伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

津波 暴威の歴史と防災の科学

2023-12-23 22:08:54 | 自然科学・工学系
 津波被害の歴史を解説した本。
 津波研究者の手による研究書なのですが、時系列に沿った記述ではなく、また体系的な論述でもなく、著者の語る物語的な配列と流れで、過去の被害もインタビューに重きを置いた紹介をしていて、読み物風の構成・体裁になっています。
 現時点での日本の読者の目からは、津波というと東日本大震災を想起するのですが(原題の "TSUNAMI" からサザンオールスターズの歌を想起する人もいるかもしれませんが)、2011年の日本の津波被害に度々言及はしているもののそれを紹介した章はありません。海外の視点(著者の所属はオーストラリアとハワイ)からは東日本大震災は津波被害としては代表的なものではないということなのでしょう。1755年のリスボンの津波による経済的損害は2011年の津波で日本が被った経済的損害の約2倍と明記されている(224ページ)のを見ると、そう学ぶべきなのかと思いました。
 この本でエピソードを紹介する度、人間は歴史に/被害に学ばない、簡単に忘れてしまうという指摘が繰り返されています。肝に銘じておきたいと思いつつ、そういうもんなんですよねとも思ってしまいます。


原題:TSUNAMI The World's Greatest Waves
ジェイムズ・ゴフ、ウォルター・ダッドリー 訳:千葉敏生
みすず書房 2023年10月2日発行(原書は2021年)
コメント
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