伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

動物がくれる力 教育、福祉、そして人生

2023-08-17 22:42:26 | ノンフィクション
 不登校児童、虐待を受けた子どもたち、受刑者、障害者、重症患者らが犬、猫等とのふれあいを通じて癒やされ人生に前向きになれる様子とそのような場を設けている施設、活動についてレポートした本。
 放置すれば殺処分が待つ保護動物と虐待を受けた子どもや受刑者などをマッチングすることで、自らと似た境遇にあった動物が無条件に愛情を見せ傍に寄り添ってくれてその動物を世話し交流できる環境をつくり、人とはうまくコミュニケーションできなかった者が積極的になっていくというWin-Winの活動が多く紹介され、なるほどなぁと思います。
 虐待を受けた子どもがリラックスして証言できるように付き添うという付添犬の活動・活用が紹介されています(93~102ページ)。リラックスできること自体はいいのだろうと思うのですが、その付添犬の持ち主やその過程で関与する人から子どもが何らかの影響を受けないか、それに気を使って証言が歪まないか、私にはわかりませんが、仕事柄気になってしまいます。


大塚敦子 岩波新書 2023年4月20日発行
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心理学をつくった実験30

2023-08-17 00:05:25 | 人文・社会科学系
 心理学の歴史に概ね沿って、心理学の領域別に代表的な実験を紹介した本。
 目撃供述の信用性に関して紹介されているロフタスの実験。150人の大学生に交通事故の動画を見せてその後に事故の様子を記述させた上で監督者からいくつかの質問がなされ、その中で50人には「車が激突したときの速さはどれくらいでしたか」という質問があり、50人には「車が当たったときの速さはどれくらいでしたか」という質問があり、50人には速さについての質問がなかった、その1週間後に「事故によって多くのガラスが飛び散りましたか」という質問をしたら、動画視聴の日に「激突」と聞かれた50人のうち16人が「はい」と答え、それ以外のグループで「はい」と答えたのは7人、6人であったのだそうです(102~104ページ)。仕事柄、関心のある実験ですが、ガラスが飛び散ったかを聞くときに「激突」というかの問題ではなく、動画を見た直後に「激突」とすり込んだ場合の効果なのですね。また、そういう刷り込みがなくても誤った答えをした人が1割強いる、7割弱はその刷り込みに影響されなかったということでもあるのですね。
 著者はこの本の特徴について、実験データなどはすべてオリジナルの論文か、そうでなくても、オリジナルに近い著書などを取り寄せて確認したと自負しています(258~259ページ)。心理学の実験等の意味を評価するには、実験の方法、サンプル数、結果のデータ、さらに言えば他の実験による再現性などを確認することが大事です。原典の確認の重要性を改めて感じました(といって、私自身は、上述のロフタスの実験の原典にまったく当たっていない訳ですが…)。


大芦治 ちくま新書 2023年4月10日発行
 
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