世界のメディアが評価するのと対照的に政治家・官僚と一緒になってウィキリークスをいかがわしい暴露サイトと扱い発表内容の裏付けの確認不足や情報の公表により登場する人物への攻撃がなされる危険性ばかり強調したがる日本のマスコミの姿勢を批判する本。
ウィキリークスの紹介部分は半分くらいで、システムとしてはログを残さないことなどによって内部告発者の匿名性を守るシステムであることや、ウィキリークス側でも大手の新聞社等との連携で裏付けを取る姿勢を見せておりこれまで誤報と確認された例はないこと、代表のアサーンジの性的暴行容疑の内容(セックス自体は合意の上でむしろ女性側がアプローチしたものであるが、女性側がコンドームの使用を求めたのにアサーンジがコンドームを使用しなかったことが問題となっている:14~15ページ、67~70ページ)と異例の国際指名手配をしたスウェーデン政府と逮捕したイギリス政府の対応の異常ぶりなどが紹介されています。
しかし、著者の関心は、権力者にとって隠しておきたい国民や大衆に知られたくない情報を暴き白日の下に晒すことこそジャーナリズムの使命であり本業であるはずで、ウィキリークスの発表は政府や官僚からは非難されるであろうがマスメディアからは賞賛されるべきことでその情報が不確かなら自ら検証して報道するのがマスコミの仕事であるはずなのに、政府・官僚と一緒になってウィキリークスを貶めることに血道を上げる日本のマスコミの異常さと、それが著者の長年の主張である閉鎖的な記者クラブを通じた大本営発表を垂れ流してきた体質に根ざすものという点にあります。
公益通報者保護法という法律は作られたものの、公益通報(内部告発)はまずは勤務先が設けた窓口に、そうでなければ監督官庁に、マスコミへの通報は最後の手段という位置づけで、実質的には内部告発潰し法という趣ですし、内部告発を受けた監督官庁はというと東京電力の原発圧力容器ひび割れ隠しの内部告発を受けた保安院はあろうことかその内部告発者の身元を東京電力に通知するという、そういうお国柄で、内部告発自体けしからんという風土ですからね、というところでしょうか。
でも、諸外国ではウィキリークスの刺激を受けて、次々と内部告発サイトが誕生しているそうですし(197~200ページ)、Facebookもtwitterもユーストリームも日本でもかなり定着してきています。日本のマスコミがいつまでも覚醒せず政治家・官僚とのなれ合いを続けていたとしても、チュニジアのジャスミン革命を支えた情報流出と人々の連帯を作るツールは否応なく日本社会にも浸透してきている、その自覚とメディアリテラシーを持ちましょうねというメッセージを受け取っておきましょう。
上杉隆 光文社新書 2011年3月20日発行
ウィキリークスの紹介部分は半分くらいで、システムとしてはログを残さないことなどによって内部告発者の匿名性を守るシステムであることや、ウィキリークス側でも大手の新聞社等との連携で裏付けを取る姿勢を見せておりこれまで誤報と確認された例はないこと、代表のアサーンジの性的暴行容疑の内容(セックス自体は合意の上でむしろ女性側がアプローチしたものであるが、女性側がコンドームの使用を求めたのにアサーンジがコンドームを使用しなかったことが問題となっている:14~15ページ、67~70ページ)と異例の国際指名手配をしたスウェーデン政府と逮捕したイギリス政府の対応の異常ぶりなどが紹介されています。
しかし、著者の関心は、権力者にとって隠しておきたい国民や大衆に知られたくない情報を暴き白日の下に晒すことこそジャーナリズムの使命であり本業であるはずで、ウィキリークスの発表は政府や官僚からは非難されるであろうがマスメディアからは賞賛されるべきことでその情報が不確かなら自ら検証して報道するのがマスコミの仕事であるはずなのに、政府・官僚と一緒になってウィキリークスを貶めることに血道を上げる日本のマスコミの異常さと、それが著者の長年の主張である閉鎖的な記者クラブを通じた大本営発表を垂れ流してきた体質に根ざすものという点にあります。
公益通報者保護法という法律は作られたものの、公益通報(内部告発)はまずは勤務先が設けた窓口に、そうでなければ監督官庁に、マスコミへの通報は最後の手段という位置づけで、実質的には内部告発潰し法という趣ですし、内部告発を受けた監督官庁はというと東京電力の原発圧力容器ひび割れ隠しの内部告発を受けた保安院はあろうことかその内部告発者の身元を東京電力に通知するという、そういうお国柄で、内部告発自体けしからんという風土ですからね、というところでしょうか。
でも、諸外国ではウィキリークスの刺激を受けて、次々と内部告発サイトが誕生しているそうですし(197~200ページ)、Facebookもtwitterもユーストリームも日本でもかなり定着してきています。日本のマスコミがいつまでも覚醒せず政治家・官僚とのなれ合いを続けていたとしても、チュニジアのジャスミン革命を支えた情報流出と人々の連帯を作るツールは否応なく日本社会にも浸透してきている、その自覚とメディアリテラシーを持ちましょうねというメッセージを受け取っておきましょう。
上杉隆 光文社新書 2011年3月20日発行