アメリカの経営学者マイケル・ポーターの教えについて、弟子にあたる著者(マイケル・ポーターが主導するハーバード・ビジネス・スクール競争戦略研究所のシニア・アソシエート)が解説した本。
要するに、経営者が目標としがちな同じ土俵での「最高を目指す競争」は価格競争に収斂しがちで自己破壊的で底辺を目指すゼロサム競争を煽るだけであり、あらゆる顧客のあらゆるニーズを満たそうとすることも同じ道をたどる、企業が求めるべきは売上げ・シェアではなく利益であり、安定的な利益を確保するための戦略は他社とは違う独自の価値(異なる顧客・異なるニーズ)を提案しそのために他社とは違う活動により他社よりも高い価格(魅力的な商品)か他社よりも安いコストを実現することにある。その際に、すべてをやろうとせず一定の顧客やニーズを切り捨て、特定のニーズの実現(顧客満足度の上昇→高価格、または低コスト化)に向けた独自の活動の最適な組み合わせをつくり、長期的な計画でそれに向けて活動していくことで、他社の模倣を困難にし、また部分的に模倣されても優位を保てるということを論じています。
この主張へのすぐに生まれる疑問は、特定のニーズにターゲットを絞って特化する戦略でそのニーズへの対応は他社の追随を許さなくなったとして、もしそのニーズが消滅したらどうするということですが、それについては暗黙の賭けであり、そういう不幸が生じたときは仕方がない、諦めろということのようです(230~237ページ)。
シェア争いに目を奪われた価格競争を諫める以外に、商品の魅力を高めるため(高価格を実現するため)や低コストを実現するためのさまざまな領域での独自の活動の組み合わせ(それによってより高度に実現するとともに他社の模倣を困難にする)の重要性を強調して安易なアウトソーシングを批判し、また長期的な目的実現に向けた人材採用を求めるなど、昨今のアメリカ企業のみならず日本の企業でも目につく目先の利益だけを考えたリストラやアウトソーシングが企業利益の観点からも愚かであることを指摘している点が共感できました。
基本的には成功例の分析ですし、戦略についての思考方法を説明するもので、具体的な提言があるわけではありませんし、もう少し説明して欲しいなと感じる部分も多いのですが、ふむふむなるほどと思いながら読める本ではあります。
原題:Understanding Michael Porter
ジョアン・マグレッタ 訳:櫻井祐子
早川書房 2012年9月25日 (原書も2012年)
要するに、経営者が目標としがちな同じ土俵での「最高を目指す競争」は価格競争に収斂しがちで自己破壊的で底辺を目指すゼロサム競争を煽るだけであり、あらゆる顧客のあらゆるニーズを満たそうとすることも同じ道をたどる、企業が求めるべきは売上げ・シェアではなく利益であり、安定的な利益を確保するための戦略は他社とは違う独自の価値(異なる顧客・異なるニーズ)を提案しそのために他社とは違う活動により他社よりも高い価格(魅力的な商品)か他社よりも安いコストを実現することにある。その際に、すべてをやろうとせず一定の顧客やニーズを切り捨て、特定のニーズの実現(顧客満足度の上昇→高価格、または低コスト化)に向けた独自の活動の最適な組み合わせをつくり、長期的な計画でそれに向けて活動していくことで、他社の模倣を困難にし、また部分的に模倣されても優位を保てるということを論じています。
この主張へのすぐに生まれる疑問は、特定のニーズにターゲットを絞って特化する戦略でそのニーズへの対応は他社の追随を許さなくなったとして、もしそのニーズが消滅したらどうするということですが、それについては暗黙の賭けであり、そういう不幸が生じたときは仕方がない、諦めろということのようです(230~237ページ)。
シェア争いに目を奪われた価格競争を諫める以外に、商品の魅力を高めるため(高価格を実現するため)や低コストを実現するためのさまざまな領域での独自の活動の組み合わせ(それによってより高度に実現するとともに他社の模倣を困難にする)の重要性を強調して安易なアウトソーシングを批判し、また長期的な目的実現に向けた人材採用を求めるなど、昨今のアメリカ企業のみならず日本の企業でも目につく目先の利益だけを考えたリストラやアウトソーシングが企業利益の観点からも愚かであることを指摘している点が共感できました。
基本的には成功例の分析ですし、戦略についての思考方法を説明するもので、具体的な提言があるわけではありませんし、もう少し説明して欲しいなと感じる部分も多いのですが、ふむふむなるほどと思いながら読める本ではあります。
原題:Understanding Michael Porter
ジョアン・マグレッタ 訳:櫻井祐子
早川書房 2012年9月25日 (原書も2012年)