伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

CMを科学する 「視聴質」で知るCMの本当の効果とデジタルの組み合わせ方

2016-06-21 00:08:55 | 実用書・ビジネス書
 若年層のテレビ離れの傾向が進み、他方で従来の「視聴率」のようなあまりにも大雑把な指標ではなく個人の視聴や視聴時の感情その他のデータが取れるような技術の進歩がある中で、効果的なテレビCMのあり方とネット広告や動画配信との組み合わせでの広告効果等の、今後の広告主にとっての効果的な広告スタイルを論じた本。
 CMの制作サイドと、広告主である企業とその広報担当者向けの本ですが、一般視聴者の立場で読むと、視聴者の個人情報を把握し利用する技術がここまで来ているのかと慄然とします。「感性アナライザ」という簡易測定キットで脳波を測定しそれを「好き」「興味」「集中」「ストレス」「沈静」の5つの感情に分析することでリアルタイムに視聴者の反応を知ることができるそうです(52~64ページ)。アフェクティーバのサービスでは、カメラ画像の顔認証をして誰が見ているかの識別、その注視度合い、表情分析がカバーできるようになっているそうです(218ページ)。これがネットに接続されたテレビやパソコン、スマホといったカメラ付きのメディアに応用されれば、それぞれの個別視聴者/利用者の視聴、ネット利用とそれに対する反応/受け止めが、私たちがネット関係の何らかのハード/ソフトの利用開始時に内容を読みもしないで同意する長大な文書の中に埋め込まれた一読してもその趣旨が理解できない契約条項によって同意したことになるネット企業に把握・集約されて分析利用されていくことになります。スマホでは、スクロールの速さとタップの記録により、ネット上の記事のどこに関心を持ち、どのような感情を抱いたかまで把握されることになります(236~237ページ)。そして、こういった脳波や表情の分析による無意識な反応までが広告のターゲットとなることは、この本で著者はその言葉を使わないように神経を使っていますが、禁止されているはずの「サブリミナルパーセプション」(潜在意識・無意識に働きかける広告:目で認識できない短時間のコマに広告を入れる等)類似のことがより巧妙にできるし狙われていることを示しています。広告制作/実施側では、このような個人情報と個人の無意識にまで踏み込んだ技術をすでに有しており、それを駆使することにためらいも見せないということを私たちはよく認識しておくべきだと思います。
 そういった警告(著者はそれを一般市民に警告するとか、また後ろめたい気持ちなどサラサラないのだと思いますが)の書として、注目しておきたいと思います。


横山隆治 宣伝会議 2016年4月15日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする