末期の膵臓癌と診断されて余命1年と宣告された総合出版社の取締役に就任し53歳になったばかりの菊池三喜男が、仕事を放り出して神戸に転居し、総合月刊誌編集者だった20年前に電話をしてきた傷病を治す超能力があるという女性を探し歩くという展開の小説。
余命1年の宣告を受けているという設定なんですが、それが53歳のおっさんで、大会社の幹部で財産も十分に持っているというと、全然かわいそうだという心境になれず、共感できない。この人物が余命1年と聞いて何をやりたいかと考えた末に出てくるのが「死ぬまでのこの一年のあいだに誰か女性を見つけて妊娠させられないだろうか」(上巻48ページ)というのですからなおさらです。まぁこの作品は難病ものという分類とは違うのでしょうけれども、余命宣告されたのが若い世代で健気な人物ならほぼ確実に涙を誘う(「だってバズりたいじゃないですか」で楓の運命に涙したばかりですし)のと対照的に思えました。
もっとも、自分と年齢層が近い(生まれが私の2年前)ので、感覚が似ていることもあり、「あと一時間」の命なら何をするのが正しいのだろうかと自問して、どうせあと1時間しか生きられないのならばぽかぽかとあたたまったベッドの上でこのまま眠ってしまうのが一番と考える(上巻269ページ)あたり、そうだよなぁと笑いました。
白石一文 毎日文庫 2023年7月30日発行(単行本は2014年)
「毎日新聞」連載
余命1年の宣告を受けているという設定なんですが、それが53歳のおっさんで、大会社の幹部で財産も十分に持っているというと、全然かわいそうだという心境になれず、共感できない。この人物が余命1年と聞いて何をやりたいかと考えた末に出てくるのが「死ぬまでのこの一年のあいだに誰か女性を見つけて妊娠させられないだろうか」(上巻48ページ)というのですからなおさらです。まぁこの作品は難病ものという分類とは違うのでしょうけれども、余命宣告されたのが若い世代で健気な人物ならほぼ確実に涙を誘う(「だってバズりたいじゃないですか」で楓の運命に涙したばかりですし)のと対照的に思えました。
もっとも、自分と年齢層が近い(生まれが私の2年前)ので、感覚が似ていることもあり、「あと一時間」の命なら何をするのが正しいのだろうかと自問して、どうせあと1時間しか生きられないのならばぽかぽかとあたたまったベッドの上でこのまま眠ってしまうのが一番と考える(上巻269ページ)あたり、そうだよなぁと笑いました。
白石一文 毎日文庫 2023年7月30日発行(単行本は2014年)
「毎日新聞」連載
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