地道に質の良い商品を作るという方針を貫く服飾会社に勤める45歳独身のデザイナー瀬尾水樹が、上司から自社の半年後の服飾業からの撤退を知らされ、将来を憂いているとき、中学高校の同級生堂林憲吾から自らの才能を見出して専門学校への進学を勧めてくれた恩師の美術教師の入院を知らせる電話があり、故郷の京都に見舞いに行き、堂林から京都の職人のネットワークで伝統技術を生かした洋服を作り産業の再生につなげたいという構想を聞かされ、非現実性を感じつつ惹かれるという「現在」と、行方不明の幼馴染森嶋信也との悲喜こもごもの「過去」の回想を組み合わせつつ展開する中高年青春ノスタルジー小説。
貧しさの中で、困った人や病気の家族を抱え、懸命に働き家族を支えて生きる者たちの悲しさ、苦しさとささやかな喜びが描かれ、読んでいて楽しくはないけれども、庶民の弁護士としては好感を持ちます。
過去の回想、かつての、30年近く前の思いが、心の支えとなり、現在の苦境の打開策につながるという展開は、現実の世界では、幻想への逃避につながりかねないものですが、大人のファンタジーとして、そういうのもありかなと思います。
藤岡陽子 新潮文庫 2016年9月1日発行(単行本は2014年1月)
貧しさの中で、困った人や病気の家族を抱え、懸命に働き家族を支えて生きる者たちの悲しさ、苦しさとささやかな喜びが描かれ、読んでいて楽しくはないけれども、庶民の弁護士としては好感を持ちます。
過去の回想、かつての、30年近く前の思いが、心の支えとなり、現在の苦境の打開策につながるという展開は、現実の世界では、幻想への逃避につながりかねないものですが、大人のファンタジーとして、そういうのもありかなと思います。
藤岡陽子 新潮文庫 2016年9月1日発行(単行本は2014年1月)