広島県内らしき「三豊市中林町」(香川県に「三豊市」が実在するのですが、三豊は新神戸からこだまで2時間の新幹線停車駅とされているので…)の新興住宅地に居住していた小学1年生の時に2つ年上の姉が行方不明になり2年後に戻ってきたが、その後戻ってきたのが本当に姉なのかに疑問を持ち続ける主人公が、大学2年生の夏に母の入院を聞いて帰郷した際に、姉の失踪事件を回想し、久しぶりに会う/会うのを回避しているような家族の様子に改めて疑念を生じて真相に迫ろうとするというミステリー。
ミステリーで上のように書いていいのか、本来ならば迷うところのはずですが、小学1年生の時に姉が失踪した事件があり現在は大学生の姉が実家から大学に通っていること、三豊駅前でその姉とかつて姉にあった右目の横の特徴のある傷を持つ連れの女性を見かけたこと、姉に疑い/アンデルセン童話の「えんどうまめの上にねたおひめさま」の蒲団越しの豆粒のようなかすかな違和感を持ち続けていることが冒頭で明かされ、このミステリーが姉の失踪事件と戻ってきた姉の正体をめぐるものという構図が明示されています。
この最初から示された謎の解明に向けて長編を読ませていく筆力はさすがだと思いますが、最初に枠組みを示されて向かうべきポイントが見えている状態でページ数の約7割を失踪事件から帰還までに費やすのはバランスが悪いように思えます。
謎解き以外では、妹側から見た姉への心情の描写が読みどころとなります。
湊かなえ 新潮文庫 2017年7月1日発行(単行本は2014年3月)
「週刊新潮」連載
ミステリーで上のように書いていいのか、本来ならば迷うところのはずですが、小学1年生の時に姉が失踪した事件があり現在は大学生の姉が実家から大学に通っていること、三豊駅前でその姉とかつて姉にあった右目の横の特徴のある傷を持つ連れの女性を見かけたこと、姉に疑い/アンデルセン童話の「えんどうまめの上にねたおひめさま」の蒲団越しの豆粒のようなかすかな違和感を持ち続けていることが冒頭で明かされ、このミステリーが姉の失踪事件と戻ってきた姉の正体をめぐるものという構図が明示されています。
この最初から示された謎の解明に向けて長編を読ませていく筆力はさすがだと思いますが、最初に枠組みを示されて向かうべきポイントが見えている状態でページ数の約7割を失踪事件から帰還までに費やすのはバランスが悪いように思えます。
謎解き以外では、妹側から見た姉への心情の描写が読みどころとなります。
湊かなえ 新潮文庫 2017年7月1日発行(単行本は2014年3月)
「週刊新潮」連載