伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ナメクジの言い分

2012-11-16 20:38:18 | 自然科学・工学系
 ナメクジに魅入られた元新聞記者の著者が、協力者からの目撃情報を収集して作成したナメクジマップによるナメクジ分布や外来種の進出状況、ナメクジについての調査や考察をまとめた本。
 在来種のフタスジナメクジ、ヤマナメクジに対し、外来種のチャコウラナメクジが分布を拡げている様子や、世界的にはヨーロピアンブラックナメクジ(大きいのだと体長30センチもあるって)が勢力を拡げていることが紹介されていますが、いかんせん元になる目撃情報数が少なすぎるので、客観的な傾向を判断するにはかなり頼りない感じです。
 産卵時期や孵化時期、産卵から孵化までの日数についても観察結果を紹介していますが、これも事例が少なすぎて怪しげ。
 ビールの匂いが好きでキャベツが好きとかいうのはおもしろいというか実用情報ともいえそう。
 恐竜絶滅の際にもナメクジが生き延びたことを、ゆっくりした行動パターンのエネルギー節約型ライフスタイルがえさの少ない時代を生き延びさせたと推測し、上昇志向を持たず競争せず仲間とくっついて湿り気を分かち合う姿勢をナメクジ史観に基づく分かち合い哲学と名付ける著者の主張は、科学的に正しいかどうかは別として、哲学的には興味深いところです。


足立則夫 岩波科学ライブラリー 2012年10月4日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする