個人が単独で作業を行った場合に比べて集団で作業を行う場合の方が1人あたりの努力の量が低下するという「社会的手抜き」について、心理学の実験等を引用しながら検討する本。
多重チェックでチェックする人数を増やすとかえって全体のミス発見率が低下する(110~111ページ)とか、集団でブレーン・ストーミングを行うより個別にアイディア出しを行った方がアイディア総数だけでなく独創的なアイディア数も多い(80~81ページ)等、興味深いことがらがそれなりに書かれています。しかし、その論拠となる実験が引用はされているのですが実験条件等がきちんと紹介されておらず、実験のサンプル数が書かれているものはほとんどがせいぜい数十人レベルのもので、その実験1つでそんなことまで言っていいのかと思うことがしばしばありました。
日本シリーズの優勝確率について、勝率が55%のチームが「4連勝する確率は0.554=9.15%、4勝1敗の確率は4通りのケースがあるので4×0.555=20.13%、4勝2敗は10通りであるので10×0.556=27.68%、4勝3敗は20通りで20×0.557=30.45%となる。これを合計すれば87%ほどになる」(178ページ)としています。いや、違うでしょ。勝率55%のチームが4勝1敗の確率を議論する時どうして0.555がベースになるのか全然わからない。1敗の方は負ける確率45%なのだから、0.554×0.45をベースにすべきでしょう。著者は「実力差が14%(強いチームの勝利確率が57%)あれば確率論的には弱いチームが優勝する確率はなくなる」(179ページ)としています。著者のやり方(強い方のチームの勝利確率を試合数乗する)で勝率57%のチームの優勝確率を計算すると108%になります。ついでに著者のやり方で勝率60%のチームの優勝確率を計算すると146.7%になってしまいます。確率を計算する時、100%に限りなく近づいていくというならわかりますが、100%を超える計算結果が出たら、それは計算のやり方が間違っていると考えるのが普通でしょう。こういう数学センスを見せつけられると、この本で取り上げている実験結果や統計の処理・評価の信頼性にも疑問を感じてしまいます。さて、この著者の計算結果は何人がチェックしたのでしょう。
釘原直樹 中公新書 2013年10月25日発行
多重チェックでチェックする人数を増やすとかえって全体のミス発見率が低下する(110~111ページ)とか、集団でブレーン・ストーミングを行うより個別にアイディア出しを行った方がアイディア総数だけでなく独創的なアイディア数も多い(80~81ページ)等、興味深いことがらがそれなりに書かれています。しかし、その論拠となる実験が引用はされているのですが実験条件等がきちんと紹介されておらず、実験のサンプル数が書かれているものはほとんどがせいぜい数十人レベルのもので、その実験1つでそんなことまで言っていいのかと思うことがしばしばありました。
日本シリーズの優勝確率について、勝率が55%のチームが「4連勝する確率は0.554=9.15%、4勝1敗の確率は4通りのケースがあるので4×0.555=20.13%、4勝2敗は10通りであるので10×0.556=27.68%、4勝3敗は20通りで20×0.557=30.45%となる。これを合計すれば87%ほどになる」(178ページ)としています。いや、違うでしょ。勝率55%のチームが4勝1敗の確率を議論する時どうして0.555がベースになるのか全然わからない。1敗の方は負ける確率45%なのだから、0.554×0.45をベースにすべきでしょう。著者は「実力差が14%(強いチームの勝利確率が57%)あれば確率論的には弱いチームが優勝する確率はなくなる」(179ページ)としています。著者のやり方(強い方のチームの勝利確率を試合数乗する)で勝率57%のチームの優勝確率を計算すると108%になります。ついでに著者のやり方で勝率60%のチームの優勝確率を計算すると146.7%になってしまいます。確率を計算する時、100%に限りなく近づいていくというならわかりますが、100%を超える計算結果が出たら、それは計算のやり方が間違っていると考えるのが普通でしょう。こういう数学センスを見せつけられると、この本で取り上げている実験結果や統計の処理・評価の信頼性にも疑問を感じてしまいます。さて、この著者の計算結果は何人がチェックしたのでしょう。
釘原直樹 中公新書 2013年10月25日発行