伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

患者の話は医師にどう聞こえるのか 診察室のすれ違いを科学する

2020-12-07 00:02:55 | 自然科学・工学系
 内科医として勤務する著者が、自己の経験と他の患者や医師のインタビュー等を通して医師と患者のコミュニケーションについて論じた本。
 多数の患者を診療しなければならず短時間で患者から多くの情報を得て迅速に判断する必要があり時間に追われる医師が、患者の言葉を遮って自分が聞きたいことだけを聞こうとしたり、医師自身は言葉を尽くしわかりやすく繰り返し説明したつもりでも患者が理解をしていない様子について、著者は医師の立場に立ちながら、あくまでも患者の差し迫った事情を理解する必要があった、患者にしゃべりたいだけしゃべらせても(患者の言葉を遮らなくても)大半の患者はさほど長時間しゃべり続けられない、説明するだけでなくて理解しているか患者に言わせてみる時間を取ればよかったと、自省的に語っています。
 時間の制約と専門知識のギャップからコミュニケーション不足を生じやすい(相談者の話/真実/意図を聞き損ねるリスクがある、相談者がこちらの説明を理解しているように見えて理解していない)ことは、弁護士と相談者・依頼者間でも同様に問題になります。そういう問題意識から、興味深く読みました。もっとも、弁護士の場合(若手は知りませんが)、医師のように電子カルテへの書き込みや診断ツール参照のためにコンピュータに首っ引きになって患者の顔もろくに見ないということはなく、他方で医師の場合わがままな患者や嘘つきの患者に言うままに応じても治療は患者のためになり間違うときも影響を受けるのは患者なのに対し、弁護士の場合身勝手な依頼者の意に沿うようにすると相手方などの周囲に迷惑が及ぶという問題を気にしなければならないという違いがありますが。


原題:What Patients Say , What Doctors Hear
ダニエル・オーフリ 訳:原井宏明、勝田さよ
みすず書房 2020年11月10日発行(原書は2017年)
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