伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

検証 トヨタグループ不正問題 技術者主導の悲劇と再生の条件

2024-09-21 22:26:14 | ノンフィクション
 2021年以降立て続けに発覚したトヨタ自動車販売店の車検不正、日野自動車エンジン認証不正(ディーゼルエンジンの排出ガス及び燃費についての認証不正)、豊田自動織機エンジン認証不正(ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンの排出ガスについての認証不正)、ダイハツ工業認証不正(側面衝突試験等での不正)、愛知製鋼公差不正(エンジン部品用鋼材の公差外れ品納品)、トヨタ自動車の認証不正(エンジン出力試験等での不正)について、その経緯、第三者調査委員会や国土交通省の調査等の結果等を解説し、著者が考える「真相」について述べた本。
 「詳細な取材から突き止めた不正の真相について明らかにしていく」という言葉が何度か記載されているのですが、事実関係については、基本的に公にされている調査報告書と報道によっていて、著者が書き加えているのは匿名の自動車メーカー等の技術者の意見による推測(トヨタ側の主張はあり得ないとか、こうだろうとか)と評価です。著者の主張の根幹は、第三者委員会の調査報告書やトヨタ側の説明では認証を行った部署に責任が押しつけられ、管理職は知らなかったとしているが、認証を行う部署には不正を行う利益がないし技術者が主導でないとそのような不正は行いえないから開発部署が主導であるはずだし、開発部署が不正に手を染めたのは規制をクリアする技術が不足していたためである、管理職が知らなかったなどあり得ないし管理職が許可しなければ予算等の問題で実施できないというようなところです。著者としては、トヨタ側は開発部署の技術力不足は口が裂けても言いたくないところでそれを暴いたところに価値があると言いたいのでしょうけど、全体の印象としては、基本的にトヨタ自動車本体については高い技術力とか会社の体制を評価というか賛美しているので、門外漢の読者にとっては、トヨタ自動車の公式見解とどれほど違うのか、よくわかりません。
 第三者調査委員会の報告書について、「真因に切り込んだと評価できるものは皆無だ」(6ページ)と指摘しているのはそういうものでしょう。部外者が、調査対象企業の従業員にインタビューするだけで、仮に本気でやっても嘘をついたり隠しごとをするものを見破れるかはかなり疑問ですし、そもそも調査対象の企業に雇われて報酬をもらっている人たちが雇い主に不利なことを真剣に暴こうとするはずもないと思います。それで「みそぎ」が済んだとする企業の姿勢に、さらにはそれで真相解明が済んだと扱い「第三者調査委員会」を評価したり賞賛するマスコミの姿勢にも呆れます。
 章を分けて書いているからという面はあると思いますが、同じことが同じ表現で繰り返し書かれているものが多いなぁと感じました。ダブりをカットしてスリムにしたら3割くらいページが減らせるんじゃないかという印象を持ちました。


近岡裕 日経BP 2024年7月16日発行

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