ニューヨーク州ウッドストックに住む恋愛小説作家が周囲の住民との間での出来事や思い、聞いた話から描いたエッセイ風の恋愛短編連作小説。
1969年に開催された伝説のロックコンサートと花と森と嵐と雪に彩られるウッドストックの風土を反映して月ごとにトピックを採った(それは月刊の連載のためではありましょうが)短編が美しい街角のカラー写真の装丁で飾られた小じゃれた本です。
読み物としてはダイナミックな展開や感動とかは期待できませんが、読み終えてほっとするというか少し心温まるというタイプの本です。
恋愛小説作家を語り手として何度か同じエピソードが登場していますが、「彼はキャンプや野宿が大好きだけれど、私は大嫌い。テントや車の中で寝るなんて、とうてい無理」(158ページ)で、それも離婚の原因となっている「私」が、学生の頃恋人と貧乏旅行を重ね「旅先でお金が底をついてくると、河で水浴びをしたあと、海辺に粗末なテントを張って、星の数を数えながら、眠った」(47~48ページ)ことを嬉々として書いているのは、調整不足?
日本で知り合ったアメリカ人男性と結婚してウッドストックに在住する恋愛小説作家という設定は、作者自身を、当然にイメージさせますが、3年で離婚(87~88ページ等)とか、東京郊外の生まれ(85ページ)とかは作者の経歴と違っていて、ノンフィクションのようなフィクションのようなそういう曖昧な形で書いています。そこは、ご想像にお任せします、というような。でもそういうスタンスで、年を13もサバを読むのは、ちょっと奥ゆかしさに欠けるかなと思います。
小手鞠るい 角川学芸出版 2010年4月15日発行
角川学芸WEBマガジン第23~34号連載
1969年に開催された伝説のロックコンサートと花と森と嵐と雪に彩られるウッドストックの風土を反映して月ごとにトピックを採った(それは月刊の連載のためではありましょうが)短編が美しい街角のカラー写真の装丁で飾られた小じゃれた本です。
読み物としてはダイナミックな展開や感動とかは期待できませんが、読み終えてほっとするというか少し心温まるというタイプの本です。
恋愛小説作家を語り手として何度か同じエピソードが登場していますが、「彼はキャンプや野宿が大好きだけれど、私は大嫌い。テントや車の中で寝るなんて、とうてい無理」(158ページ)で、それも離婚の原因となっている「私」が、学生の頃恋人と貧乏旅行を重ね「旅先でお金が底をついてくると、河で水浴びをしたあと、海辺に粗末なテントを張って、星の数を数えながら、眠った」(47~48ページ)ことを嬉々として書いているのは、調整不足?
日本で知り合ったアメリカ人男性と結婚してウッドストックに在住する恋愛小説作家という設定は、作者自身を、当然にイメージさせますが、3年で離婚(87~88ページ等)とか、東京郊外の生まれ(85ページ)とかは作者の経歴と違っていて、ノンフィクションのようなフィクションのようなそういう曖昧な形で書いています。そこは、ご想像にお任せします、というような。でもそういうスタンスで、年を13もサバを読むのは、ちょっと奥ゆかしさに欠けるかなと思います。
小手鞠るい 角川学芸出版 2010年4月15日発行
角川学芸WEBマガジン第23~34号連載