衞靈公問陳於孔子。孔子對曰、俎豆之事、則嘗聞之矣。軍旅之事、未之學也。明日遂行。在陳絶糧。從者病、莫能興。子路慍見曰、君子亦有窮乎。子曰、君子固窮。小人窮斯濫矣。
衞の靈公が軍隊のことをきくと「祭具の使い方は学びましたが、軍隊の使い方についてはどうも」と言って衞を去った。陳にあったときに食糧攻めにあい、お伴の門人たちは、すっかり弱って、起きあがることができなかった。子路がぷっつんして「教養人も窮するということがあるんですかっ」、孔子は言った「むろん窮することはある。しかし、窮しても別に取り乱さぬ。小人は窮すると、すぐに取り乱す」と。
まったく冗談ではない。ここで一発、ビールをワインに変えるとかやって頂けたら、磔になったあげくに神話化したというのに、孔子はあくまで人間であった。そのまま流民を続けて、最後は故郷にかえることになる。
しかし、歩みをとめては孔子の流民としてのアイデンティティがゆるさない。孔子の周りには、まったくの想像だが、――皇帝になるんだかならないんだかわからない有象無象の流民的ボスたちが蠢いていたのにちがいない。中国は、農民を巻き込んだ洪水のような感じで革命が起きる。孔子は無理にそこに逆らう必要は無く、少しずつ、将来の皇帝たちに、寛容さと鷹揚さを吹き込んでおけばよかったのではなかろうか。