Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「浮世絵」(大久保純一、岩波新書)

2015年02月14日 21時43分19秒 | 読書


 著者は先日読み終えた「北斎」と同じく大久保純一氏。浮世絵に関する知識はあまり無いので、入門書を探していた。19世紀後半の西洋美術に大きな影響を与えたといわれる浮世絵について実際のところはあまり知られていない。明治時代には後継者もいなくなり、彫りや摺りの職人芸も廃れかけていた。
 「迫真性という点では写真や石版画、銅版画には太刀打ちできず、量産性の面では鬼界印刷にいずれ圧倒され」た木版画は新しい技術に席を譲らざるを得なかった、ということになる。
 私は浮世絵の美人画や役者絵は好きになれず、広重・北斎の風景画ばかりが好みであある。それは今も変わらないが、この書で美人画の歴史や美人画が写生ではなく女性の理想像であったこと、役者絵の迫真性などについていろいろと教わることがあった。
 また技術的な側面や、作画・彫り・摺り・販売そして購買層という浮世絵全般の文化的な側面についての記述もある。



渦という不思議な現象

2015年02月14日 11時23分26秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等


 渦という現象は不思議な現象である。昔、流体力学の授業を受けたが、「現象も解析も理解できないなぁ」ということと「美しい現象だ」という感想以上のことは頭の中に入らなかった。ただとても気になる存在として印象に残って、そのままとうとう45年以上の月日が流れた。
 今ではもう物理関係の勉強をする気などまったく湧いてこないが、最近の科学現象を撮影した写真などの映像がとても美しい。
 人工衛星からさまざまな波長で写した地球表面の映像など、地球物理学の成果を想像させてくれる。探査機による惑星写真や、天体望遠鏡による銀河写真なども時々書店で眺めることがある。
 しかし意外と身近なところでおきる現象も解明されていないし、見方によってはとても美しい。等間隔で定型的に現われる現象も周囲の影響を受けて、不定形に攪乱された場合に人間の感性には響くものである。
 正六角形の形が無限に並んでいる状態よりも、蜜蜂がつくる少しずつ形が崩れている六角形が並んでいる方が見ていて飽きないし、気分が落ち着くものである。
 岩波書店の「図書2月号」の表紙の写真はすぐには何の写真かわからなかった。表紙をめくってみると「蚊取り線香の煙」と記されていた。撮影者は科学写真で有名な伊地知国夫氏。
「渦はただ無秩序な形をしているのではなく、大変規則的な美しい形をしている。まっすぐ立ちのぼる煙は、その周りの停滞する空気の中に流れをつくるが、その境目では摩擦が起こり渦ができ始める。渦はほぼ等間隔に連鎖的に発生し、上昇しながら一定の方向に巻きながら成長し、崩れて消えていく。‥さまざまな渦への視野を広げてくれる‥。」