伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

無敵の犬の夜

2023-12-18 00:44:55 | 小説
 4歳のときにタンスに隠れていて扉を勢いよく閉められて右手の小指と薬指を失った九州の田舎町の中学2年生五島界が、対立し授業中に指のことでからかった生物教師半田への復讐をしてくれたことから工業高校に通う不良の橘に憧れを持ち、橘が東京に行き自分の方を向いてくれなくなったことなどに不満を持ち暴走していくという展開の青春小説。
 中学生男子の短絡的な思考、素直になれなさ加減、意気がり見栄張り引っ込みがつかなくなる様子が描かれ、それが保育園からずっと一緒という幼なじみの同級生田中杏奈の言動と比較されることで際立ちます。こういうシチュエーションには、至らなかったけれど、中学生の頃ってそうだった/バカだったよなぁと振り返って懐かしむ作品です。それにしても最後の展開はどうかと思いますが。
 この作品で、五島界は2008年の正月に4歳で指を失ったという設定なんです(4~5ページ)が、そうすると五島界の中学2年生は、誕生日がその正月以前なら2017年4月から2018年3月の間、誕生日が正月後なら2016年4月から2017年3月の間。初出が「文藝」2023年冬季号のこの作品はなぜにあえて数年前の話にしたのでしょう。


小泉綾子 河出書房新社 2023年11月30日発行
文藝賞受賞作
コメント
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