戦闘機「散香マークB」に乗るエースパイロット「カンナミユウヒチ」が、新たに兎離洲(ウリス)に配属され、指揮官草薙水素の指示の下、同室者の土岐野らとともに任務に就き、出撃して対象を偵察し相手方の戦闘機を撃墜し、同僚と酒を飲むなどしている様子を描いた小説。
カンナミが、自分たちのことを「戦争反対と叫んで、プラカードを持って街を歩き、その帰り道に喫茶店でおしゃべりをして、帰宅して冷蔵庫を開けて、さて、今夜は何を食べようか、と考える…、そんな石ころみたいな平和が本ものだと信じているよりも、少しはましだろうか。自分で勝ち取ったものなどありはしないのに、どうやったら自分のものだと思い込めるか、そんなことばかり考えて生きているよりも、少しはましだろうか」(308ページ)と思い惑うあたりに、作者の戦争や反戦を言う者への考えが表れているように思えました。
2008年に映画を見て、その15年後になって、最近出た文庫新装版を読んだのですが、映画で踏み込んだ説明がなかったのでよくわからないと思ったところが、原作では映画以上にはっきり説明されず、しかも終盤で初めて話題になるという形になっています(そういう事情から、そこに踏み込んだ感想は避けておきます)。
巻末に、新装版のカバーイラストをつけたマンガ家の短文と、英語版のためのインタビューがつけられています。映画を見た読者からは、映画のイメージに合わないイラストをつける意味に疑問を感じ、インタビュアーの意識にもズレを感じました。戦闘機の機構については何も知らない、すべて想像、ノンフィクションではないから実際と同じである必要はなくむしろ違っていた方がよいと考えている(341~342ページ)というのを肯定的に評価するのは、ちょっとどうかと思いました。ファンタジーじゃなくてSFであるのなら、実際に存在する機械類についてはきちんと科学的に描き込むべきじゃないか、そこを省いてしまいそれを何とも思わない姿勢が、戦闘が続けられている設定、「キルドレ」についての設定が、詰められていない/詰めが甘いという私の読後感につながっているのではないかと思いました。
森博嗣 中公文庫 2022年5月25日発行(初版2004年10月25日、単行本2001年6月25日)
カンナミが、自分たちのことを「戦争反対と叫んで、プラカードを持って街を歩き、その帰り道に喫茶店でおしゃべりをして、帰宅して冷蔵庫を開けて、さて、今夜は何を食べようか、と考える…、そんな石ころみたいな平和が本ものだと信じているよりも、少しはましだろうか。自分で勝ち取ったものなどありはしないのに、どうやったら自分のものだと思い込めるか、そんなことばかり考えて生きているよりも、少しはましだろうか」(308ページ)と思い惑うあたりに、作者の戦争や反戦を言う者への考えが表れているように思えました。
2008年に映画を見て、その15年後になって、最近出た文庫新装版を読んだのですが、映画で踏み込んだ説明がなかったのでよくわからないと思ったところが、原作では映画以上にはっきり説明されず、しかも終盤で初めて話題になるという形になっています(そういう事情から、そこに踏み込んだ感想は避けておきます)。
巻末に、新装版のカバーイラストをつけたマンガ家の短文と、英語版のためのインタビューがつけられています。映画を見た読者からは、映画のイメージに合わないイラストをつける意味に疑問を感じ、インタビュアーの意識にもズレを感じました。戦闘機の機構については何も知らない、すべて想像、ノンフィクションではないから実際と同じである必要はなくむしろ違っていた方がよいと考えている(341~342ページ)というのを肯定的に評価するのは、ちょっとどうかと思いました。ファンタジーじゃなくてSFであるのなら、実際に存在する機械類についてはきちんと科学的に描き込むべきじゃないか、そこを省いてしまいそれを何とも思わない姿勢が、戦闘が続けられている設定、「キルドレ」についての設定が、詰められていない/詰めが甘いという私の読後感につながっているのではないかと思いました。
森博嗣 中公文庫 2022年5月25日発行(初版2004年10月25日、単行本2001年6月25日)