伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

スウィンダラーハウス

2024-09-14 21:33:49 | 小説
 脱出口が見当たらない「研修室」に閉じ込められ、ディスプレイ越しに特殊詐欺のマニュアルや名簿を示して指示する道化の看守に追い立てられながら特殊詐欺の掛け子をし始めた、闇バイト応募者3名と闇バイトリクルーター1名、保険の飛び込み営業で入ってしまった1名、食品配達に来て眠らされて送り込まれた1名の計6名と、特殊詐欺の検挙に熱意を示す警察官の攻防を描いた小説。
 軽めのタッチと後半のひねり、黒幕の犯行の動機の切なさで読ませる作品です。
 私は、消費者側の弁護士(詐欺被害では被害者側の弁護士)でもあり、特殊詐欺の特に幹部にはまったく共感するところはなくただ極めて悪質な犯罪者としか思えませんが、何ごとも多角的な視点は大切ですので、こういう作品もあっていいかなとも思いました。他方で、現実的にはほぼあり得ない幻想で特殊詐欺犯への評価をあいまいにするようなことをしていいのかという思いもあります。
 また、全共闘世代でも就職氷河期世代でもなく今どきの若者でもない30代半ばの作者が、全共闘世代やそれより上の高齢者と若者の世代間対立を煽るような作品を書いていることにも、私は違和感というか不快感を覚えました。


根本聡一郎 祥伝社 2024年6月30日発行

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 箱男 | トップ | サマーレスキュー »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事