独占禁止法(競争法)の教科書。
独禁法の構成・条文(名称も)が歴史的経緯から実態・実情に即していないという立場から、国際的な競争法の枠組みを意識し、共通の要件等はまとめる、条文や表向きの説明にないことでも現実にはそう考えた方が説明できることは説明するとして、著者から見て理論的な構成を試みています。おそらくは、それは独禁法という法律や公正取引委員会の姿勢を学ぶのに適しているのだと思いますが、私が事件に即してものを考えることが仕事がら習い性になっていることから裁判や審決等についてもう少し事案を具体的に説明して欲しいと感じることに加えて、法律や公正取引委員会の「不公正な取引方法(一般指定)」の条文がほとんど説明なしに「2条9項○号」とか「一般指定○項」と書かれていて、その内容を理解していることを当然の前提として記述が進んでいくのに難渋しました。六法等の資料を横に置いてその都度参照しながら、学習するという、まさに大学の学生のように読むことが予定されていて、これだけで通読するのはかなり厳しい。もちろん、法律の条文を紹介しても難しい印象が増すだけで、またそれを省略しているからこれだけ薄い本にできるのですが…
庶民の弁護士としての私の関心からは、これから公正取引委員会の活躍を期待したい中小企業・庶民・消費者いじめを防ぐ領域の「優越的地位濫用行為」と「下請法」の解説が合わせて16ページ(203ページ~218ページ)しかないのも残念です。
実例の解説が少なく理論重視という点については、著者自身意識しているらしく、サッカーにたとえれば実務家がFWで、そのために理論を作る学者は絶妙なパスを出すMFだと、最後(249ページ~251ページ)に述べています。私にとっては、学生の頃はこういう教科書を(六法を脇に置いて)苦もなく読めたはずなのに、もうこういう教科書を読むのは難しくなっているなぁという感慨が大きな本でした。
白石忠志 有斐閣 2023年2月15日発行(初版は1997年10月5日)
独禁法の構成・条文(名称も)が歴史的経緯から実態・実情に即していないという立場から、国際的な競争法の枠組みを意識し、共通の要件等はまとめる、条文や表向きの説明にないことでも現実にはそう考えた方が説明できることは説明するとして、著者から見て理論的な構成を試みています。おそらくは、それは独禁法という法律や公正取引委員会の姿勢を学ぶのに適しているのだと思いますが、私が事件に即してものを考えることが仕事がら習い性になっていることから裁判や審決等についてもう少し事案を具体的に説明して欲しいと感じることに加えて、法律や公正取引委員会の「不公正な取引方法(一般指定)」の条文がほとんど説明なしに「2条9項○号」とか「一般指定○項」と書かれていて、その内容を理解していることを当然の前提として記述が進んでいくのに難渋しました。六法等の資料を横に置いてその都度参照しながら、学習するという、まさに大学の学生のように読むことが予定されていて、これだけで通読するのはかなり厳しい。もちろん、法律の条文を紹介しても難しい印象が増すだけで、またそれを省略しているからこれだけ薄い本にできるのですが…
庶民の弁護士としての私の関心からは、これから公正取引委員会の活躍を期待したい中小企業・庶民・消費者いじめを防ぐ領域の「優越的地位濫用行為」と「下請法」の解説が合わせて16ページ(203ページ~218ページ)しかないのも残念です。
実例の解説が少なく理論重視という点については、著者自身意識しているらしく、サッカーにたとえれば実務家がFWで、そのために理論を作る学者は絶妙なパスを出すMFだと、最後(249ページ~251ページ)に述べています。私にとっては、学生の頃はこういう教科書を(六法を脇に置いて)苦もなく読めたはずなのに、もうこういう教科書を読むのは難しくなっているなぁという感慨が大きな本でした。
白石忠志 有斐閣 2023年2月15日発行(初版は1997年10月5日)
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