帰宅後に読みかけて寝てしまった「万葉のことばと四季」(中西進)の第Ⅱ章の「万葉の東歌と民衆」を読み終わった。
「いくつかの歌を挙げてきたが、そのほとんどが女歌であった‥。このことは、東歌の一つの大きな特色である。‥女性の集団労働の場で歌われたらしいものが、東歌の中には多量に含まれている‥。」(「万葉の東歌と民衆」)
「東歌の中には分化した階級があって、それを一般民衆に媒介したのが女の恋歌だったことにな。こういう立場の女性は都では遊女がそうで、彼女たちは多くの歌を知悉しており、宴席などで披露した。東歌の場合もこれと似たようなルートがあって、‥勢い東歌の中でも女歌を多く採用することにもなった。」(「万葉の東歌と民衆」)
「集団の労働歌だから、多くの人たちが歌い合ったもので、いつとなく誰ということもなく歌いだされた一首であっただけに、この巧みな創作の知恵物は、東国の人のすべてだったといってよい。思っても詮ないことは願わず、確かに現実を見つめて労働の中から生まれるよろこびを見つけ出してくることが、彼らの心情であった。」(「万葉の東歌と民衆」)