伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと

2016-05-01 18:51:32 | 実用書・ビジネス書
 ドワンゴの代表取締役でありながらなぜかジブリで見習プロデューサーをしていたという著者が、コンテンツとしてのジブリ/宮崎駿アニメの特徴等について語った本。
 アニメは情報量が少ない(アニメの場合情報量は線の数で決まる)ことで子どもにも理解しやすくなり子どもが好むが、ジブリ/宮崎駿のアニメは情報量を多くすることで大人にも楽しめるものになった、今はそれに倣い情報量の多いアニメが主流になっていると一般的に説明した上で、著者は、宮崎駿の絵は、実写に近づけるのではなく、脳が見たまま、さらには脳が見たがるものを描いている、子どもの視点では樹が実際よりも大きく崖は実際よりも深く見えるし、飛行機などの「見たいもの」は実際よりも大きく見える、現実には一つの視点からは見えないものが同時に見えてもそれを見たい者には不自然には見えない、そういった「主観的情報量」の多さ、主観的情報量に沿った絵が描けることが宮崎駿の才能でありジブリのアニメが成功してきた理由だと分析しています(45~60ページ、80~98ページ)。「もののけ姫」の犬神がシーンによって大きさが全然違うのも、海外のアニメではそういうことはあまりないが、日本の観客には自然に思えると説明しています(54~55ページ)。そうですね。「ポニョ」の母もそうですし。
 宮崎駿にはストーリーはどうでもよくて、表現、シーンが重視され、そのアニメーターが書ける人物や動きを活かすためにストーリーも変えてしまう、頭の中に浮かんだ良い場面、素敵な映像をつなげるように間を埋めてストーリーをつくる、いいシーンが描けなければストーリーごと削ってしまうと説明されています(158~161ページ)。そう言われるとなるほどと思います。たとえば「ハウルの動く城」を見たとき、原作の設定はむちゃくちゃに変えられているし、お話としても基本線から変わっていて、私の第一の感想は、宮崎駿は原作をアニメ化したかったのではなくて、ただ「動く城」というイメージと、それが暴走して壊れるシーンを描きたかったんじゃないかということでした。その時は、そう書きながらも、いくら何でもと思っていたんですが、当たらずとも遠からずだったのかと。
 「音は基本は控えめなほうがよくて、音楽をつけなければいけない時というのは、うまくいかなかったシーンをごまかすためなんですよ」(67ページ)って。ジブリアニメのどのシーンを言っているのか、これからジブリアニメを見るとき、楽しみが増えるかも。


川上量生 NHK出版新書 2015年4月10日発行
コメント
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