「泣くな研修医」シリーズの第5巻。雨野隆治が研修医になるまでの学生時代を描く、いわばエピソード0の作品です。
医学部で医学生がどのような勉強と生活をしているのかがイメージできるように、医学生が歩む道のり・ステージを順を追って書かれていて、部外者には興味深く読めますが、小説としては、大きなあるいは劇的な展開がない感じです。特に、雨野隆治がなぜ医者になろうと決意したのか、なぜ消化器外科を選んだのかが、釈然としません。シリーズ第1巻の冒頭、幼い隆治の兄が病死するエピソードが置かれていて、そうであればふつうは隆治は兄を病気で失ったことから兄のような、あるいは兄を失った家族のような不幸をなくすために医者になることを決意したという展開を予想します。しかし、この作品では、第1巻の終盤でそうではないような描き方をし、第5巻では医者になりたいと思った「はっきりとしたきっかけはわからないが、小さい頃から漠然と思っていた。目指す職業として決めたのは高校一年生の頃だった」(21ページ)としています。きっかけはわからないと書くくらいなら、どうして兄の病死を第1巻の冒頭に書いたのか、不思議です。ましてや外科医を希望した動機に至っては、カッコいいから(277ページ)って…そういう軽い動機で医者になってもちゃんとやっていけるんだって、(実際、学生のときは多くはそうでしょうし)言いたいのかもしれませんが…
中山祐次郞 幻冬舎文庫 2023年4月10日発行
医学部で医学生がどのような勉強と生活をしているのかがイメージできるように、医学生が歩む道のり・ステージを順を追って書かれていて、部外者には興味深く読めますが、小説としては、大きなあるいは劇的な展開がない感じです。特に、雨野隆治がなぜ医者になろうと決意したのか、なぜ消化器外科を選んだのかが、釈然としません。シリーズ第1巻の冒頭、幼い隆治の兄が病死するエピソードが置かれていて、そうであればふつうは隆治は兄を病気で失ったことから兄のような、あるいは兄を失った家族のような不幸をなくすために医者になることを決意したという展開を予想します。しかし、この作品では、第1巻の終盤でそうではないような描き方をし、第5巻では医者になりたいと思った「はっきりとしたきっかけはわからないが、小さい頃から漠然と思っていた。目指す職業として決めたのは高校一年生の頃だった」(21ページ)としています。きっかけはわからないと書くくらいなら、どうして兄の病死を第1巻の冒頭に書いたのか、不思議です。ましてや外科医を希望した動機に至っては、カッコいいから(277ページ)って…そういう軽い動機で医者になってもちゃんとやっていけるんだって、(実際、学生のときは多くはそうでしょうし)言いたいのかもしれませんが…
中山祐次郞 幻冬舎文庫 2023年4月10日発行
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