成功した不動産業者の2代目で隠居している75歳の二階堂昭一から、品川区役所前に店舗とそのすぐ裏の平屋の自宅を格安で借り入れてメニューはハンバーグとナポリタンの2つだけという飲食店「モトキ」を経営する49歳独身の兵庫旭が、二階堂親子や行きつけのスナック「輪」のママや常連客、妹麗とその夫などと過ごす様子を描いた小説。
親がかつて繁盛した料理屋を経営し、天性の味覚と嗅覚を持つというのですが、「普段の食事はほぼすべて出来合いのもので済ませていた。家ではそばやうどんを茹でるくらいで、台所に調理器具はほとんど置いていない」(18ページ)という人が調理する店がはやってる(昼餉時には行列ができることもある:42ページ)という設定はかなり無理があるように思えます。
旭が二階堂からただ同然で店舗と自宅を借りているのは「交換条件」があるからというのが、割と早く登場し(14ページ、より明確には42ページ)、それがその後ずっと引っ張られます。終盤になって(201ページ)約束した交換条件が明らかにされるのですが、これが最初に明らかにされていた場合と、ここまで引っ張った場合とで、読み味がそれほど変わるだろうかという疑問を持ちました。
結末も、今どきこういうネタを書くセンスに驚きました。
白石一文 文藝春秋 2023年5月30日
親がかつて繁盛した料理屋を経営し、天性の味覚と嗅覚を持つというのですが、「普段の食事はほぼすべて出来合いのもので済ませていた。家ではそばやうどんを茹でるくらいで、台所に調理器具はほとんど置いていない」(18ページ)という人が調理する店がはやってる(昼餉時には行列ができることもある:42ページ)という設定はかなり無理があるように思えます。
旭が二階堂からただ同然で店舗と自宅を借りているのは「交換条件」があるからというのが、割と早く登場し(14ページ、より明確には42ページ)、それがその後ずっと引っ張られます。終盤になって(201ページ)約束した交換条件が明らかにされるのですが、これが最初に明らかにされていた場合と、ここまで引っ張った場合とで、読み味がそれほど変わるだろうかという疑問を持ちました。
結末も、今どきこういうネタを書くセンスに驚きました。
白石一文 文藝春秋 2023年5月30日