中国政府が近年推進を図っている「高齢者向けの製品やサービス、老後に向けた
準備を含む経済活動」を銀髪経済(シルバー経済)とよび、高齢者向け商品市場を
拡大し、高齢者用品の研究開発や製造を強化し、高齢者の衣食住などの多様なニーズ
に応える生活用品の開発を促進している。
銀髪経済は、主に50歳以上を対象として2017年頃から進められてきているようです
が、市場規模は 2035年には19兆1000億元(約411兆円)、GDPの約1割を占めると予測
され重視されています。
2023年末の60歳以上人口は 2億9,697万人で、総人口の21.1%を占め、うち65歳以上
(2億1676万人)は 15.4%に達しています。 予測では、60歳以上人口は2035年時点で
4億人を超え(総人口の30%超)、深刻な高齢化段階に入るとされていますが、既に、23年
で65歳以上人口が、日本の総人口の2倍弱いる計算ですから、市場規模として凄いマー
ケットであると考えられ、シルバー経済(銀髪経済)の活性化に重点を置くこの政策は
当然ともいえるでしょう。
中国の銀髪経済
(読売新聞オンラインより)
全人口の5人に1人が60歳以上になる少子高齢化に加え、不動産不況を背景にした
個人消費の冷え込みが景気に悪影響を与えており、特に若者の間では、コロナ禍後の
失業率悪化など先行きの不透明さから、節約志向が広がっている状況を見ても「銀髪」
への期待は強まるといえるでしょう。しかし、国内には「未富先老(豊かになる前に
老いる)」の厳しい現実も見逃せないそうです。
昨年1月には、銀髪経済(シルバー経済)の拡大と高齢者福祉の向上に関する政策を
図る方針が示され、シルバー経済の促進が人口の高齢化に積極的に対処し、高品質な
発展を促進する重要な手段であるとともに、将来的な利益も見込まれるとして、高齢者
向けの製品やサービスの提供、老齢段階への準備など4分野計26項目にわたって主要な
取り組みが示されています。
このうちのいくつかの項目のみ紹介しますと、
・高齢者向けサービスの充実 (高齢者向け食事サービスの拡大、在宅高齢者サービス
の拡充、高齢者の健康サービスの最適化、高齢看護サービスの充実、高齢者向け文化・
スポーツサービスの拡充など)
・製品提供規模の拡大(シルバー経済の事業主体の育成、ブランド化の推進、消費
供給チャンネルの拡大など)
・多様なニーズに応える潜在的な産業の育成(高齢者用品の革新、スマートヘルスケア
新概念の構築、リハビリ補助具産業の発展、観光サービス形態の拡大など)
・シルバー経済に必要となる発展環境の最適化(科学技術イノベーション応用の強化、
土地と住宅の確保の充実、人材の育成を推進など)
と、多岐にわたっており、当然、ITやAI等の最新技術などが取り込まれています。
中国政府は、これらの新しい戦略を通じて、シルバー経済を活性化させ、高齢者が
充実した生活を送るためのサポートを展開しているというのです。
ネットAIによる概要では以下のようにまとめられています。
【銀髪経済の現状】
- 2021年の消費購買による経済規模は5.9兆元(約118兆円)と見られ、直近5年間
の年平均成長率は25.6% - 2024年の市場規模は8兆3,000億元で、国内総生産(GDP)の6%を占めた。
- 2030年には25兆元(約510兆円)に達すると見込まれている。
- 高齢者向けのネットショッピング、レジャーやケア等のサービスが次々とリリ
ースされている。 - 高齢者向けの観光列車の増発に向けた計画案が発表されており、27年までに高齢
者向け観光列車を100路線以上整備する方針。
【銀髪経済の促進策】
- 高齢者向けの食事支援を広げるよう飲食企業、不動産サービス企業、慈善団体を
奨励 - 外食プラットフォームや物流企業にも高齢者向けの食事デリバリーの参加を促進
- 多様な資金調達メカニズムを整備し、地域ごとの条件に基づく補助金や商品券の
発行をサポート
【銀髪経済の課題】
- 高齢化社会には、医療・福祉業界の人材不足や社会保障制度の財政不足などの
課題がある - 労働力減少による経済活動の鈍化や高齢者のQOLの低下、孤立による孤独死や
認知症の進行、高齢者の経済格差などの課題がある - 高齢者が現在と同様に消費を行う層と、生活を維持するために補助を必要とする
層に分かれ、その数が増え続けていくことが課題である。 - 政策体系がまだ不十分で、関連商品・サービスのイノベーション能力の不足や
需要に合う供給の少なさなどもあり、消費を十分に引き出すことができていない。 - 政府機関は既に社会保険制度の危機を理解しているが、解決策は明示されてい
ない。
日本は、急速に高齢化社会が進み高齢化率で先端にありますから、すでに各企業
ベースでシニア市場向け商品・サービスの提供が進んでおり、中国の銀髪経済におい
てもかなり有力視されているようです。
日本における高齢化市場については、ネットAIによる概要では以下のように示され
ています。(市場の取り方が中国のそれと異なっているかもしれません。)
【高齢者向け市場の規模と内訳】
- 2025年までにシニア市場の規模は100兆円を超えると予測されている
- 内訳は、医療・医薬産業が約50兆円、介護産業が約15.2兆円、生活産業が約
51.1兆円と見込まれている - 生活産業には、食料・家具・被服・教育・娯楽・交通・通信などが含まれる
【高齢者向け市場の拡大要因】
- 少子高齢化の進展に伴い、65歳以上の人口が年々増加している(2043年頃の
3900万人をピークにその後は減少傾向) - 高齢者の増加に比例して、シニア向け産業の市場規模も拡大している
- 高齢者の生活の質が向上する教養・娯楽などの市場にも波及する
【高齢者向け市場のサービス例】
- 在宅介護、居住系介護、介護施設などの介護関連サービス
- サービス付き高齢者向け住宅
- 弁当や食材の宅配サービス
- 遺品整理サービス
- 介護タクシーなどの運用代行サービス
- 高齢者向けフィットネスクラブの運営
- 人材派遣サービス
最後に、日本と中国の人口予測と高齢化率推移のグラフを、JETROの記事から、以下
にコピペしました。
日本の人口予測
(Jetroページより)
中国の人口予測
(Jetroページより)
今回の記事をまとめるにあたって、参考または引用した記事の出典は以下の通りです。
・労働政策研究機構 ・読売新聞オンライン ・日本貿易振興機構(Jetro) ・キクコト
シニア(ジェイアール東日本企画)
古い録音ですが・・
蘇州夜曲
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます