伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

負け逃げ

2016-05-28 23:37:20 | 小説
 田舎の高校で、生まれつき右脚が不自由な教室では優等生の野口が夜は誰彼構わずセックスして車から放り出されるのを見た教室ではいつも1人ウォークマンを聴いている同級生田上の歪な感情、密かに漫画家を志望していたところクラスで浮いている鈍くさい美輝が自己陶酔的な漫画を密かに書いていることを知り批評を続ける真理子の優越感とやっかみ、同僚教師と不倫を続けつつ結婚を誓いながら成就しなかった過去の恋人の幻影に引きずられているさえない中年の生物教師ヒデジの閉塞感、優しく優秀だったが引きこもり後失踪した兄に複雑な思いを持ち続けクラスメイトとの交際に巧く入れないやんちゃな高校生小林の鬱屈した心情、飲んだくれキャバクラ嬢と浮気する夫と母親の作ったものを食べず口も聞いてくれない娘に悩み同僚教師との不倫に走る志村妙子の悲哀、心が通わない母に優等生の顔を見せながら誰彼構わずセックスを続けつつ不器用な同級生田上を気にかける野口の当惑、といった田舎から出たい/出られない/故郷に残るしかない/残りたい思いと諦めを載せたけだるい群像劇短編連載。
 冒頭の「僕の災い」の書き出し「野口は、この村いちばんのヤリマンだ。けれど僕は、野口とセックスしたことがない。」がとても印象的で刺さる。小説の書き出しの重要さを語る教材として、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」と並べてもいいかも (^^ゞ


こざわたまこ 新潮社 2015年9月20日発行
コメント
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