美術品の復元を仕事とする著者が、復元を試みる中での経験から、現時点の退色した美術品をガラス越しに遠巻きに見るのでは美術品本来の魅力を味わえないとして、制作当時の色彩や鑑賞の実情を、想像しつつ語った本。
俵屋宗達の風神雷神図をめぐって、制作当時の色彩はど派手だったはず(まぁ、金屏風に書かれてるんですから、考えてみればそりゃそうでしょう)とか、雷神の太鼓の環の画面からのはみ出しが鑑賞者の想像を膨らませるとか、雷神と風神の視線の関係から壁面ではなく屏風として立体的に置いて初めて意図がわかるとか、様々な発見のある第1章が、著者の力も入っており、読みどころです。
あとは阿修羅への愛着が感じられる第4章でしょうか。「はじめに」で「つまり、阿修羅は綾波レイなのである。」(7ページ)と語った著者(1966年生まれ)の思いは、阿修羅の第4章にはあまり表れていないようにも思えましたが。1960年生まれの私は、「山口百恵は菩薩である」と言われて育ちましたが、6年の違いでこの文化の差は…
小林泰三 光文社新書 2015年9月20日発行
俵屋宗達の風神雷神図をめぐって、制作当時の色彩はど派手だったはず(まぁ、金屏風に書かれてるんですから、考えてみればそりゃそうでしょう)とか、雷神の太鼓の環の画面からのはみ出しが鑑賞者の想像を膨らませるとか、雷神と風神の視線の関係から壁面ではなく屏風として立体的に置いて初めて意図がわかるとか、様々な発見のある第1章が、著者の力も入っており、読みどころです。
あとは阿修羅への愛着が感じられる第4章でしょうか。「はじめに」で「つまり、阿修羅は綾波レイなのである。」(7ページ)と語った著者(1966年生まれ)の思いは、阿修羅の第4章にはあまり表れていないようにも思えましたが。1960年生まれの私は、「山口百恵は菩薩である」と言われて育ちましたが、6年の違いでこの文化の差は…
小林泰三 光文社新書 2015年9月20日発行