腎機能が著しく低下し、透析クリニックで透析を受けている患者が体調の悪化等で通院ができなくなった後、透析を止めれば数週間も持たないが、癌と重症心不全以外には緩和ケアの保険適用がない日本でどうすればいいのか、その出口のなさを、夫の看取りの経験とその後の取材で描いた本。
父親が透析を受け続けていた身には、いろいろと沁みる本でした。
終末期以前に、現在日本で約35万人が受けている透析自体の過酷さを、畳針のような太い針を腕に深々と差し込み不自然な激しい血流で血液を回すことによる体への負担、その状態で寝返りも打てずに過ごす4時間、自分で真似てみたがただ4時間同じ姿勢を保つのは無理だったというノンフィクションライターらしい観察(25~28ページ)が秀逸です。離れて暮らしていたし一度も透析に立ち会わなかった私には想像力が及びませんでした。
「多くの透析クリニックは元気に通ってこられる患者、少なくとも座位を保つことができる患者を前提としている。トラブルが起きた患者は、提携する大病院に送ってしまえばいいのだ」(129ページ)、「そこから先はもう“永遠の入院透析”しか選択肢がない」(280ページ)という実情は、私も2023年1月に父親が透析を受けていたクリニックに呼び出されて、もううちでは対応できないから入院させるかあるいはもう覚悟をするようにと通告され、経験しました。
前半の闘病記録の生々しい迫力に対し、透析治療の現状等を語る後半は、抑えた記述を心がけているということかも知れませんが、現状批判はやや遠慮がちに思え、他方で解決をほぼ腹膜透析(自宅で可能な透析)への期待に一元化していることに、それでいいのかなぁという思いを持ちました。
2023年1月に透析クリニックで説明を受けた際には、腹膜透析は、家族側で説明を聞いてやれそうに思えませんでした。それが医者側でも認識が深まっていない、患者家族側の偏見だということなのでしょうけれども。
堀川惠子 講談社 2024年11月20日発行
父親が透析を受け続けていた身には、いろいろと沁みる本でした。
終末期以前に、現在日本で約35万人が受けている透析自体の過酷さを、畳針のような太い針を腕に深々と差し込み不自然な激しい血流で血液を回すことによる体への負担、その状態で寝返りも打てずに過ごす4時間、自分で真似てみたがただ4時間同じ姿勢を保つのは無理だったというノンフィクションライターらしい観察(25~28ページ)が秀逸です。離れて暮らしていたし一度も透析に立ち会わなかった私には想像力が及びませんでした。
「多くの透析クリニックは元気に通ってこられる患者、少なくとも座位を保つことができる患者を前提としている。トラブルが起きた患者は、提携する大病院に送ってしまえばいいのだ」(129ページ)、「そこから先はもう“永遠の入院透析”しか選択肢がない」(280ページ)という実情は、私も2023年1月に父親が透析を受けていたクリニックに呼び出されて、もううちでは対応できないから入院させるかあるいはもう覚悟をするようにと通告され、経験しました。
前半の闘病記録の生々しい迫力に対し、透析治療の現状等を語る後半は、抑えた記述を心がけているということかも知れませんが、現状批判はやや遠慮がちに思え、他方で解決をほぼ腹膜透析(自宅で可能な透析)への期待に一元化していることに、それでいいのかなぁという思いを持ちました。
2023年1月に透析クリニックで説明を受けた際には、腹膜透析は、家族側で説明を聞いてやれそうに思えませんでした。それが医者側でも認識が深まっていない、患者家族側の偏見だということなのでしょうけれども。
堀川惠子 講談社 2024年11月20日発行
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます