阪神・淡路大震災で被災して祖母と弟が行方不明のままの文科省一般職職員水鏡瑞希が、文科省の「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」に配属され、研究者、学界の重鎮、上司、同僚の総合職職員らの圧力に抗して、探偵事務所で培った推理力を駆使して、研究費獲得のための不正実験デモや不正研究を暴いていくミステリー小説。
国の研究費にたかる研究者と事業者、それらと癒着した官僚の不正を、職場で虐げられている一般職公務員が暴いていくという展開は、読み応えがあり、また爽快感があります。
しかし、水鏡瑞希が、最初に不正を暴く対象が、原発廃絶論者が神格化する抵抗運動家で、清貧のはずが災害見舞金に加えて寄付金で潤いロレックスの時計も隠していたなどというスキャンダルであり、文科省予算の研究費の不正をあげつらいながら、原子力関係の研究は何一つリストアップされないという作者の姿勢は、異様です。福島原発事故後、現代社会を扱う書き手は、一種の踏み絵を踏まされているという面はありますが、ここまではっきりと、原子力事業を援護する姿勢を見せられると、不正をただすなどと言われても、興ざめしてしまいます。
松岡圭祐 講談社 2015年10月8日発行
国の研究費にたかる研究者と事業者、それらと癒着した官僚の不正を、職場で虐げられている一般職公務員が暴いていくという展開は、読み応えがあり、また爽快感があります。
しかし、水鏡瑞希が、最初に不正を暴く対象が、原発廃絶論者が神格化する抵抗運動家で、清貧のはずが災害見舞金に加えて寄付金で潤いロレックスの時計も隠していたなどというスキャンダルであり、文科省予算の研究費の不正をあげつらいながら、原子力関係の研究は何一つリストアップされないという作者の姿勢は、異様です。福島原発事故後、現代社会を扱う書き手は、一種の踏み絵を踏まされているという面はありますが、ここまではっきりと、原子力事業を援護する姿勢を見せられると、不正をただすなどと言われても、興ざめしてしまいます。
松岡圭祐 講談社 2015年10月8日発行