産管理の徹底、ヒートポンプ・バイオマス利用、排熱利用促進等
○漁船の省エネ対策
○農地土壌に係るGHG削減対策
○森林吸収源対策
○土地土壌吸収源対策
対応策では、
○水稲 白未熟量の発生⇒高温耐性品種の導入(きぬむすめ、つや姫、にこまる等)
○果樹 浮皮、着色不良 ⇒ 植物成長調整剤、反射シート、新品種導入等
○野菜 高温によるトマト着色不良 ⇒ 遮光資材導入、新品種導入等
がとられ、特に米については、今後10年ごとに、現在のコシヒカリを基準に、高温耐性
を0.5度ずつ上げて行く、そして2040年代までに、従来のコシヒカリよりも1~2度高い
耐性を持った品種を開発する必要があるとされている。現在の高温耐性品種の導入率は
15%程度であり、今後さらにスピード感を持って導入率を高める必要があるが、農家に
とっては、栽培方法が異なることによる不安、新品種が消費者にとって受け入れられ
る
かの不安がある・・との指摘がされています。。
この他、温暖化による影響は、カメムシなど害虫の大量発生、強烈な台風の発生など
異常気象の影響がある。風に負けない強い品種なども必要となるなど多様な品種が各地
で導入されることも望ましい。
長くなりましたが、質問も多く、活発な発言で会は盛り上がりました。一年の中で
最も寒い時季なのですが、今年は穏やかで暖かい日が続いています。2時から始めて4時
過ぎまで熱心な例会となりました。アメリカ大統領に就任したトランプ政権の行くへに
ついての話題も飛び交ううちにお開きとなりました。皆さんお疲れさまでした。
Louis Armstrong - La vie en rose