4年前までエロ本の編集長だった45歳の山崎が、エロ本から足を洗うきっかけとなった19歳年下のコンビニアルバイト七海が出て行ったのを機に失意に暮れ、過去への感傷に浸り続けるうちに、七海とつきあう前に自分のアパートへ逃げ込んできて半年後に姿を消した新宿の風俗女王と呼ばれた可奈が鶯谷の韓国デリヘルにいると聞き及び、可奈を救出する使命に燃え闇の組織と対峙するという観念アドベンチャー風ノスタルジー小説。
無節操に過ごした過去の武勇伝ないしせつないエピソードを、中年男が失恋の感傷の中で振り返るというパターンが基調となっているように思えますが、これにその過去の想い出コレクションの女性の一人を現在形で救うために闇の組織と闘うという別の方向性が加えられ冒険・サスペンスの色づけがなされています。語り手の思い出と想念の中にある「空っぽの星」と現在救おうとする可奈の恐怖をエンプティスターというキーワードでつないでいるのが、現在の闘いをも観念的なものにし、サスペンス部分の迫真性を奪っているような気がします。中盤のヤマかと思った敵陣への侵入も具体的には描かれもせずにあっさり成功したのひと言で片付けられたり、ストーリーの核心ともいえる「闇の組織」との交渉もあまりにあっさりとあっけなく成立し、2人殺し損ねた闇の組織がその後アクションを起こさないとか、また殺人2件・殺人未遂2件で刑事事件として展開しない(というか展開したかどうかに触れられもしない)とか、闇の組織との闘いというテーマを設定しながらそれはないだろうと思います。そういうところで、闘い部分は観念的なもので、中心は武勇伝を感傷的に語るところにある中年男のナルシスティックなノスタルジー小説なんだと評価しました。

大崎善生 角川書店 2012年2月29日発行
無節操に過ごした過去の武勇伝ないしせつないエピソードを、中年男が失恋の感傷の中で振り返るというパターンが基調となっているように思えますが、これにその過去の想い出コレクションの女性の一人を現在形で救うために闇の組織と闘うという別の方向性が加えられ冒険・サスペンスの色づけがなされています。語り手の思い出と想念の中にある「空っぽの星」と現在救おうとする可奈の恐怖をエンプティスターというキーワードでつないでいるのが、現在の闘いをも観念的なものにし、サスペンス部分の迫真性を奪っているような気がします。中盤のヤマかと思った敵陣への侵入も具体的には描かれもせずにあっさり成功したのひと言で片付けられたり、ストーリーの核心ともいえる「闇の組織」との交渉もあまりにあっさりとあっけなく成立し、2人殺し損ねた闇の組織がその後アクションを起こさないとか、また殺人2件・殺人未遂2件で刑事事件として展開しない(というか展開したかどうかに触れられもしない)とか、闇の組織との闘いというテーマを設定しながらそれはないだろうと思います。そういうところで、闘い部分は観念的なもので、中心は武勇伝を感傷的に語るところにある中年男のナルシスティックなノスタルジー小説なんだと評価しました。

大崎善生 角川書店 2012年2月29日発行