津波災害についての啓発書。
2010年2月27日のチリ沖地震津波で日本で168万人に対して避難指示・避難勧告が出されたのに避難した人はその3.8%に過ぎなかったことにショックを受けて書かれたそうです(まえがき)。
津波というと高い波がやってくるというイメージですが、広い海を伝播する過程ではせいぜい高さ1メートルくらいで、水深が浅くなって海面は高くなるものの見渡す限りの海面全体が音もなくすうっと高くなるので見てわかりにくく、実態は速い流れと捉えるべきだそうです。津波の話では波高ばかりが重視されがちですが、仮に砂浜にいて高さ50センチの津波が来たとしても立っていることはできず転倒して巻き込まれ砂浜を引きずられて全身大やけど、防波堤の高さが津波の波高以上あっても岸壁で津波のエネルギーが位置エネルギーに変換されて高くなって乗り越えられるし、そもそも防波堤は津波を想定して設計されていないから破壊されるかも知れないというようなことが冒頭で指摘されています。さらに言えば、近地津波ならば地震で防波堤や道路が破壊され、石油タンクが破壊されて火災が発生し、そこに津波が来て大規模な浸水被害と火災の拡大という事態も考えられます。
そして、津波では必ずしも第1波がもっとも波高が高いとは限らず地震津波の想定計算でも東南海地震の尾鷲の場合は第2波が、南海地震では第3波がもっとも波高が高くなるし、海底地形による屈折(レンズ効果)や対岸・島との反射波などによってどの時点でどのような津波が来るかが変化し、避難後もすぐに戻ると危険で、避難場所で6時間程度は待機すべきと著者は述べています。そして、避難勧告のシステムも行政の判断で遅れたり出されないリスクがあり住民も待ちの姿勢になりがちという問題があるので、立っていられないような地震があり1分以上揺れが続いたときは津波がくると考えてすぐに避難を開始すべきだと、著者は勧めています。
津波について漠然と持っていたイメージに誤解が多いことを認識させられる本です。
河田惠昭 岩波新書 2010年12月17日発行
2010年2月27日のチリ沖地震津波で日本で168万人に対して避難指示・避難勧告が出されたのに避難した人はその3.8%に過ぎなかったことにショックを受けて書かれたそうです(まえがき)。
津波というと高い波がやってくるというイメージですが、広い海を伝播する過程ではせいぜい高さ1メートルくらいで、水深が浅くなって海面は高くなるものの見渡す限りの海面全体が音もなくすうっと高くなるので見てわかりにくく、実態は速い流れと捉えるべきだそうです。津波の話では波高ばかりが重視されがちですが、仮に砂浜にいて高さ50センチの津波が来たとしても立っていることはできず転倒して巻き込まれ砂浜を引きずられて全身大やけど、防波堤の高さが津波の波高以上あっても岸壁で津波のエネルギーが位置エネルギーに変換されて高くなって乗り越えられるし、そもそも防波堤は津波を想定して設計されていないから破壊されるかも知れないというようなことが冒頭で指摘されています。さらに言えば、近地津波ならば地震で防波堤や道路が破壊され、石油タンクが破壊されて火災が発生し、そこに津波が来て大規模な浸水被害と火災の拡大という事態も考えられます。
そして、津波では必ずしも第1波がもっとも波高が高いとは限らず地震津波の想定計算でも東南海地震の尾鷲の場合は第2波が、南海地震では第3波がもっとも波高が高くなるし、海底地形による屈折(レンズ効果)や対岸・島との反射波などによってどの時点でどのような津波が来るかが変化し、避難後もすぐに戻ると危険で、避難場所で6時間程度は待機すべきと著者は述べています。そして、避難勧告のシステムも行政の判断で遅れたり出されないリスクがあり住民も待ちの姿勢になりがちという問題があるので、立っていられないような地震があり1分以上揺れが続いたときは津波がくると考えてすぐに避難を開始すべきだと、著者は勧めています。
津波について漠然と持っていたイメージに誤解が多いことを認識させられる本です。
河田惠昭 岩波新書 2010年12月17日発行