高松市沖の離島直島で行われた直島が舞台の一つとなっている「007赤い刺青の男」の映画化・ロケ誘致運動を通して、その運動に飛び込んだ直島を都会のように華やかにしたいと思う少女峰尾遥香の成長を描いた小説。
半身不随の妻を抱えせめて島に病院があればという思いから押しつけられた誘致運動にのめり込んでいく柿沼ら人のいい島民たちと、自らは責任も取らず金を出さないことに徹しつつ直島に誘致運動を請願させる県庁職員ら、誘致が無理だと知りつつさまざまな思惑から誘致できそうな顔でいる関係者たちの大人たちの動きを背景に、遥香と友人の柚希、高飛車な美人高校生杏奈らの友情と対立、感情と見方の変化を描いています。
冒頭に「この小説は実話に基づいています。」と書かれていて、その制約のためか、話の展開にぶつ切れ感があり、また人物像や内心の事情についてもう少し書き込んで欲しいのになぁと思う部分が散見されました。
エモーショナルな側面では前から3分の2くらいのところでの遥香と母志帆のやりとりでピークに達し、後はちょっと毒気を抜かれた感じで展開します。最後にボンドガール・コンテストでもう一つのピークを作ろうとはしているのですが、私には、クライマックス感は持てませんでした。
そういった点では、もう少し構成や描写を締めた方が読み物としてのできはよくなると思いますが、離島の素朴な人々を描くという観点からはこういうのんびりさ加減がいいということでしょうか。

松岡圭祐 角川書店 2014年3月31日発行
半身不随の妻を抱えせめて島に病院があればという思いから押しつけられた誘致運動にのめり込んでいく柿沼ら人のいい島民たちと、自らは責任も取らず金を出さないことに徹しつつ直島に誘致運動を請願させる県庁職員ら、誘致が無理だと知りつつさまざまな思惑から誘致できそうな顔でいる関係者たちの大人たちの動きを背景に、遥香と友人の柚希、高飛車な美人高校生杏奈らの友情と対立、感情と見方の変化を描いています。
冒頭に「この小説は実話に基づいています。」と書かれていて、その制約のためか、話の展開にぶつ切れ感があり、また人物像や内心の事情についてもう少し書き込んで欲しいのになぁと思う部分が散見されました。
エモーショナルな側面では前から3分の2くらいのところでの遥香と母志帆のやりとりでピークに達し、後はちょっと毒気を抜かれた感じで展開します。最後にボンドガール・コンテストでもう一つのピークを作ろうとはしているのですが、私には、クライマックス感は持てませんでした。
そういった点では、もう少し構成や描写を締めた方が読み物としてのできはよくなると思いますが、離島の素朴な人々を描くという観点からはこういうのんびりさ加減がいいということでしょうか。

松岡圭祐 角川書店 2014年3月31日発行