伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

その愛の向こう側

2012-11-06 00:53:40 | 小説
 結婚直前だった恋人桜木みどりが旅に出ると言ってうちを出たまま帰らず1週間後になって新宿駅のホームで飛び込み自殺をしたと聞かされて自暴自棄となったフリーライターの本宮修平が、ブログで書いた嘆きの記事を読んだ女性からみどりの1年後に新宿駅で飛び込み自殺をした主婦小林雛子の自殺の動機を調べてノンフィクション作品にして欲しいという依頼を受けて調べ出すうちに、みどりにつながる事実が浮かび上がって・・・という恋愛サスペンス小説。
 ミステリーとしての部分は、確かに予想外の展開で興味をそそられましたが、謎解きとしては詰められていない感じが残り、また明かされた内容も「それはないだろう」と思います。
 しかし同時に、それはないだろうと思う部分が、本当にあり得ないだろうか、本当にあったらどうだろうかとも考えさせられます。帰らぬ人となる直前のみどりの様子やそれ以前のみどりが平然と修平と過ごせていたのは本当なのか。あり得ないと思いつつ、でもあったら怖いような。同様に当然にあったはずのみどりの悲嘆と動揺を、また当然にあったはずの大きな変化を、修平は見抜けなかったのか。これもまたあり得ないと思いつつ、でも男にはそれも見抜けない、男は簡単に騙されるというのもありそうな気がして怖い。そして、そうだとしたら、みどりは修平と結婚したいだろうか、真実を知ったら修平はみどりと結婚したいだろうか。男と女の間には深くて暗い川がある・・・の世界かも。
 区切りのところで度々これまでのおさらいをしてくれるのは、連載では親切ですが、単行本ではくどい感じがします。


小手鞠るい 徳間書店 2012年6月30日発行
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