伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

税務署の正体

2014-09-21 22:39:49 | 実用書・ビジネス書
 元国税局調査官の著者が税務署の実情について書いた本。
 税務署が脱税の調査をするために、ダミーの調査先を作って銀行に調査を了解させて銀行の資料を調べまくり、実はそのダミーの調査先の取引相手を調べるという手法を「横目」というのだそうです。本命のターゲットを銀行に明かすとその情報が銀行から調査先に伝わってしまうためにその取引先をダミーにすることもあるけど、特に本命がなくて漠然とさまざまな事業者の銀行資料を見るためにそういう手法を使うこともあるという(68~71ページ)。銀行は税務署にはたてつけなくて、税務署員がこの企業を調べたいといえば自分の欲しい資料を銀行員が持ってきてくれるので、税務署員にとっては銀行調査は楽しみなのだそうです(93~94ページ)。税務署の実情とともに銀行の実態についてもこういうものと認識しておくべきなのでしょうか。
 税務調査をして追徴項目が見つからないと、税務調査官は重箱の隅をつつき事業者のちょっとしたミスをむりやり探し出し強引な追徴課税を課すことになり、その手段として期末の売上や経費の計上について時期的に微妙なものを3月に計上すべきなのに4月に計上していると指摘して追徴税を課すことが多い、「実際に、国税庁が発表する『税務調査での追徴課税』のほとんどは、この期間損益によるものなのです。」(87~88ページ)っていうのは、あきれます。著者が指摘するように、4月に計上しているのであれば、それは売上を隠したのではなく単に計上した時期を誤っただけ(3月に計上すべきか4月に計上すべきかは、見解の相違なり、課税通達の解釈を誤ったとか知らなかっただけ)で、その期の売上は少なくなっても翌期の売上が増えるので長い目で見ればプラスマイナスゼロ(88ページ)なのに、税務調査をしながら追徴が取れなかったという調査官の失点を避けるために追徴されるのでは、たまらないでしょう。そういうことをされた側はますます税務署がきらいになるだけでしょうね。
 国税庁OB税理士(23年間税務署に勤務すると税理士資格がもらえるそうです)が圧力をかけると調査が中止になることがある(著者が調査官時代に現実にストップをかけられたことが書かれています:182~185ページ)が、脱税請負人は報酬が桁外れで数千万単位、へたをすると数億円の報酬を請求される(185ページ)上に、OB税理士は会計・税務の実務に弱い人が多く、あまりにもミスが多く調査官がその顧問先に喜んで調査に行く(行けばミスを指摘して追徴税を取れる)という場合もある(192~193ページ)という指摘もなされています。住む世界が違うということでもありますが、情けない話でもあります。


大村大次郎 光文社新書 2014年1月20日発行
コメント
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