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今年はあまり読めなかった気がするが、あげてみる。
10、井原西鶴「西鶴諸国噺」、「本朝二十不孝」、「男色大鏡」……二番目については、みんなが言っていることであるが、不孝というよりヤンキーの自慢話ではないだろうか。三番目も、これも男色というより、武士道や歌舞伎役者万歳というかんじである。西鶴をみていると、われわれがつかっている二枚舌の起源をみるようである。もっともその二枚舌は、表向きのテーマではない内実をしめしながら、どちらも書いているうちに陳腐化して行くという運命である。こういう時には、時代を思想のごった煮の時代としてとらえ、どさくさに紛れてなにか鍋から飛び散るのを観察するのが面白そうだ。しかし、戦中戦後の似た時期を想起するに、最終的に飛び出たのは、「太陽の季節」みたいなものであった。気をつけなくてはならない。
9、奧野克己×清水高志『今日のアニミズム』……わたしはこれを読んだ後、元気の出るアニミズムということを構想したが、多くの学者は元気の出ると言うことには抑圧が必要では、とかいいそうなのである。これは多くの学者が教員をしているからではあるまいか。東浩紀氏もどこかで言っていたように、会社とか学校みたいな局面では近代主義をとれ、みたいなことであろう。
8、源実朝 (コレクション日本歌人選)……こういうものも一応読んでおかないと、大河ドラマを面白いということで済んでしまう。好きな歌とそうでもない歌がある。
7、空海『三教指帰』……天才の若書き。最初から天才と分かる書きぶりで、今年一番の絶望を与えた。ただし面白いのは、儒教を貶しているところで、仏教礼讃になるとあまりわたくしには面白くなかった。ただ、この書の三段構成が、弁証法的と言うより、万華鏡みたいなものであることはなんとなくわかる。
6、日蓮『開目抄』『立正安国論』……結論、日蓮と宮沢賢治、あまり関係なし
5、宇佐見りん『推し、燃ゆ』、『くるまの娘』……天才の天才期はまだ続く。
4、村田沙耶香『信仰』、『殺人出産』……浅野いにおのマンガを読んでも思春期を感じないが、村田沙耶香の作品からは思春期を感じる。いつの間にか消えてしまったものであるが、確かに体験してきたものだ。むろん、文字通りの作品内の事件を別に体験しているわけではないが、そう感じさせる。とくに我々がとっくに箱男ではなくコンビニ人間だった事態を、彼女は教えてくれたのである。
3、田中希生『存在の歴史学: 近代日本における未成の者たち』……この人の本も、毎回我々が体験したことを教えてくれる。わたくしは、年下のこの人の文章からけっこう影響を受けたと思う。
2、山根龍一『架橋する言葉』……来年、書評をかくつもり。
1、米田翼『生ける物質』……今年は哲学書の傑作のラッシュで読むのに忙しかった。世の中、頭のいい人がたくさんいるもんだ。