頭部への打撃や、頭部への直接の打撃がなくても頭部が揺さぶられ加速・減速のエネルギーが加えられることにより脳がダメージを受け、事故直後のみならず数日、数週間、人によっては数か月して記憶障害、注意障害(集中できず長続きしない、判断力低下等)、コミュニケーション障害、無気力、脱抑制、疲労感、嗅覚・味覚異常、神経過敏、歩行障害、排泄障害等の症状・障害が生じるという軽度外傷性脳損傷(Mild Traumatic Brain Injury)について、高次脳機能障害診療に取り組んできた医師である著者が解説した本。
画像診断上顕著な病変が見られず、画像診断の進歩もあり画像診断により器質的病変を確認できるようになっても早期からの継続的な画像診断記録を残しておく必要があり、他方で症状が事故後直ちに生じるとは限らずしばらく経ってから生じることが多々あり、しかもその症状に他覚的所見が見られないとなると、自賠責や裁判での認定のハードルは高く、ほとんど障害と認定されず、障害が認められても事故との因果関係が認められないということになりがちです。頭部への打撃が強度でなく事故時に意識障害がないのに強度の後遺症が生じたと主張されれば、こういった情報に接していなければ、詐病を疑ってしまいます。病像についての研究や診断技術が進んで、より確実な判断ができるようになり、理解が進むといいのですが。
私たちの世代は、すでに「あしたのジョー」で「パンチ・ドランカー」が記述されていたのに(思えば、少年漫画でけっこう最新の医学知識が紹介されていたのですね)、外傷に至らない、脳が揺さぶられること自体の危険性を深刻に受け止めずに来たのだと、この本で久々に「パンチ・ドランカー」という言葉に触れ(4ページ)、再認識してしまいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en3.gif)
山口研一郎 岩波ブックレット 2020年11月5日発行
画像診断上顕著な病変が見られず、画像診断の進歩もあり画像診断により器質的病変を確認できるようになっても早期からの継続的な画像診断記録を残しておく必要があり、他方で症状が事故後直ちに生じるとは限らずしばらく経ってから生じることが多々あり、しかもその症状に他覚的所見が見られないとなると、自賠責や裁判での認定のハードルは高く、ほとんど障害と認定されず、障害が認められても事故との因果関係が認められないということになりがちです。頭部への打撃が強度でなく事故時に意識障害がないのに強度の後遺症が生じたと主張されれば、こういった情報に接していなければ、詐病を疑ってしまいます。病像についての研究や診断技術が進んで、より確実な判断ができるようになり、理解が進むといいのですが。
私たちの世代は、すでに「あしたのジョー」で「パンチ・ドランカー」が記述されていたのに(思えば、少年漫画でけっこう最新の医学知識が紹介されていたのですね)、外傷に至らない、脳が揺さぶられること自体の危険性を深刻に受け止めずに来たのだと、この本で久々に「パンチ・ドランカー」という言葉に触れ(4ページ)、再認識してしまいました。
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山口研一郎 岩波ブックレット 2020年11月5日発行