伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

男と女、なぜ別れるのか

2014-02-08 00:43:49 | エッセイ
 生命力、耐寒性、痛み、出血、表現力、知的好奇心、交遊力、嫉妬深さ、行動力、グルメ度、性欲、逆境、環境順応性、性的快感について、男と女のどちらが強いかを論じた連載エッセイ。
 タイトルには思い切り偽りありで、最後に付けられた対談で「男と女の根本的な違いを書くことによって、男と女が別れずにいい関係を持続する方法が見えてくる。この本ではそこを追求しています」と言っています(211ページ)が、あまりにも取って付けた感じ。タイトルに惹かれて読んでみただけに、看板に偽りありの思いをかなり強く持ちました。
 内容的にも、最初の4項目は医学的な話で、医者でもある著者にはお手の物の話ではありますが、率直に言って、これらの項目について女性の方が強いという結論は、今どき常識に属すると思います。こんなのあえてテーマに挙げるべきことか、体は何でも男が強いと思い込んでいる人が掲載誌(「LEE」)の読者の多数派だと思われるのか、読んでいて疑問に思えました。その後の項目は、まわりの人に男と女のどっちが強いか聞いてみたとか世間話レベルのことで、客観的なあるいは科学的な根拠なく決めつける話が多い印象でした。環境順応性については、心理学の本には動物実験などを引用してよく書かれていることですが、その女性の方が環境順応性が高いということを、だから女性が新しい家に入る(「嫁に入る」)方がうまく行く(183~192ページ)と女性が嫁入りするという制度の正当化に使うとは驚きました。
 全体としては、巷間流布されている男女についての先入観なり社会で求められる役割観に依拠し、それを強化するようなごく俗っぽい読み物という感じです。


渡辺淳一 集英社 2013年10月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする