現在は回復傾向にあるが、一時半導体不足が騒がれ携帯電話、自動車メーカーが減産を余儀なくされたことは記憶に新しい。20数年前、日本は半導体王国であった。21世紀初頭はインターネットと携帯電話の普及期であったはずがITと通信の融合が進み、半導体メーカーにとっても大きな商機があったが国内の生産拠点の殆どが閉鎖され日本で半導体を大量に作ることは不可能となった。そこにインテル、サムスン、台湾が台頭。中でも台湾には世界が注目を集めている「台湾積体電路製造」(TSMC)という半導体企業がある。半導体産業の中核を担い、国際政治にも影響を与えるほど重要な存在となっている。その世界的半導体メーカー「台湾積体電路製造」(TSMC)が日本の九州熊本に上陸する。日本の工業エリアは東京や名古屋、大阪圏に集中しているが、九州への企業進出は1990年代から増加傾向にある。九州は中国や東南アジアに近く地価が安く、生産拠点や原材料・部品の調達先として外資系企業進出も増えている。そんな九州の中心に位置するのが「熊本」である。九州を南北に走る「九州縦貫自動車道」は福岡や鹿児島へ、そして八代港からは貨物船もありアクセスのよい事が挙げられ台湾にとって最適地である。「菊陽町」は阿蘇くまもと空港から約10分、九州自動車道熊本ICからも約10分の距離。福岡市へも車で100分程度。車で1時間ほどの八代港からは台湾に向けて国際コンテナ定期航路があり、八代港から台湾への輸出は3日で可能となっている。土地の取得コストも首都圏に比べ破格的に低い。国土交通省の2020年の都道府県地価調査では住宅地は東京の約13分の1、商業地は同約14分の1、工業地は同約20分の1という格安ぶりからこれまでに多くの企業が熊本県や菊陽町に進出してきた。九州は太陽光や地熱など再生可能エネルギーに恵まれてい上、何よりも「半導体生産」に純度の高い超純水が大量に必要不可欠の「水資源」=地下水が豊富な熊本に白羽の矢が決め手となっている。阿蘇山を望む熊本県の生活用水の8割は地下水である。今後の気候変動の影響を考えると水資源が豊富な地域に生産拠点を置くメリットは大きい。半導体生産においてTSMCは2019年には台湾の3つの科学工業団地で1日当たり合計15万6000トン、2020年には同19万3000トンの水を使用している。「台湾積体電路製造」(TSMC)と「ソニーグループ=デンソーも出資」の合弁会社「JASM」は先月28日、熊本県に建設する半導体工場について今年4月に着工し、2023年9月までに完成させる計画を明示した。「JASM」の熊本県菊陽町工場建設規模は東京ドーム約4個分の約21.3ha、建設額は約9800億円である。同工場は既に採用活動を開始し7割を新卒と中途採用、外部委託で計1700人体制を確保している。台湾から技術者と家族合わせ約600人を受け入れる。台湾のほかソニーも技術者を派遣する。そして今年12月には12~28ナノメートルのプロセス技術により自働車や産業分野向けロジック半導体を製造、月産能力は300ミリウエハー換算で5万5000枚を2024/12より出荷開始を予定している。政府は17日、台湾のTSMCとソニーグループへ総投資額は1兆円超(日本政府が最大4760億円補助)と巨額だ。またあの「アップル」ティム・クック最高経営責任CEOが昨年末、熊本菊陽町ソニーグループの半導体製造子会社が運営する工場を訪れた。数日前岸田首相はマイクロテクノロジー、サムスン、台湾の半導体メーカーの首脳と会談し1兆3千億円の支援を行うとした。また北海道千歳には「ラビダス」、広島には米国半導体大手の「マイクロン・テクノロジー」がDRAMの新工場を建設と今、日本は半導体工場建設ラッシュで日本経済の牽引となるか注目、期待される。(2305)
2024年3月に視察・訪問した記事と画像☜
2024年3月に視察・訪問した記事と画像☜