バロック美術の創始者といわれ、クールベが高く評価したというカラヴァッジョ。その作品を解説した「1時間でわかるカラヴァッジョ」(宮下規久朗)を読み終わった。カラー図版がほとんどで作品解説としては見ごたえも、読みごたえもある。
私はその描く人物の表情かいまひとつピンとこないでいる。今でも少年の呆けたような表情は作品の力を削いでいると思う作品がいくつもある。
しかし最近は、生々しく振舞う現実の人間らしい表情を見せる作品があることもようやく分かってきた。短い生涯の中で緊張感あふれる時間を生きたカラヴァッジョという破天荒な人間像は、自分にはとてもそれを追随することはできないが、どこかで惹かれる生き方でもある。
聖書という題材を扱った作品群を描きながら、人を傷つけ、人を殺め、身を滅ぼしていくカラヴァッジョという人間像、どのように私の中で消化し、再構成したらよいのだろうか。